1月25日(金)。魔法大学受験(実技)
連続投稿2つ目。引き続き試験の模様です。
翌日は実技試験だった。魔法大学の受験である以上、魔法レベルを見られるのは当然だ。もちろん、一度に大勢は見られないので、大まかに午前組と午後組に分けられる。
恭子は午後組だ。晃一郎もそう。ただ、紗耶加は午前組だった。
これは何によって分けられているのだろうか。実技試験の時間は、初めから指定されていた。つまり、試験結果ではないということだ。
これは、悠李と碧にも試験時間を聞くことで判明した。2人とも午後組。つまり、使用制限魔法の行使者かどうかで、試験時間が決められているのだ。
と言うことは、第1級使用制限魔法の行使者である悠李の試験順番は最後の可能性がある。遅くなるようだったら、待っているのは難しいかなぁ、と思った。
魔法実技試験と言っても、実戦をやってみたりするわけではない。所定の魔法が使えるか、と言うレベルのものだ。一般に普及している魔法を使えるか確認し、それから自分の得意魔法を見せる。受験者が多いため、詳しく見ていられないのだ。
恭子の番が来た。失礼します、と緊張気味に受験会場となっている訓練場に入る。何度やっても受験は緊張する。魔法訓練場は、どこに行っても似た感じだ。学校のものとも似ているし、香坂道場のものとも似ている。
訓練場では何人かの受験生が試験を受けていた。受験生1人につき、試験官1人。今は10人の受験生が試験を受けている。
「こんにちは、鷺ノ宮さん。準備はいいかな」
中年の試験官の男性に微笑まれ、恭子は「はい」とうなずく。試験官は早速課題を出した。
「では、まずこの積み木を積み上げてもらえるかな」
その『積み木』は一辺30センチほどの立方体だった。全部で5つ。念動力のある恭子には簡単な課題だ。念動力がほとんどない悠李などでも、ちゃんと魔法式を組み立てれば、積み木を積み上げるくらいはできる。これは初歩的な魔法なのである。
続いて、ボールが飛んでくるから、それを跳ね返せと言われた。これは回転魔法系の試験だ。と言うか、いくら柔らかい素材を使っているとはいえ、高速で飛んできたら、当たると痛いと思うのだが。絶対、時速100キロは出てたぞ、今の。
やはり恭子は危なげなく跳ね返す。受け止めるだけなら念動力だけでもできるが、跳ね返すとなるとボールに働いている力を逆方向に向けなければならない。つまり、回転魔法を使わざるを得ないのだ。便利な魔法だな、回転魔法。
「じゃあ、この箱の中に何が入っているかわかるかな」
試験官が示したのは何かのプラスチックの箱だった。黒いのでもちろん中は見えない。おそらく、情報魔法を試しているのだ。
精神魔法が苦手な恭子は、情報魔法もあまり得意ではない。しかし、これも基本的な魔法であるから、できなくはない。
恭子は魔法を展開してきゅっと眉をひそめる。霞がかかったような感じにしか見えない……。碧や紗耶加のように先天性の能力があると、かなりはっきりと見えるらしいが、恭子には無理だった……。
「ええっと。チェスの駒、ですか……? たぶん、ナイト?」
かなり自信なさげに言ったが、中年の試験官は微笑んだ。答えがあっているのかわからなかったが、答えは教えてくれなかった。
「じゃあ、これが最後です。最後に、あなたの得意な魔法を一つ、見せてください」
「はい」
これなら、当たり前だが大丈夫だ。とはいえ、雷魔法と言う強力な攻撃魔法を試験会場でぶっ放すわけにはいかず、恭子は右掌を上に向けて魔法を展開した。
バチバチっと音を立て、手のひらから30センチほどの雷撃が生まれた。試験官は満足げにうなずいた。
「はい、ありがとうございます。これで、試験は終了です。試験結果は約2週間後、2月7日、木曜日に発表されます。それでは、お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
恭子は丁寧に頭を下げ、訓練場から出た。これで試験は終わり。もしも受かっていなかったら、二次募集の試験を受けなければならないが、落ちるほど悪くはなかったと思う。
みんなの試験は終わっただろうか。恭子の順番は比較的早かったので、まだ午後2時過ぎである。うーん。これでは終わっている人間は少ないかもしれないな……。
「恭子」
「あら、碧」
仕方ないから帰ろうか、と思い外に出ると理系の建物が集中する方向から碧が歩いてくるのに遭遇した。
「もう終わったのですか?」
「さっき終わったところだ。お前も終わったのか」
「はい」
試験の順番もどうなっているのかわからない。ちなみに、悠李は順番がまだらしく、試験会場で遭遇したときに「先に帰っていいよ」と言われたらしい。
碧に理系側で出た魔法実技の内容を聞いてみると、こちらとあまり変わらなかった。
「わたくし、もう帰ろうと思うのですが、碧はどうするのですか?」
「しばらく悠李を待つ。ま、あいつは最後の方だから途中で変えることになると思うが」
さすがに遅くなれば悠李も迎えを呼ぶだろう。きっと、迎えで召喚されるのは兄の真幸だ。
それにしても、碧は悠李に対して過保護だ。恭子は上目づかいに碧を見上げ、言った。
「碧はユウのことが好きですよね」
「なんで断定口調なんだ。否定しないが」
「はっきりした方がいいと思うのです。氏家君もユウが好きみたいですし」
恭子がそう言うと、碧が微妙な表情になった。いや、碧は表情に乏しいので、ただの恭子の勘違いかもしれないけど。
「氏家が、か……やはり、そう思うか? なら、そう言うことなのかもしれないな」
「……何の話ですの?」
「こっちの話しだ。気にするな」
気になるって。
「可能性の話だからな。うかつなことは言えん。……だが、そうだな。おそらく、1週間以内には結果が出るだろう。試験の結果が来るのは2週間後だしな」
「? 意味が分かりません」
「だから、そのうちわかる」
「……そうですか」
恭子は不機嫌そうにそれだけ返した。これが悠李なら恭子のご機嫌を取りにかかるのだが、今いるのは碧だ。彼は眼鏡のブリッジを押し上げると、恭子に行った。
「早めに帰れ。面倒事に巻き込まれないようにな」
「わかっていますわ」
恭子は「さようなら!」と不機嫌丸出しで碧に叫んで地下鉄の駅に向かった。
のちに、恭子はこの時、何故無理にでも碧を問い詰めなかったのだろうか、と後悔することになる。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
試験は終わり。ここから、完結に向かっていこうと思います。
次は9月25日、木曜日です。




