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序章
死亡シーンがありますので、ダメな人は回避。
特に読まなくても大丈夫です。
「恭子!」
すがるように名を呼ばれ、恭子はうっすらと目を開いた。泣きそうな表情の幼馴染が自分の手を握っているのを感じた。
だが……自分はもう駄目だ。恭子は口元に笑みを浮かべた。
「ふふ……っ。わたくしの人生も、詰んでしまいましたわ……」
酸素マスク越しにつぶやくと、「こんな時に何を言っているんだ、お前は! ゲームみたいに言うな!」とまともなツッコミが入る。おかしいな、この幼馴染の役割はツッコミじゃなかったはずなのに。なんだかおかしくて、また笑う。
不意に、眠気を感じた。重たげにまぶたを下ろす恭子に、幼馴染は再び恭子の名を呼ぶ。恭子はふふっと笑った。
「大丈夫ですわ……ちゃんと、目を覚ましますから、少し、寝かせてください……」
そう言って恭子はゆっくりと目を閉じた。
そして、もう、目を覚ますことは無かった。
鷺ノ宮恭子。享年、18歳。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
短い上に、いきなり死亡シーン……いえ、大丈夫です。続きます。