悪魔
申し訳ありません寝過ごしました水曜27時ということで一つ
次回の更新は日曜日です
「とかとんとんとんとん! 全モンスター1! 超絶かっこかわいいモンスターはだれだ!?」
「「「とかとんとんとんとん! 天使さまだぜぇ!」」」
クイーンの迷宮地下2階の盗賊のねぐら。
その薄暗い路地はかつてないほどの熱気に包まれていた。
「みんなありがとー天! 今日はねー」
「これ今日の差し入れだぜえ!」
「わ、ハイパーイートありがとう天! すごいまだ硬くなってないパン天な! サンキュー天!」
「ナイスハイイー!」
「今日はです天ねー、お歌回ということでみんなといっしょに歌っていこっかなーっておっもっう天~!」
「天使さまよぉ! おとといも歌ってたけどのどは大丈夫かよぉ!?」
「これ! まだ半分以上残ってた酒だぜぇ!」
「わ~! 赤ハイパーイートありがとう天! みんなも心配してくれてありがとう天。他のハイパーイートくれた神の子たちも最後に名前よばせてもらう天ね~!」
「へっ、天使さまなんて言われてるけど、あいつは俺たちから食料まきあげてるだけ――」
「こいつ異端者だぜ! 殺せ!」
「磔にして魔物のエサにしちまえ!」
「や、やめる天~! 神の遣いである天使に背く悪魔の子であってもここに来てくれるだけでありがたい天~! ごめんね……哀れな悪魔の子も浄化できるようにがんばる天!」
「うおー! とかとんとんとんとん!」
「世界で一番かっこかわいいぜぇ! てめえお優しい天使さまに感謝しろよ!? 命ばかりは助けてやる!」
「お、俺はこんなお優しい天使さまになんて酷いことを……!」
「反魂して原罪を自覚できたみたいでよかった天~! それが神の定めた地上の摂理天な。じゃあ盛り上がったところで1曲目歌う天! まずはみんな大好き、エキセントリック少――」
◆ ◆ ◆
盗賊互助会事務所で俺は今日の差し入れ品をチェックしていた。
「うへえ……見事に残飯ばっかですぜ天使さま」
「うん? あなた新人ですか。よくチェックしてください。例えば今日の赤ハイパーイートの酒ですが……ちょっと一口飲んでみてください」
「え、いや勘弁してくだせえ、そんなもん腹こわしますぜ」
「いいじゃないですか盗賊如きの腹くらい壊れても、ごちゃごちゃ言ってると燃やしますよ。さあ、これも仕事です」
「ひ、ひでえ……じゃあちょびっとだけ……ん!? こ、これは!?」
「それは会長さんにまわして分離してもらいますんで」
「これはかなりの上物ですぜ!? あのきたねえ奴らがどうやって……?」
「神の子を誹謗してはいけませんよ。それにどこでどうやって手に入れたかなんて些細な問題にとらわれてはいけませんよ。問題は今ここに差し入れの品があって、好きにさばいて金にしていいということです」
そう言いながら差し入れられたパンを割ってみると、中からちょっと赤黒い何かが付着した高そうな指輪が出てきた。
「な、なるほど。そういうあたり付きが紛れてやがるんですね。これが会長すらシャッポを脱いだっていう天使さまの言うハイパーイートっていうシステムですかい?」
「ふん、これくらいで驚いていてはいけませんよ。TT隊限定の時はもっとすごいのが来ますから」
「てぇ……? なんですって?」
「TT隊です。もぐもぐ。初期からいる腹心の神の子とその腹心によって選別された神の子だけが所属する部隊の、もぐもぐ、メンバーだけが参加が許されるイベントではもっとすごい差し入れが、いやハイパーイートがきますよ、ごくんっ」
「あ、一応ふつうの差し入れも食うんすね」
「邪魔するぜ。例のメンバー候補を連れて来たぜ天使さま」
新入りのおっさんに説明していると互助会の会長が数人の女をつれてやってきた。
女たちは皆同じ首輪のようなものをつけている。
「注文が難しいから苦労したぜ。結婚詐欺師、募金横領、大量の客を持ちながら一度もヤらせずにほかのシマの客まで破産するほど搾り取った義理知らず、容姿が幼いことを利用して孤児に扮して財産横領……どいつもこいつも直接は自分の手を汚さずに他人を地獄に落としてきた精鋭たちだぜ」
「おおいにけっこうです、会長。さて皆さんは栄えある1期生……えーっと、どうしましょうかグループ名。そうですね、トイレの行列で失禁し隊かスサレノオンケッゼか。やはり男性にアピールするにはトイレの……」
「スサレノオンケッゼでいこうぜ」
「スサレノオンケッゼがいいと思いやすぜ」
会長やおっさんが畳みかけるようにスサレノオンケッゼを推し、女たちもおびえたように必死にうなずいている。
なんだこいつら、三国志マニアか?
「まあ皆さんがそう言うならそれで。名前なんてどうでもいいですし。ではあなたたちには栄えある1期生としてこの集落やクイーン王国周辺の森にある集落で活動してもらうわけですが」
「はい! 私たちにチャンスを与えてもらって感謝しております!」
「私たちは心を入れ替えてみなさんの笑顔のためにがんばります!」
ふぁさ……!
「ひっ!?」
「て、天使さま?」
「ドン! 黙れ」
俺は翼で机を強く叩いて女たちにすごんでみせた。
「俺に感謝なんてしないでください。むしろ暗に俺と対立していると神の子たちににおわせてください」
「えっ、なぜですか?」
「神の子たちは心の奥底では闘争を望んでいるからです。ああ、しかしもちろん表向きは仲良くしてください。それもまた神の思し召しですから」
「ふ、ふくざつなんですね……」
「それと一番大事なことですが心は入れ替えないでください。あなたは人の笑顔で腹がふくれますか?」
「ふくれませんが……」
「いいんですよ」
「えっ?」
「奪いつくしてください。すべて。すべてをさしだして破滅するならそれはその神の子の寿命なのです。その時は神の国に旅立つことを皆で喜びあいましょう」
まあ俺はそういう悪いことをするのは向いていない善良な性格だから良心が痛むが、こんな街に落ちてきた奴らにはお似合いの仕事だろう。
汝のあるべき姿を知れ、適材適所ってやつだな。
人間どもは生まれながらに邪悪だから、上手に自己正当化しながら悪魔の所業をしてくれるだろう。
「びっくりしたぜ、天使さま」
「え? なにがですか会長」
「この街でも顧みられないようなグズどもに生きる意味を与えているのかと思ってけど違うんだな。他人の不幸の上に豪邸を建てるタイプっつーか、聞いてるだけで吐き気がするぜ」
ほらね。
クソ犯罪者たちに仕事をふって報酬を中抜きしてるようなゲスも平気で人の悪事をなじる。
どう自己正当化すればここまでいけしゃあしゃあと生きることができるのか。
人間どもは自分をだます天才だな。
俺は会長を心の中の絶対に殺すリストに書き加えつつ1期生に言った。
「あ、それから一番大事なことです」
「大事なこと? もしかして歌とかダンスのテクニックですか?」
「いや乳です。小さくてもいいので必ず胸を強調する露出度の高い服装を心がけてください。あと活動中は下着を外してできるだけ揺らすように」
なぜか新人のおっさんまで道端に吐き捨てられたガムを見るような目で俺を見ている。
「な、なんですか? 一番大事なことじゃないですか! むしろそれ以外にあなた達にどんな価――」
言い終わる前に会長の拳が俺の顔面に突き刺さり、女たちから歓声があがったのだった。
免罪符にするわけではありませんが内村はリスペクトしている存在にしかふれません
そもそもおもしろいな興味深いなって思っていないと書けないんですよね
また人を幸せにするための優れたシステムも悪人が悪用したらこうなるという創作であり実在の団体とは関係がありません
180度違います
 




