情報通フェンの本日のニュース:真夏の午後に彼らを想う
気象予報士2.5部、「暑い夏は涼しい場所で」。
お留守番中のベリルとフェンの会話。
「は?休み!?蒼羽が!?」
訪れたベースで、蒼羽の姿が見当たらなかった。出迎えたベリルに、ここへ来た当初の目的である、手入れの終わったナイフ等を渡し、蒼羽はどこかと尋ねると、返ってきた言葉が、休暇中であるという、それ。
「緋天ちゃんと一緒にね。今の蒼羽にそれ以外の理由があると思う?」
苦笑しながら、驚く自分の次の質問を先取りしてベリルは口を開く。一瞬で納得してしまって、それから自然と溜息が出た。
「なんか・・・蒼羽のやつ、凄そう。絶対、緋天ちゃん苦労してるって」
ソファに腰を落として、蒼羽の緋天に対する余剰ともいえる溺愛ぶりを考えれば、今現在彼が生き生きと輝いているであろう姿が目に浮かんだ。その相手をする緋天は、簡単に折れそうな細い体にはどう見ても体力は無さそうで、少々気の毒に思える。
「やっぱりフェンもそう思う?実はさ、昨日まで3日間、緋天ちゃん家族と出掛けてていなくて。その間ずっと蒼羽が不機嫌で参ったよ。だから今夜の緋天ちゃんが心配っていうか」
ベリルの表情は、妹のディルを心配する自分の父親とそっくりで。思わず笑ってしまう。
「だって、緋天ちゃん最近ずっと夏バテしてて、食欲なかったんだよ。いくら涼しいところにいるからって、一瞬で元気にはならないし」
「まぁね、そうだけどさ。つーか、蒼羽だってそこら辺はちゃんと加減・・・できるか・・・?」
蒼羽も馬鹿ではないのだから、と思いながらも、やはり思考の行き着くところは初めと同じだった。
「あー、もう!!ヤメヤメ!!緋天ちゃんの腰が立たなくなろうがどうしようが、オレにもベリルさんにも関係ないっすよ。もっと自分を大事にしましょうよ」
勢いをつけてそう言えば、呆気にとられたようなベリルの顔。
「オレらの彼女作る方が大事!!まぁ、ベリルさんはその気になればすぐできるから、問題ないか」
「・・・フェン、言ってる事寂しいって。2,3人、調達してあげようか?」
「いや、そういうの、もうやめたし。今のオレは結構マジメ」
ベリルの言う、適当な相手と遊ぶ事からは、蒼羽が自分に合わせていると判った時に、完全に足を洗った。彼にとっての緋天、そんな感じの相手が欲しいのだと言えば、笑われるだろうけれど。
「ふーん。じゃあ、適当に頑張って」
ニヤリと笑ってカウンターから冷えたビンを投げてくるベリル。封を切られたその中身をこぼさないように上手く放った仕草を心内で誉めながら、空中で受け取った。
「ベリルさんもね。もういい年だし」
小さく反撃して、緑色のそれに口をつける。炭酸が口の中で弾けて、暑い中を歩いてきた体に浸透していった。
今頃、蒼羽は何をしているだろうか。
う、と嫌そうな呻き声を上げたベリルを見やって、結局彼の事を考えてしまっている自分に気付く。その横で、笑顔を浮かべているだろう、緋天の事も。
彼女の微笑みには、かなりの価値があるのだと、改めて実感した。
実感したところで、自分にとっては何もない、と。
炭酸と一緒に飲み下す。
弾けていく泡は、少し、痛かった。




