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最終話 『決戦』

『……というのが今回の事件のあらましだ。魔族達がどのようにして発見されずに侵入して来たのか、経路の特定は現在、鋭意究明中である。ただ、間違いなく言える事が一つだけある。それは——』



『——魔族達は休戦協定を破った、という事だッ!』



 <拡声>の魔法の影響を受けた国王——アイラの父の声が聞こえてくる。彼は壇上で、今回の被災地である学校の壇上に立ち、声を張り上げていた。

 アイラも正装で、その脇に立っているのが見えた。


 あの襲撃事件から数日が経過していた。俺は優秀な治癒魔法の使い手が優先的に治療を施してくれたらしく、一命を取り留め、また自身の回復力でもってほとんど完治といって差し支えないまでになっていた。


 俺は助かった。だがしかし、同時に助からなかった命が多く存在した。

 国王の背後にはたくさんの花が飾られていた。それらは一つ一つが、失われた命を示していた。俺はその一つに、フィオナの姿を見た。


『魔族達から友人や生徒を守る為に最後まで戦った、勇ましき彼等、彼女等に……黙祷』


 国王の言葉に、俺達は目を瞑り、あの地獄へと思いを馳せた。

 もうこのような事を、二度と引き起こしてはならない。右腕に自然と、熱が籠もった。


『みなさん、最後に一つだけ、この辛い現実の中に、希望とも言えるご報告がございます』


 黙祷の後、立ち上がり声を上げたのは聖女アイラ。

 俺は合わせるように人垣を抜け、歩き出した。

 壇上へと続く階段を上がる俺の姿に、ざわめきが起こる。


 アイラの隣に並び立った俺の手を取り、彼女は告げた。


『この者の名は、アークライト・Nノーブル・アングローリー。彼は——』



『——”勇者”です』



 俺の右腕から包帯が解かれ、紋様が——”魔法陣”が浮かび上がる。青白い光が吹き出し、俺達を取り巻いた。

 それはまさしく、勇者に相応しい輝き。


 俺の事は既に伝聞にて大勢の人間に知れ渡っていた。曰く、勇ましき者。曰く、猛々しき者。曰く、優しき者。曰く、強き者。曰く、彼こそが勇者である。


『我々には彼が付いています。わたしもまた、全力で人族の為に尽くす事を誓いましょう。我々は必ず勝ちます。人族よ——彼の元に集いなさい! そして守るのです! 我々の大切な世界を! 暮らしを! 命を!』


 俺もまた、彼女に拡声の魔法を受けながら、たった一言だけを告げた。



『——俺が、勇者だ』



 その宣言は、魔族の悪辣な行いと共に、宣戦布告として一気に世界を駆け巡った。彼等はその宣言を後にこう呼んだ。


 ——”勇者宣言”。


 それから、短かった休戦の時は終わり、長い長い戦が始まった。

 人族と魔族の戦いは、勇者と魔王を筆頭に、全面戦争へと向かっていった——……


    *  *  *


 ——それから、十年もの月日が流れた。


 俺は16歳になっていた。


「勇者様……それでは、参りましょう」


「……ああ」


 腰を上げる。豪奢な鎧を身に着けた俺を讃えるかの如く、兵達が左右に分かれて道を開ける。二十歳を超えた聖女アイラを従えて、一歩、一歩と進んでいく。

 その先にそびえ立つは巨大な黒い城を中心として栄える街。あの城の王座にこそ俺達人族を虐殺し続けて来た魔族の中の魔族、悪逆の中の悪逆——魔王がいる。


『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』『勇者アーク!』


 兵達が叫ぶ。

 これが最後の戦い。俺は告げた



『——俺が、勇者だッ!』



 その声が戦端を開いた。

 戦いを終わらせる為の戦いが、今幕を開けた——……

 次話の投稿からは、毎日0時を予定しています。最後までお付き合い頂けましたら、光栄です。


 

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