港町ピコイ
それから僅か三か月ほぼだったろうか、戦争は終わった。五名の国王、大統領及び自治区長官が極北の中立国に集まり、半ば強引に停戦条約を結んだ。その後一か月程激しい混乱に陥り五名の内一名を含む数々の暗殺と各地に暴動が発生し多くの犠牲者を出した。しかし喉元過ぎれば何とやら、そこには俺たちが切望した平和があった。一部例外を除き殆どの戦線で休戦となり、山ほどあった暴動もすっかり廃れて物騒な武器を街で見かける事は無くなった。あんまり呆気なくて殆ど実感が無いがそれはあの日々を忘れられたいい証拠だろう。
俺のようなある種特殊な兵は功労という名目で財源確保の為早々と軍を追い出された。とはいえ随分いい退職金が出たのでしばらくは遊んで暮らせそうだ。もっとも仕事を見つけるのは早い方がいい。俺は当時賑わいのあった港町ピコイに住み着く事にした。理由は二つ。一つは飯が美味い、貿易が盛んな港町というだけあってそこら中から美味い物が流れ込んできている。二つ目は俺を助けてくれた彼女に会う為。あの時は騒がしかったせいでろくにお礼も言っていない、と言うのは建前で一言で言えば一目惚れなんだ。
とはいえなんだかんだ言ってもう五か月弱、もしかしたらもう会う事は無いかもしれない、でももし会えたなら。そんな淡い淡い希望を抱きながらあの教会を探してぶらぶらと街を歩く。街は賑やかだ、今夜は生誕日かなんかで大きな祭があるらしい。港には道芸師が集まり今日も活気に溢れている。そしてそこには細く暗い裏道への通路がある。まるで俺は引き込まれるようにその路地に進む。長い路地には洗濯物と何やらよく分からない物の数々がザックバランに置かれている。そしてそこを抜けると静かで人気の無い道に出る。何となく見覚えのある場所だ、そう思った俺は辺りを見渡す。その道の角にはあの教会があった。