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第6話 魔力融合、そして生まれた最初の子

唇と唇を通して、酒が流し込まれる。


とろり。


私の唇から、唾液と混ざった酒がこぼれ落ちた。

体に力が入らず、拭うことすらできない。


(このままだとベタベタするのに……拭きたい……)


ウェットティッシュでもないかな――

そんなことをぼんやり考えた、その瞬間。


頬を、何かがなぞった。


魔王の舌だった。


彼の舌が、私の唇、頬、そして胸元へと滑り、

さらに下へ流れていった酒を、ゆっくりと舐め取っていく。


(くすぐったい……!

 それに、そこまで……それ以上はダメ……)


気づけば、魔王の顔は私の胸元にあった。


ここまでが、私の我慢の限界。


けれど――

彼はここで終わるつもりはないようだった。


夫として。

そして魔王として。


強き魔族を生み出すという義務。


どうやら今夜、確実な結果を出すつもりらしい。


(魔法で止めないと……

 爆裂魔法でこの部屋ごと吹き飛ばせば……)


意識が朦朧とする中、

とんでもないことを考え始める。


私のMPをすべて使う最上位魔法。


指先に、魔力が集まり始めた。


(うっ……気持ち悪い……)


集中できない。


当然、魔力もまとまらない。


指先に集まった魔力は、すぐに霧散した。


その代わり――


体の奥で、熱い爆発のような感覚が広がる。


魔王が口移しで飲ませた強い酒が、

私の体を支配し始めていた。


完全に無力化。


もう魔力すら使えない。


するり。


魔王の手が体をなぞるたび、

私の服が一枚ずつ脱がされていく。


しかも腹立たしいことに、

今着ている服は、彼が触れるだけでほどける結び方だった。


やがて――


準備が整ったと思ったのか、

魔王は指先で裸になった私の体に触れた。


「……」


小さく、何かの詠唱のような声が聞こえる。


それが――

私の最後の記憶だった。


魔王が私の腰を持ち上げた瞬間。


私は、意識を失った。


「うぅ……頭が……」


ゆっくりと目を開ける。


頭痛がひどい。


ここには窓がない。

時間も分からない。


そのとき、気配を感じた。


そっと顔を向ける。


(わっ!?)


思わず手で顔を隠した。


そこには――

眠っている魔王。


薄い布団越しに、

裸の上半身が見えていた。


少しして落ち着くと、

指の隙間から彼の体を観察する。


フィットネスで作った筋肉じゃない。


実戦で鍛え上げられた筋肉。


例えるなら――


人間の牧場で育った牛と、

野生の草原で育った牛の違い。


彼は、まさに野生の雄牛だった。


(ちょっと押してみたい……)


そんな衝動に駆られる筋肉を見るのは初めてだった。


(すごく硬そう……

 ……って違う違う!)


慌てて思考を戻す。


状況整理。


私は裸。


隣には夫である魔王。


服は――


ベッドの下に落ちていた。


崩れそうな精神を必死に保ちながら、

何が起きたのか思い出そうとする。


そのとき――


酒瓶と杯が目に入った。


(ああっ、そうだ!)


思い出した。


(男に渡された酒は絶対に飲むな……

 あれ本当だった!)


……酒を準備したの私だけど。


とにかく私は大失敗をしたのだ。


取り返しのつかない失敗。


(……あれ?)


でも――


体に異常がない。


魔王は、私に肉体的なことはしていないらしい。


(どういうこと?

 裸にしただけで……?)


そのとき。


ズキンッ!!


突然、腹に激痛が走った。


「痛っ……!」


次元の違う痛み。


すると魔王が目を覚ました。


「もう始まったのか。魔力の融合がこんなに早いとは」


何か知っている様子だった。


「旦那!なんとかして!」


私は彼の髪を掴んで叫んだ。


本当に痛かったから。


「落ち着け!」


だが私は離さない。


死ぬなら――

せめてこいつの髪を全部抜いてやる。


そのとき。


魔王の手が背中に触れた。


バチッ。


電流のような感覚。


一瞬で力が抜け、

再びベッドに倒れ込んだ。


「素晴らしい……

魔力融合がここまで成功するとは。やはり純血の吸血鬼」


(融合とかどうでもいい!

 痛いんだけど!)


私は限界だった。


その瞬間――


私の腹から、黒い球体が浮かび上がった。


そして痛みは消えた。


「驚いた……この魔力量」


魔王はそれを見つめていた。


やがて黒い球体は形を変える。


赤ん坊の姿へ。


「我らの子だ。

長男……だな」


私は絶叫した。


(ええええええ!?)


魔族の子供。


それは――


魔力融合で生まれる。


父の魔力を母体に注ぎ、

母の魔力と融合して子が誕生する。


人間で言えば――


試験管ベビーに近い。


しかも数時間で誕生。


そして。


魔王は言った。


「この子の名は――エリン」


私は呆然とした。


突然、母になったのだから。


すると。


「おぎゃあああ!」


赤ん坊が泣き始めた。


「腹が空いたようだ」


魔王が私を見る。


(私!?)


そして彼は小瓶を差し出した。


「私の魔力の結晶だ。これを飲め」


青い液体。


それを飲み、

私の魔力で中和し、


それを赤ん坊に与える。


それが魔族の授乳だった。


魔王は言う。


「私は仕事がある」


そして去っていった。


私は赤ん坊と二人きり。


「うえぇぇん!」


赤ん坊が泣く。


(仕方ない……)


私は瓶を開けた。


そして――


一気に飲み干した。

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