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気象予報士 【番外編】  作者: 235
いろんな隙間話
13/41

緋天の日記帳:朝日

時間軸は、気象予報士3.5部、「卑怯な大人の攻防戦」の直後。

 パジャマを身につけた記憶がないのだけれど。

 肌を覆うのは、確かに自分のそれだった。


 今まで同じような状況に陥った時は、いつも裸だったのに。


 晴れ間が広がれば過ごしやすいが。朝晩は肌寒さを覚える季節を迎えている。それを気にしてくれたのだろうか、それとも無意識下で自分が寒さを訴えたのだろうか。とにかく、この寝間着を蒼羽が着せてくれた事は間違いない。

 彼の腕の中で目が覚めて、脈絡なく、そんな事を思った。

 もし自分で服を着たなら、絶対に下着を身につけているはずだから。慣れない感覚に戸惑いつつも、目を開けて薄明るい光を確認する。まだ早い時間に起きた事に少々驚いて、更に蒼羽が寝息を立てている事に驚いた。


 暖かくて心地良い理由が、眠っている蒼羽の腕に囲われているからだと気付く。尚且つ上掛けごと抱き込むように包まれていた。それをしている当人は、どう見ても上半身に何も身につけていない。寒くないのだろうかと心配になったけれど、そっと触れたむきだしの肩は、同じように暖かかった。


 眠る蒼羽は、意思を伝えない。

 閉じられた双眸からは、何の感情も読み取る事はできなかった。

 それなのに、こうやって眺める事は苦痛でもなく、退屈でもなく、むしろとても貴重な時間に思えてしまう。これだけ近くで休養を得ている彼を見ると、胸の奥底がじわりと何かで満たされていく気がした。


 ああ、これは。

 幸せだ、と。


 それを見つけた途端、目の奥が熱くなる。

 何故蒼羽と離れていられたのか、今更それを不思議に思った。与えられた愛情に浸っていられる、今のこの空間に。代替できるものなど、どこにも存在しないのだとかみしめる。


 流れ落ちる涙を拭おうと、身じろいで。

 パジャマの袖を目に当てた。


「・・・緋天」


 掠れたような低い声で名前を呼ばれ、額に落とされたキス。

 起こしてしまった、と焦る前に、驚く彼の表情が目に映る。


 自然とこぼれた笑みが、先に蒼羽を安心させたようで。これは嬉しくて目が潤んだのだと、恥ずかしくなりながら釈明した。目の端を啄む彼に、熱をかき立てられる。


 喉の奥で響くような彼の小さな笑い声が、それを煽って。


「おはよう」


 口付けられ、首筋を撫でられ、朝の挨拶を向けられた。

 とても嬉しそうな蒼羽と、その笑顔に心拍数を上げる自分。


 寝間着を身につけていても、何ら変わりはないのだと。

 それを、悟った。

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