11話 鬼頭やさことの、同棲準備
付き合ってすぐ、同棲が決まった。
俺のマンションに、やさこが来る形。
広い部屋だし、ジムからも近い。親の金で借りてるけど、やさこが「努力の無駄遣いみたいでムカつく」って言いながらも、結局許してくれた。
まずは、やさこの実家に挨拶に行くことになった。
母親と継父に、ちゃんと顔を出さないと、って俺が提案した。
やさこは「めんどくさいけど」って渋々了承。
週末、再婚後の家に向かった。
東京郊外の普通のマンション。
やさこは緊張した顔でチャイムを押した。
出てきたのは、母親。
化粧が濃くて、疲れた感じの女性。
継父はリビングでテレビ見てて、立ち上がろうともしない。
「彼氏? へえ……」
母親の反応は、薄い。
俺が頭下げて挨拶しても、「ふーん、よろしくね」ってだけ。
やさこが「同棲するから」って言ったら、
「ああ、そう。気をつけてね」
それだけ。
継父に至っては、チラッとこっち見て「金あるならいいんじゃないの」って一言。
無関心すぎて、こっちが気まずくなるレベル。
やさこは黙って俯いてた。
実父の死別、再婚後の冷たい家庭、彼女が一人暮らししたかった理由が、痛いくらい分かった。
帰りの電車で、やさこがボソッと。
「……悪かったな。
あんな親で」
俺は手を握って、
「いや、俺は嬉しいよ。
これで、やさこを独り占めできる」
やさこは「もう」って言いながら、でも指を絡めてきた。
少し、甘えた顔。
次は、引っ越し手伝い。
荷物は実家から直接運ぶことにした。
やさこはまだ一人暮らし始められてなかったけど、部屋に置いてた私物をまとめて。
引っ越し当日。
俺がトラック借りて、実家に行った。
やさこの部屋に入ると、狭いけど、やさこらしさが詰まってた。
キッチンに激辛調味料がいっぱい、棚にちいかわのぬいぐるみ。
服を詰めてる段ボール開けたら、下着がチラッと見えて、レースの黒いヤツ。
俺はドキッとして、視線逸らした。
やさこは気づいて、顔赤くして、
「……見んな、ばか」
って段ボールを蹴ってきた。
でも、怒ってるより照れてる感じ。
俺が「ごめん! でも、可愛いよ」って言うと、
「もう!」って枕投げてきたけど、力弱い。
荷物を運んでる最中、謎の赤い箱が出てきた。
小さくて、リボン付きの可愛い箱。
棚の奥に隠してあったやつ。
俺が「これ、何?」って触ろうとすると、
「触んな!!」
やさこが飛んできて、俺の手をパシンって叩いた。
赤い瞳が本気で怒ってる。
「秘密! お前の知らないとこ触んなよ!」
エロいもの? それとも、ちいかわの限定グッズ? 実父の遺品?
気になって仕方ないけど、俺は大人しく手を引いた。
「分かった分かった。秘密は守るよ」
やさこは「ふん」って箱を抱えて、顔赤くして黙っちゃった。




