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第7話 止まらない食欲! 魔王の子エリン、超高速成長

「ぷはっ……!」


あまりにも勢いよく飲みすぎたせいで、喉に引っかかった気がした。

私は背中を叩きながら、どうにか体に早く行き渡るようにする。


やがて――


私の体内の魔力が触媒となり、魔王の魔力を増幅し始めた。


魔王の魔力がウランだとすれば、

私の体はそれを活性化させる原子力発電所のようなもの。


そうして、膨大なエネルギーが生み出される。


「ん……」


魔力を感じ取ったのか、エリンが小さく身じろぎした。


残る作業は一つ。


私の体に溜まったエネルギーを、この子に与えること。


そしてそれは――

哺乳類が子を育てるときと同じ方法だった。


つまり。


授乳。


「ごめんね、エリン。少し待って。すぐお乳あげるから」


私は赤ん坊を優しくあやした。


不思議なことに――

まるで言葉が通じているみたいだった。


(そろそろ、いけるかな……)


体の中に、ものすごい量のエネルギーが溜まっている感覚。


このまま溜め込み続けたら、私自身が危ない。


外に出さないと。


私は慎重にエリンを抱き上げ、授乳を始めた。


正確に言えば――

体内で精製された、魔族の赤子専用の魔力を送り込む行為だ。


ジジッ……


青い光が胸元から流れ出し、エリンへと伝わっていく。


「よかった……」


私と魔王の魔力で作られたそれを飲み始めると、

エリンは徐々に落ち着いていった。


(そんなにお腹すいてたのね……)


魔族の赤ん坊は、私の知っている常識とは大きく違っていた。


下手をすれば傷つけてしまうかもしれない。


慎重に育てなければ。


「はぁ……それにしても」


私はため息をついた。


ここ最近、あまりにも出来事が多すぎる。


(本当に……一晩で人生が変わったのね)


昨日まで普通だったのに。


今では――


私は母親だ。


バチッ。


「いたっ!」


胸にチクッとした痛みが走る。


私は急いで反対側へエリンを移した。


左右交互に飲ませる必要がある。


そうすることで、体内の魔力がバランスよくエリンに流れるのだ。


(すごい食欲……)


休むことなく魔力を吸い続けている。


もし魔王の魔力がなかったら――

私の魔力だけでは、とっくに倒れていたかもしれない。


あるいは、エリンが先に飢えていたか。


私は首を振った。


本当に危なかった。


腕の中の赤ん坊。


私は――


母親になったのだ。


その瞬間、胸の奥から湧き上がる感情があった。


母としての責任。


ジジッ!


「いたた……」


再び反対側に移す。


魔王の言う通りだった。


この子――


とんでもない。


気づけば――


髪が伸び、体が大きくなっている。


「え?」


私は目を疑った。


抱いていた籠が、いつの間にか小さく見える。


(魔族の子は成長が早い)


記憶の中の知識が蘇る。


(いや、これは早いとかいうレベルじゃない!)


この膨大な魔力が、全部成長に使われているの?


魔界。


命が常に危険にさらされる世界。


だからこそ――


一刻も早く成長する必要がある。


それが魔族の進化だった。


それでも。


「早すぎるでしょ!?」


私は思わず叫んだ。


授乳してまだ一時間ほど。


それなのに。


エリンはもう一歳か二歳くらいの体格になっていた。


しかも――


まだ飲み続けている。


左右交互に与えているけれど、

私の魔力もそろそろ限界だった。


(どうしよう……)


もし魔力が尽きたら?


そのとき。


体内の魔王の魔力が完全に消えた。


「エリン、もう大丈夫……」


「ぎゃあああああ!」


ものすごい泣き声。


さっきよりもさらに大きい。


体も大きくなっているから当然だ。


「わかったわかった!」


私は慌てた。


「お父さんのところに行って、魔力もらってくるね」


すると――


不思議なことに。


エリンは泣き止み、にっこり笑った。


「……わかってるの?」


私は急いで服を着替えた。


そして籠を持ち上げる。


すると。


スルッ。


自動で紐が伸び、私の背中と籠を固定した。


「すごい……」


落としても大丈夫な構造らしい。


エリンにも安全ベルトが付いた。


私は扉を開いた。


ギィ……


静かな廊下。


魔王城は相変わらず静かだった。


「ぎゃああああ!」


「大丈夫、大丈夫」


私はエリンをあやしながら走る。


魔王を探して。


早く魔力をもらわないと。


最悪――


噛みついてでも魔力を吸い取る。


「魔王……じゃなくて旦那! どこにいるの!?」


私は城の長い廊下を走り回った。


すると。


向こうから黒いタキシードの男が歩いてきた。


丸眼鏡。


いかにも執事という雰囲気。


「あなたは?」


「魔王城の執事、マハトラと申します」


どうやら私の正体は知っているらしい。


「魔王はどこ!?」


「現在、重要な会議中です」


「案内して! 今すぐ!」


マハトラはすぐに動いた。


「こちらです」


途中で彼が尋ねた。


「その子は?」


「魔王と私の子よ」


「おお……めでたい」


だが私は遮った。


「今は急いでるの!」


彼は青ざめ、急いで案内する。


やがて――


巨大な赤い扉の前に到着した。


「ここです。私が――」


「待ってられない!」


ドン!!


私は扉を蹴り開けた。


「魔王! 旦那! いる!?」


室内には長い会議テーブル。


その奥。


玉座に座る赤髪の男。


魔王だった。


「何事だ」


冷たい視線。


「理由がなければ、たとえ妻でも許さぬ」


私は叫んだ。


「魔力が足りないの! エリンが飢えてる!」


次の瞬間。


魔王が目の前にいた。


瞬動。


「……本当だ」


彼は驚いた。


「予備を用意しておいてよかった」


そう言って小瓶を取り出す。


「しかしこれは未精製だ。三分の一ずつ飲め」


私は――


全部一気に飲んだ。


「ゴホッ!」


「大丈夫か?」


「大丈夫!」


体の中で再び魔力が動き出す。


原子炉再起動。


そのとき。


「ぎゃあああ!」


エリンが泣いた。


限界だった。


「みんな後ろ向いて!」


私はテーブルに籠を置いた。


そして再び授乳を始める。


バチッ!


「くっ……!」


針で刺されるような痛み。


でも。


耐えた。


母だから。


やがて――


限界が来た。


そのとき。


魔王が言った。


「もう飲むな」


そして。


「乳母を呼ぶ」


扉が開く。


銀髪の少女たちが入ってきた。


「ライカンスロープと吸血鬼の混血です」


彼女たちはエリンの乳母だった。


私はそのまま――


机に突っ伏した。


限界だった。


そのまま眠りに落ちた。

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