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封鎖
彼女は、今にも倒れそうな程、蒼白い顔をしていた。
やはり、彼女を支えるのは、兄の腕。
昨夜の事を知らされた。
彼女が立つはずだった、舞台で起こった悲劇を。
「なんて事なの・・・」
彼女の震える細い肩を、より強く抱きしめながら兄は妹を気づかう。
「少し、休んだ方がいい。
ほら、此方においで。」
兄は、部屋の片隅に設えてあるソファーに、妹を座らせる。
「不幸な事故だよ。
お前のせいでは、ないのだよ。」
昨夜の舞台、本来であれば・・・。
そう考えると、心は重い。
申し訳なさと、恐怖が彼女の心を圧迫する。
「お兄さま、・・本来なら・・私・・・が?」
兄にすがり付きながら、震える声をだす。
兄は、困ったように眉をしかめる。
「・・・偶然の、偶然の不幸な事故だよ。」
それから暫く、オペラ座は封鎖される事となった。




