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七つの大罪  作者:
12/20

強欲Ⅳ

軽いBL描写あります。

苦手な方はご注意ください。

 一体何度目の口づけなのだろう?

 応えなど必要ないとばかりに激しく唇を吸われて……めくるめく陶酔で意識が飛びそうなりながらも、自分は本当に世間知らずなのだと思い知らされた。君の本意に気付かず、いじけたつまらない想いに逡巡して。


 ああ……躰の深奥が熱を持って滾るのがわかる。こんな想いは初めてだ。

「で、おまえはどうなんだ? おれに惚れたのは女みたいなこの顏だけか?」

 歓喜とも嘆きともつかずに自分の頬を伝う涙を舌先で舐めとりながら君は意地悪く訊く。

「ち、違うよ……君の妹御を思う優しさとか……意地悪なところとか……」

「何? それから?」

 困惑する自分を薄く笑う君。まるで快楽に翻弄される自分を楽しんでいるかのようだ。

「……わからない……そんなのわからないよ……理屈じゃないんだ……とにかく君という存在すべてを……」

 叫びに近い声が喉から迸った。もう駄目だ。初めて知る欲の情熱に抗うことができない。

「愛してる!」

「上等だ」


 君を抱いて君に抱かれてお互い際限なく求め求められ与えあう。

 もう誰にも渡さないよ。

 そして君のすべてが欲しい。

 自分達は飽くことなく欲するままに互いの躰を貪った。いつかきっと君をここから出してあげる。早く一人前の念者になって君を買い占める。そうしたらもう誰にも指一本触れさせやしない。だからそれまで待っていて。

「誰にも渡さないよ。君の紅い唇も細い指も滑らかな髪も白い肌も黒いその眸も蕩けるような笑顔もこの躰も。もう君はすべて自分のものだ」

「ふん、おれの商売道具が全部おまえのものか……いいさ、いくらでもくれてやる」

「それから最後に一番大切なものも……」

「何だ? 欲深い奴だな。まだあるのか?」

「あるとも! 君の心だ!」


 絶え間なく与えられる快感に喘ぎながらそう言うと、君は優しく耳元で囁いた。

「わかったよ……それも残らずくれてやる……ったく、強欲だけど憎めない。本当に可愛いおれの若様だ」

 ああ……なんて極上の笑顔。自分は君に導かれながら、未だ経験したことのない忘我の極みへと昇りつめていった。

「強欲」は完結です。

時代モノは難しいです。

お読みくださり、ありがとうございました。

次話「傲慢」に続きます。

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