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再会
真っ赤な薔薇を両手一杯に抱え、訪れたのは、兄妹の幼馴染み。
「落ち込んで、屋敷に籠っていると聞いて、やって来たんだ。
薔薇を受け取ってくれるかい?」
優しく微笑む。
「ええ。ありがとう。」
応える顔は、笑みの形にはなっていたが、どこか翳りを帯びていた。
「暫く、こちらに居ようと思うんだ。
僕に頼って。」
薔薇を抱えた彼女の手に、そっと自分のそれを重ねる。
「ありがとう。」
彼女は、振りほどきもせずに、受け入れる。
兄は、階上からその様子を眺めていた。
※
貴女の瞳に映るのは、僕のみでなければならない。
貴女は、僕のために息をする。
貴女は、僕のために生かされる。
そして、僕に永遠を捧げ。




