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プロローグ その日、私は“子どもたちの死”を思い出した
思い出してしまった。
忘れたかった未来を。
勇者が魔王城を攻略し、
すべてを打ち倒し、
世界が歓声に包まれて幕を閉じる物語。
それが“正しい結末”だと、
誰もが疑わない物語。
だがその裏側で。
私の子どもたちは、
勇者の剣に貫かれ、
物語の犠牲として命を散らす。
まだ幼く、
無邪気に笑い、
母を呼び、
明日を疑うことすら知らない、この子たちが。
物語の都合で、
当然のように殺される未来。
……ふざけないで。
そんな結末、認めない。
私は転生者だ。
この世界が“ゲーム”だった頃の記憶を持つ者。
そして今は。
魔王の妻。
悪役魔王妃エステル。
物語の“最後に討たれる側”。
ラストボス。
滅びる運命を背負った母親。
……だからこそ。
守れるものがある。
運命が決まっているなら。
シナリオが変わらないのなら。
世界のほうを書き換えればいい。
勇者の正義も。
物語の結末も。
滅びの未来も。
全部。
母親を、甘く見るな。
この子たちは死なせない。
誰にも奪わせない。




