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完結話 『Anti Hero = Another I』

 ―Side Other―


 大歓声の中、ヒューマン国の王と、魔王とが手を握っていた。

 その日――



 ――人族と魔族との間に、和平が結ばれた。



 長い時を経てついに、世界に平和が訪れたのだ。そして――


   *  *  *


 式を終えた二人の王と並び、一人の青年が歩いていた。その事を咎める者は誰もいなかった。

 彼こそが今回の和平の、立役者だった。


「魔の王よ、こうして和平へとこぎ着けられた事、心より嬉しく思っています」


「人の王よ、それは我も同じだ」


 彼等の視線はどちらともなく、並び立つ青年へと向けられていた。彼はどこか儚げに、微笑んでいた。


 ――と。


「貴方」


「お父様」


 ヒューマン国の王へと、二人の女性が声を掛けた。王妃と、王女――聖女だ。この後のスケジュールには、王族や貴族同士での顔合わせがある。打ち合わせと労いを兼ねて、王を迎えにきたのだ。

 王と王妃が仲睦まじそうに話している。と、聖女は一人、青年に歩み寄り声を掛けた。


「お疲れさまです、アークライト様。今回の和平。貴方なくしては、決して成せませんでした。そして何より……」


 彼女の視線は自然と、自身の両親へと――母へと、向いていた。

 青年はかつて、王妃の命を救った事があったのだ。だが彼は静かに首を振る。気にするな、という風に。

 王女はそんな彼に、改めて感謝を述べるように、優しい笑みを浮かべた。


「アイラ、私達は先に行っている。お前はアークライト殿と共に、後から来なさい。少しくらいは遅れても構わない」


 王は自身の娘にどこか意味深な笑みを浮かべると、踵を返して、歩き始める。

 二人に護衛はついていない――いや、必要などなかった。何せ、王と共に歩く王妃こそが、最大の矛にして盾であるのだから。そんな彼女は青年へと、眼帯で片目を覆った顔を向けた。


「娘を頼むよ、アークライト」


 彼女は、さっぱりとした笑みでそう言った。


 ――男装の麗人。


 そう呼ばれる事もある彼女はそのまま、肩で風を切り、さっさと王を追いかけて行ってしまう。


「〜〜〜〜っ!」


 残された聖女は、顔を真っ赤にさせ、口をパクパクとさせていた。

 と、そこへまた人が訪れる。女――メイド二人に、男――彼女達の護衛が三人。


「アークっ様ぁ〜! お疲れさまですぅーっ! と、いうわけで。迎えにきましたよぉ〜! お召し物! お召し物を替えましょう! さぁ! ほら! すぐに! 旦那様と奥様も待ってますからぁっ!」


「ちょ、ちょっと! 敬語、ちゃんと敬語使ってください! 今いるのはアークライトく……じゃなかったっ。アークライト様だけじゃないんですから!」


 現れたと同時に騒々しく騒いでいる彼等は、青年の付き人達だ。


「フィオナちゃん! 今ははしゃいでも良い時じゃないですかぁー? だって、こぉーんなに嬉しい事、そうそうないですよぉっ!」


「そ、そうかもしれないですけど……もぉーっ! すいません、この人、下げてください」


 彼女が、護衛の三人に言うと、「「「うっす姉御!」」」と騒がしい方のメイドを、引き摺っていく。


「ちょ、ちょっとぉー!? わたしの方が先輩なのよ!? なんでフィオナちゃんの言う事を聞くのよぉー!?」


 メイドの叫びはそのままフェードアウトして行った。残された方のメイドは必死にぺこぺこと魔王と聖女に頭を下げている。その様子に二人は苦笑しつつも、「今日は無礼講だ」と不敬に目を瞑ってくれる。


 ――そこへ、襲撃。


「ぬぉッ!?」


 魔王の身体に何かが一直線に迫り、激突していた。それは……銀の髪をもつ少女だった。その子に追いつくように、後から女性と、男性が現れる。

 黒く細長い尻尾を有した女性が微笑んだ。


「貴方、お疲れさまです」


「うむ」


 彼女は、魔王の妃だ。

 一緒に現れた男性は一礼の後、静かに壁際に控える――彼はその纏っている服からも瞭然であるように、執事であった。

 そして、魔王の腹部に頭突きを噛ました……かと思えばその背に回り込み、隠れながら周囲をキョロキョロと窺っているその少女は、魔王の娘。


「お前が会うのは初めてだったかな? 彼がアークライト君だよ」


 人見知りをするらしい娘へと、魔王が青年について教える。

 青年は、静かに少女を見ていた。その目には複雑な色が浮かんでいた。彼は、何かを断ち切るように両の瞼を下ろし、深呼吸する。それからゆっくりと目を開くと、笑みを浮かべてしゃがんだ――少女と目線を合わせた。

 一瞬だけつっかえ、そして、言葉を口にする。



「はじめまして、アークライトです」



 少女はぱちくりと、青年の顔を見た。

 警戒を解いたのか、父の背から離れ、そろそろ彼へと歩み寄る。少女は、青年のすぐ近くまで行くと、ジッと彼を見た。

 一秒、二秒……どこか長く感じた沈黙が続き、そして――


『なッ!?』



 ――いきなり、その唇を触れ合わせた。



 魔王が、執事が、メイドが、聖女が驚きに声を上げ……と、カリっと小さな音が鳴った。青年の唇から、一雫の血が流れていた。


 少女はゆっくりと触れ合わせていた唇を離し、一歩下がる。そして、自身の胸の中央をトントンと叩いた。何かを示すように。

 彼女はその”紅い”瞳を、どこか悪戯気な様子で青年へと改めて向け、茶目っ気たっぷりに言った。





「――初めまして、”ユウ”」





 青年は顔をくしゃくしゃにして、両の目から涙を流しながら答えた。





「――初めまして、イブ」





 と――……

 最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!


 これにて、今作は完結とさせて頂きます。投稿開始から考えると、1ヶ月と1週間……本当に、あっという間でした。ですが、やりたかった事のほとんどを、きちんと出せていたのではないかと思います。


 ――もちろん、到らない点も多々ある事は否めませんが(笑


 その部分は今後の作品で、修正していきたいと思います。そういった指摘含め、感想・評価などは完結後もお待ちしておりますので、ドシドシお送りください(笑

 作品の質の向上、モチベーションの増加に直結しますのでっ!


 また、もしよろしければユーザ登録の方もどうぞ。次作のプロット完成や投稿開始が早期かに繋がる……かもしれません(笑



 さて、改めまして、完結までお付き合い頂き、ありがとうございました! また、なるべく早く再会できるよう、頑張りたいと思います!

 それではっ、また近いうちに!

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