15話 鬼頭やさことの、赤い箱の秘密
学校がテスト期間に入った。
授業は午前中で終わり、午後は自習時間。
俺はジムに行く予定だったけど、ふと思いついた。
今日はサプライズで、早く帰ってやさこを驚かせよう。
テストは手応えがあった。
復学してから勉強を詰めてきたし、やさこが毎日作ってくれる飯のおかげで、集中力も前よりずっと持つ。
答案を出した瞬間、頭に浮かんだのは「ジム」じゃなくて、やさこの顔だった。
学園を出る途中、コンビニでプリンと辛いスナックを一袋ずつ買った。
「今日は早く帰る」って連絡したら、サプライズにならない。
だから黙って帰ることにした。
テスト終わりに学校を出て、マンションに戻った。
エレベーターで上がって、ゆっくり玄関の鍵を開ける。
音を立てないように、そっと。
靴がある。やさこ、いるな。
でも、家の中が静か。音がしない。
寝てるのかな?
そっと中に入って、リビングに行く。
いい匂いがする。
昼ごはん作ってたのかな? 鍋に何か残ってるけど、やさこはいない。
テーブルには使いかけの調味料と、小さめの取り皿。
さっきまでここにいた気配はあるのに、声もテレビの音もない。
静かすぎて、逆に胸がざわついた。
やさこの部屋のドアを、そっと開けてみる。
いない。荷物は整理されてるけど、人影なし。
洗面所も、ベランダも確認した。
やっぱりいない。
でも、鍵は内側から閉まってた。外に出てるわけじゃない。
やっぱり寝てるのか、と思って、寝室に向かった。
ドアを少し開けて、覗く。
ベッドの上に、布団がもこっと盛ってある。
やさこは布団の中にいるみたいで、頭が出てなくて、布団が少し動いてる。
またあのクセか。頭まですっぽり入って、もぞもぞしてる。
変な寝方だな? 可愛いけど。
枕元に、赤い箱が置いてある。
あの、引っ越しの時に見つけたリボン付きの小さい箱。
やさこが必死に守ってたやつ。
今、ベッドのすぐ横に置いてある。
光の当たり方で、赤い箱の角がつやっと光った。
何度も見たわけじゃないのに、妙に目を引く。
あの時、俺の手を叩いてまで守った箱。
中身は何なんだろう。
実父の遺品か、誰にも見せたくない思い出か。
それとも、俺が勝手に想像してるだけで、ただの小物入れかもしれない。
気になる。
でも、勝手に触るのは違う。
頭の中で理性と好奇心が綱引きを始める。
これは、チャンスかも。
俺はニヤニヤして、脅かす準備をした。
布団の端をそっと持ち上げて、
「わーっ!」って飛び込むつもり。
やさこの反応、絶対可愛いよな。
箱の謎も、ついでに聞けるかも。
一歩、また一歩。
床がきしむ音すら出さないように、つま先で近づく。
心臓の音だけが、やけにうるさい。
布団のふくらみが、くにっと小さく動いた。
起きてるのか、寝ぼけてるのか。
俺は呼吸を止めるみたいに息を潜めて、
そっと、指先を布団の端にかけた。




