嫉妬
この話は「短く・ちょこっと学園モノ・あっさり」を目指しました。
あ、そっちか!!
というのを狙ったつもりなのですが……。
ただ、「嫉妬」というテーマとしては弱いかな。
君に決して知られてはならない。
僕のこのどす黒く醜い想いを──。
君はクラス一の遊び人。小さい頃から秀才だ真面目だと言われ続けた僕とは真逆の存在。だからこそ僕は君に無性に惹かれてしまう。
白い肌、陽に透ける茶髪。人の心の奥底を完全に見透かすような切れ長の眸に、濡れて挑発的な薄い唇。柔らかそうな耳朶に孔いた校則違反のピアスが光る。
もし、万が一でも絶対にそんなことはあり得ないけれど、それでももし、その唇から毀れる甘い声で囁かれたら、僕はきっとそれだけでイッてしまいそうだよ。
そんな綺麗な君の周りはいつも派手な取り巻きでいっぱい。君はその中心に君臨して、惜しげもなくその蕩けるような極上の笑顔を皆に振りまいて。
ああ、その笑顔、一瞬でいいから僕の為にだけ見せて欲しい。僕以外の誰かにその笑顔を晒すなんて絶対に許せないよ。
お願いだから僕に気付いて。よそ見しないで僕だけを見て。
吹き抜ける風が君の香りを運んでくる。僕の知らない君の香り。
君と取り巻きたちのお気に入りの密談の場所。誰も寄りつかない校舎の裏。いつしか僕は偶然を装ってそこを通り過ぎる。ほんの瞬間でもいい、常に君の存在を感じていたい。僕の視界に君が常にいて欲しい。
「おや? 委員長どの。こんな所に珍しい」
突然降りかかった君の声に、身体が震えた。固まって動けない。
「ここは委員長どのがいらっしゃるにはふさわしくない場所だぜ」
嘲笑のこもった君の声すら愛おしい。プライドも何もかも投げ捨てて、今僕にだけ注がれるその言葉を聞いていたい。
「ちょっと……隼。何してんのよ? 瀬川なんかほっといて早く行こうよ」
君の腕に当然の如く絡む君の彼女。鼻にかかったわざとらしい声がやたら耳障りだ。
「わかったよ、美咲。お楽しみはこれからだろ? 慌てるなって」
君は隣にいる彼女を片手で抱き寄せ、頬に軽くキスをする。まるで僕の存在なんかどうでもいいとばかりに平然と。君からのキスを受けた彼女はまるで猫みたいに甘えてる。呆然と突っ立って何も出来ないでいる僕を見て面白がっているのか、あの女、さらに見せつけるように君にディープキスを仕掛けてる。
ああ……お願いだから君も嬉しそうにそれに応えないで。なんで君の隣にいるのが僕じゃないんだろう。幸せそうな彼女の顏を見て、僕の中に黒くて醜い感情がふつふつと湧きあがる。
「じゃあな、委員長」
何も無かったような爽やかな笑顏で君は僕の脇を通り過ぎてゆく。ふわっと香る君の香り。シンプルなデザインのシルバーのピアスがきらりと僕の瞳に映った。
慌てて振り返って、寄りそう君と彼女の後ろ姿を睨みつける。無意識のうちに両手の拳を握りしめ、唇を強く噛んでいた。
どうして君の隣にいるのがあの彼女で僕じゃないんだろう? どうして同性の君を好きになってしまったんだろう?
できるならあの女をメチャクチャにして、君を奪ってしまいたい──。
僕の奥底に巣食うこんなどす黒い感情を嫉妬と知ったのはつい最近のこと。
君を好きになってからなんだ。
君に知られてはいけない、でも知って欲しい。共にいられないなら、せめて君と同じ物を共有していつも君を感じていたい。
君と同じピアスを僕もしよう。
そう、孔けるのはもちろん右耳に。
ちょっとムリムリ感がありすぎだと反省。
男子の右耳ピアスはゲイであるとかないとか…という話を聞いて思いつきました。
次話「憤怒」に続きます。
お読みくださり、ありがとうございました。