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邪神様の仰せの通りに迷宮探索  作者: 内村ちょぎゅう
58/70

と思っていたのか……?

次回の更新は6/3 20時です

 爆心地。

 そうとしか言えないような無残な爆発跡に2人の侍が膝をついていた。


「い、生きてる?」

「なんとかね……うっ」


 普段の侍言葉(と森の乙女たちが信じている独特の話し方)もやめ、互いの無事を確かめ合っている。


「隊長は……?」

「あの化け物が最後に放った熱風で……たぶん……」

「あとの2人は……だめみたいね……」


 侍は焼け焦げたかつての仲間を見てため息をついた。


「6番組はもうだめね……私たちも生きて帰れるかどうか」

「でも、異変の元凶は倒せただけよかった……」

「そうね……あとは姉さんたちが……」


 もはや意識を保つことさえ難しそうな2人は、しかし満足気な表情をしていた。

 その声が聞こえるまでは。


「ふっふっふ……俺との戦闘は楽しんでいただけたかな?」

「そんな……まさか……!」

「はは……化け物ね。もう十分楽しんだっていうのに……」


 中性的な顔に鳥の羽が生え下半身が鱗に覆われた化け物はにやりと邪悪な笑みを浮かべて森の乙女を見据えていた。


「それはよかった。今生の思い出として持っていくがいい。さらばだ森の乙女たち」


 この世の邪悪を煮詰めたような化け物から地獄の業火が放たれる。


「くっ……うあああ……つひにゆく……!」

「くやしく……なんか……あらたのし!」



 ◆ ◆ ◆



 残った森の乙女を始末した俺はやっと一息ついた。

 な、なんかこっちが悪者みたいだけど、これ正当防衛じゃね?

 見た目で悪者と決めつけて襲い掛かってきたんだからさあ。

 いや、レーンに森の乙女は消せって言われて迷宮に来たんだから悪いのは俺になるのか?

 うーん。

 っていうかレーンはどこ行ったんだ。


「天使さまー! あ、いた。だいじょうぶでしたか?」

「まあね。っていうかレーンはどこにいたんだ?」

「いや、戦闘の途中くらいから天使さまの熱風で身体が燃え尽きまして」


 あ、ほんとだ。

 よく見ればさっきの妖精と色々違う。


「ご、ごめん」

「いいんですよ、ロボは替えを見つけてくればいいんですから。それよりもどうでした? けっこう手ごわかったでしょ森の乙女」

「いや結構どころかめっちゃ強かったんですけど……」


 ガチで死んだと思ったわ。

 というより肉体的な頑丈さというかタフさがなければ命尽きてるのはこっちだったわ。


「モンスターを吸ったおかげか知らんが化け物みたいな身体になってて助かったわ。カウンターも発動してなかったみたいだし」

「ああ、カウンターって天使さまを攻撃した時に脳にぐわーって来るあれですかっ? あれって我慢すればできなくもないですよっ」


 そんなもんなのかよ。

 どうも能力の検証が必要だな。

 知らない間に風を操る能力まで得たみたいだし。

 色々とモンスターを吸収したせいで逆に失われた能力とかあったらやばいし。

「じゃあさっそくですけど次行きますかっ?」

「え」

「運がよければ仲間の異変を察知した森の乙女の増援がやってきますよ!」

「ちなみに森の乙女って何人いるの?」

「さあ……クイーン王国に来た時には30人くらいいたそうですけど。かなり無茶な探索を繰り返したみたいですし、さっきのも合わせて三分の二くらいには減ってるんじゃないですか? とにかく戦いの中で死ぬのが生きる目的みたいですから」


 やばい集団なのはよくわかった。

 もう関わるのやめよ。

 ここまで強くなっても死の恐怖を覚えたんだぞ。


「私も強めの手駒をぶつけて2、3人は倒したんですけど、一度仲間を倒しちゃうとあいつらどこからともなく現れて延々と敵討ちを狙ってくるんですよね。お気に入りのロボだったのに休む間もなく襲われて壊されちゃいましたよっ。ぷんぷん!」


 口にだしてぷんぷん言うな、まあそんなところも可愛いけど。

 とりあえず再び高く飛んでその場を離れる。

 あんな戦闘狂侍集団がノーマルモンスターみたいにエンカウントしてきてたまるか。


「どうしますか天使さまっ。このまま地下3階くらいまで行っちゃいますか?」

 地下3階……大広間の階層か。

 俺の身体はけっこうでかくなっている。

 身長で言えば2メートルちょいくらいだが羽を広げた横幅は5メートル超えてるんじゃないか。

 そういう意味では広い空間で戦うべきかもしれないが、今は空を飛べるからな。

 むしろ地上は壁や岩などで視界と逃げ場が少なくなっていて、上から相手を狙えるような階層が有利なのではないか。


「とりあえず下の階に進んでいこう、地上階だとレーンの本体とご主人さまに会ってしまうかもしれないし」

「……ですねっ。私の分隊は下から冒険者たちを追い詰めてますし、天使さまは上の階から押しこんでいく形がベストです!」


 しかしこの邪神プレゼンツの冒険者撲滅キャンペーン、失敗するんじゃなかったか?

 前の俺とリファが補給物資を運ぶ商人は足止めできたけど、その途中あたりで邪神がテンションダダ下がりで中止にしてきたよな。

 タイムライン的にはまだヴェルヌさんが浅い階層を調査中くらいの頃だと思うが。


「うわ……地下2階ってこんな複雑な迷路になってたのか」


 前に地下2階に来たとき、いやこの時間軸ではまだ未来の話だけど、壁がぶち抜かれた最短ルートしか通らなかったからわからなかったが、かなり複雑な迷路になっている。


「ここにいる人間はスルーでいいですっ」

「そうなの?」

「はいっ。ほとんど盗賊関係者ですからね!」


 最短ルート以外を通る人間がほとんどいないことに目を付けた盗賊たちが、迷路の奥深くのよほど運がよくなければ(もしくは悪くなければ)来ることのできない場所にアジトをかまえているらしい。

 リファの言動を考えると盗賊を嫌ってると思っていたのだが、ついでに殲滅しましょうとか言い出さないのな。


「わざわざ排水溝とかゴミ捨て場の奥の奥にまで入り込んでゴキブリを殺しにいく人なんていますかっ?」


 なるほど。


「それよりも地下3階は王国騎士団がうろちょろしてますよ!」

「ヴェルヌさんもいるのか?」

「うーゆ……いませんねっ。団長とか王国騎士団の精鋭はもうちょっと下にいるみたいです!」


 戦力にならなさそうなのは置いていったのかな。

 だったら上空を通ってスルーすれば問題なさそうだ。

 いや、でも待てよ。

 今は王国騎士団がどういう動きをしているのか聞いてみたほうがいいか。


「レーンはちょっと待っててくれ。ちょっと話を聞いてくる」

「えっ!? あ、はい」


 そう言って俺は地下3階で休憩しているらしい騎士団のほうへ飛んで行った。


「あのーすいませーん、ちょっといいですか?」

「ん? どうした? 言っておくが迷宮はもうすぐ一時探索禁止令が……ぎゃあああああああ!?」

「ば、化け物!」

「矢を! 矢を放て! くそっ食らいやがれ! うっ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「やめろ! 撃ち方やめ! この嫌な感じは錯乱系の攻撃をしてくるぞ!」


 あ、化け物になってるの忘れてた。

 しかし人間ってひどくないか?

 こっちは紳士的に話しかけているのに、いきなり弓を射かけてくるなんて非常識すぎるだろ。


「やめ、やめてください! みなさん落ち着いて!」

「ポーション使え! 飲んだ者から射撃再開!」

「撃て撃て! 数で押し切れ!」

「死ねよやー! 鳥女の化け物!」


 だめだこいつら……。

 ちょっと痛めつけて静かにさせないと。

 俺は翼を広げて風を起こし始めた。



 ◆ ◆ ◆



 俺たちは人がまだそれなりにいるであろう地下5階は高く飛んでスルーし、地形がどんどん変化していく不思議ダンジョンな地下6階に到着していた。

 道中のモンスター相手に能力の検証も行ったしなかなか有意義な時間だったな。


「空を舞い、炎と風を操る能力を手に入れてしまったか……くっ、この神にも等しい力、抑えきれるかどうか自信がないな」

「ま、まああれですよ天使さまっ。慣れない力って使い慣れるまで手加減とかできないものですって! どんまいですっ」

「その話はもうするな。でもモンスターを倒してしまってよかったのか?」

「別に魔物は味方ってわけでもありませんし。雑魚はあらかた逃げられるか片づけるかしたので、このあたりの階層をうろついてる冒険者の始末はもう天使さまレベルじゃないと厳しいですっ」


 けっこう道中で返事がないただの屍が転がってたもんな。

 クイーンの迷宮探索がどれくらいの間続けられてきたのかは知らないけど、攻略法がかなり確立してしまったゆえの悲劇だな。

 初心者はどの階層なら安全だとか、この階層はこのモンスターに対策すれば大丈夫とか、最悪の場合は脱出アイテムを惜しまず使えば助かるとか。

 そういうセオリーが一気に崩れると大事故が頻発するわ。

 さすが邪神、嫌がらせのプロだわ。


「誰か助けて! 誰か助けて!」


 そんなことを考えているとテンプレのような助けを求める声が聞こえてきた。


「盗賊と冒険者が戦闘してますね。森の乙女ではありませんからスルーしてもいいですけど」

「ふーん」


 この階層に来れるくせに盗賊に追いつめられるなんて珍しいな。

 別に急ぐ道中ってわけでもないし野次馬でもしてみるか。

 俺はレーンを促すと悲鳴のするほうへと飛んでいった。

これ↓ってどこかのあとがきで書きましたっけ?



作中に全員詠唱とか言ってる人がいます

詠唱ってなんか呪文的な黄昏よりも~って唱えることを指します

しかし作中では魔法を使うのに呪文はないうんぬんと言ってます

矛盾ですね

これはネタを成立させるためにできてしまった矛盾です

作中の魔法はファイアーとか叫ばなくても火が出る仕様です

ただ念じれば火がつくというのは危険極まりないので頭の中でどのような事象を起こしたいのかきちんと構成する必要があるという設定です

その脳内構成というか脳内整理を詠唱と呼んでいるとかでどうでしょうか

また一応ふれておくとフジヤマとか炎の壁とか言ってるのはあくまで集団で魔法を使う時の号令です

そこまで真剣に論じることもないかなあとも思いましたが念の為

もしこのあたり気になっているかたいらっしゃいましたら、そこまで真剣に読んでくださるかたはありがたいです、混乱させてしまい申し訳ありません



っていう説明、貼るの2回目だったらすいません

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― 新着の感想 ―
[一言] まさか主人公がハルピュイアになるとは思いませんでした。やったぜ。
[一言] なんかエルフさんたちはすごい息があってるから 魔法の威力がえげつないみたいなのは見た気がしますね 一番好きなのはサムライ手裏剣です
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