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二人きり
レクイエムが聴こえる。
誘え。
穢れ無き魂を。
その純真な迄の無垢なる皓を。
※
高く青い空に吸い込まれるのは、葬送の音とすすり泣く音。
黒い服を纏った彼らは、一様に暗い表情。
見つめる先には、たった今土を被せられた真新しい墓。
「お母様・・・。」
ポツリと呟き、俯くのは美しい娘。
肩を似た顔の青年に支えられている。
真新しい墓の隣に、建てられてから、然程経っていない墓碑が並ぶ。
一対の夫婦は、墓の下に眠るにはまだ早いと思われる年齢を、墓碑に刻んでいる。
敬虔なる彼らは、神の意思に反して召された。
心無き、惨殺者に依って、強制的に奪われたのだ。
父、母と数ヶ月のうちに次々と。
遺されたのは、美しい娘とその兄。
二人は、これから手に手を取り、互いに支えながら生きて行こうと誓う。
娘の涙は、純真な迄に透明で美しかった。




