パーティを追放されたので路上のおっさんと馴れ合って死ぬほど後悔しているんだがなにか質問ある?
次回の更新は水曜日です。
「天使さまにはパーティから出て行ってもらいますっ」
「置いてけ装備、払え迷惑料!」
出ていけって……そもそも俺、装備なんて買い与えてもらってないんですけど。
これあれか、いわゆる流行りの追放ってやつか?
いやもう流行りは過ぎ去っていたっけか。
っていうかこいつらとパーティを結成した記憶もないし、仲間とも思ってないが追放と言われるとなんかむかつくな。
「な、なんでだよ!? 俺はパーティに貢献してただろうが!」
「貢献? 具体的にどんな貢献ですかっ?」
「それは……SSSクラススキルを使っての多角的かつ包括的なパーティへの貢献があっただろうが!」
「SSS……それスキルなにか?」
「それは、空飛べたりとか、炎とか、マスコット的な魅力も、ほら全部だろうが!」
「空なら私も飛べますし、炎とかマスコットも代替可能なんですよねー」
「だがアーシュは飛べないだろうが! パーティを追放するならこの子からだろ!」
「この娘は戦闘員というよりはコネとか後方支援が役目ですし。それに思っても俺よりも先にこいつを追放しろとか言わないほうがいいですよっ」
「よくやった天使さま今まで。しばらく休むいいよ」
くそっ、リファ時代からそうだがこいつ普段はイカれているくせにこういう時だけは正論でロジハラしてきやがる。
「待て。じゃあ逆に俺を追放する理由をいえよ」
「おそらくですけど、天使さまは魔物と人の間の不安定なメンタルになってると思うんですよね。明らかに魔物側の思考をしていたり、さっきだって偽装もなにもせずに後先考えずに聖焔騎士団に襲い掛かったりして」
「それは……目の前にやられそうになってる人がいたから……困っている人を助けるのに理由が必要かい?」
「いるよ理由! なければ助けるおかしいね!」
「っていうかそれって人なんですか? なんかおとなしくなってるんで放置してますけど、いつ襲い掛かってくるかもわかりませんしっ」
それ扱いされても顔面布ぐるぐるサムライは微動だにしない。
まあ確かにそうだな。
どう考えても危険極まりない。
っていうかなんでこいつ俺たちについてくるんだろうか。
もはや刀も持ってないからサムライかどうかも怪しいし。
「いやよく考えたら追放とか言ってるが2、2で別れることになるじゃないか。レーンさんとアーシュ、俺とこのグルグル顔面布巻とで」
そこで初めて覆面女は俺の肩にポンと手を置いて2、3度うなずいたかと思うと、俺から離れてレーンたちの背後に立った。
「こ、こんなディスコミュニケーションな相手からも距離をとられるってすごいですねっ」
俺は心のなかで二度と人(?)を助けたりしないと誓った。
「え、マジで追放? ネタとかじゃなくて?」
「天使さまは今まで本当にありがとうございました、大詰めの隠密作業には向かないので追放となりましたが、きっとこれがフラグになって最強とかになれますよっ」
「天使さま最強よかったね!」
そんな都合のいい展開あるわけねえだろうが。
くそが。
レーンさんの正体とかばらしまくってやる。
「ただ監視は今後も操った人でしますから変なことしないでくださいねっ」
「俺をコケにしやがって、後悔することになるぞ……!」
◆ ◆ ◆
「申し訳ありませんが魔物のかたのご宿泊は……」
こんな盗賊だらけのど底辺集落ですら宿泊拒否されるって。
どうしようか。
今からレーンさんに土下座でもしてパーティに戻してもらうか?
だがまだタイミング的にちょっと早いよな。
流れ的には俺の代わりに誰かを仲間にして実は俺がやっていた何気ないことがすべてにおいてSSSSプラスランクのことだったことに気づいてパーティがなかば崩壊したころに鼻水を流しながら俺に復縁を求めてこないと追放イベントは終わらないんだよな。
しかしこのまま屋根のない……いや屋根というか天井はあるが、道端に寝るのはちょっとな。
どっか都合よく反社会的勢力に乗っ取られかけている孤児院とか小さい子供に飯を食わせるために盗みを働いている盗賊団とかいないかな。
思い返せばせっかくこういう世界にやって来たのにお約束のイベントに恵まれないよな。
もっといい感じにわかりやすい悪人からろくな文化を持たない愚民どもを救って神のように崇め奉られたりしたいものだけど。
ちょっとそのあたりの建物に火でも放ってやろうかしらん。
そんで取り残された人を空から助けてやったら、貴方様は恩人ですとか言って食う寝るところに住むところをくれたりするんじゃないだろうか。
そもそも人間どもは平気で私の家を焼いたではないか。
逃げ惑う我らを笑いながら追いつめて殺したではないか。
良い狩場を見つけたと殺し尽くしたではないか。
人と我らとの間にどんな違いがあるというのか。
なぜ我らがエサをとれば悪で、人間どもが食いもしない同胞を殺せば正義なのか。
「大丈夫か? 今にもそのへんに火をつけそうな顔してるぜ」
「へっへっへ……気持ちはわかるがやめとけよ。ここの命は軽いからよぉ」
気が付けばおっさん3人に囲まれていた。
やべ、いやチャンスか。
腹いせにちょうどいい相手がでてきてくれた。
「まあこれでも食いねえ」
「げへへ、やめとけよ。こんな嬢ちゃんが俺たちの食う残飯を食わねえだろ」
「げっげっげ! ちげえねえ! それに鳥串なんてこの姉ちゃんが食ったら共食いじゃねえかよ!」
俺に絡むだけ絡んで大笑いするとおっさんたちは道のど真ん中であるにも関わらず、なにも敷かずに座り込んで酒盛りを始めだした。
withコロナ時代の渋○の若者かよおめえらはよ。
特に行き場所のない俺もせっかくなのでその場に座り込む。
「お、なんだ? おめえも俺たちのお仲間か?」
「仲間ってのはいいもんだよな~。俺も若い頃は仲間といっしょに冒険して金を儲けたぜ、ガハハハ!」
「俺はその仲間に追放されたんですけどね」
「奇遇だなあ、俺もだよ! 仲間の金を盗んで追放されたんだよ」
「おっ、気があうねえ。俺も仲間の女の寝込みを襲って袋叩きにされて追放されたぜ!」
「か~! 呆れたクズどもだねえっ。俺は仲間全員で村を襲って返り討ちにあって俺だけ命からがら生き延びたからセーフだな!」
「いやアウトだろ! ぎゃはははは!」
「クズしかいねえなこの街はよ、ゲヘヘヘヘ!」
すがすがしいまでのクズぞろいだった。
「いや俺はあなた達みたいなクズとは違いますから、ちょっとこう……」
勢いに任せて邪神の変装もせずに聖焔騎士団に襲い掛かってパーティ全員を危険にさらしただけだから。
これ冷静に考えたらやばくないか?
「いいんだぜ姉ちゃん、いや、おね兄ちゃん」
「言ったらやべえことは言わなくていい、いやむしろ言うな!」
「そうだぜぇお姉兄ちゃん。聞いたらぶっ殺されるようなことは言わないのがここのただ一つのルールだぜぇ、ゲッゲッゲッゲ!」
俺を御大の生み出したキワモノキャラみたいに扱うのは気に入らないが心は広いらしい。
「その、おね兄ちゃんってなんなんですか?」
「まあ、純粋な女だったら俺たちが声をかける前に消えてるからなあ」
「むしろ俺たちが声をかけれるって女とあれしたやつはひと月待たずに街から消えたよなぁ、いっひっひっひ……」
あっ……この世界でも……。
「それよりもお姉兄ちゃん! 残飯や飲み残し酒以外でも金さえあれば新品の酒もあるぜぇ?」
「あ、そうなんですか。これくらいならだせるんですけど」
俺は器用に羽で財布から金を取り出す。
「かっぱらい酒タワー入りまーす!」
「ありがとうございやーす!」
「盗みでバリバリ強盗コール参りま~す! はい!」
「「ナーナーナナナーナナナナー!」」
「のんでのーんでのんでオネ兄ちゃん!」
「「ナーナーナナナーナナナナーナナ―!」」
「のんでのーんでのんでのんでのんでのんでオネ兄ちゃーん!」
「「「はい!」」」
なんなのこの街。
汚い身なりのわりに異臭はしないおっさんたちに囲まれながら、なみなみと注がれた栓をあけたばかりの安酒を俺は飲み干すのだった。




