10話 鬼頭やさことの、二度目の告白
プロカードを取得した直後、会場を出てすぐ、俺はもう一度、告白した。
「やさこ、好きだ。
今なら、君の夢叶えられるよ」
やさこは赤い瞳を細めて、照れ隠しで俺を睨んだ。
「……バカ。遅せーよ。
まあ……いいけど」
そう言って、彼女は俺の手をぎゅっと握った。
指が絡まって、離さない。
ツン極端だった壁が、ようやく崩れた瞬間だった。
俺たちは、付き合い始めた。
ここで、確定した。
付き合って最初の食事は、いつもの定食屋じゃなかった。
プロカード取得のお祝いに、やさこが選んだのは、コンビニ横の隠れ家みたいな中華屋。
古い木製テーブルに座って、激辛麻婆豆腐を注文した。
食べ終わって会計の時、やさこが財布を開いて、当然のように払おうとした。
「今日は私が払う。
プロカード取ったお祝いだから」
俺が「いや、俺が」と言いかけると、彼女は短く、でも優しく止めた。
「……いいよ。今日は、私が」
声が少し甘くて、店内の空気がふわっと温かくなった。
店を出て、外の夜風に当たると、やさこがスマホをいじりながら、俺の腕にそっと寄りかかってきた。
「最近、バイト増やしたの。
お金、結構貯まったよ。
一人暮らし……今月から、始められそう」
あまり重くない声。
でも、誇らしげで、照れ隠しみたいに眉が少し上がってる。
俺はびっくりして、
「え、マジで? すごいじゃん。おめでとう」
やさこは俺をチラッと睨んで、でもすぐに目を逸らして、
「……見栄とかじゃなくて。
継父と合わないし、自分の力でやりたかっただけ。
バカ」
指先がそわそわしてて、可愛い。
俺はふと思って、勇気を出して言った。
「……じゃあさ、同棲しようか」
やさこがピタッと止まって、俺を振り返った。
「は?」
俺は続けた。
「俺、実は転校来てからずっと一人暮らしなんだ。
親が裕福で、神奈川から東京に来てるんだけど……結構でかいマンション借りてるよ。
部屋余ってるし、ジムからも近い。
一緒に住もうよ。やさこの飯、毎日食べたいし」
やさこは一瞬、固まって。
それから、赤い瞳を大きく見開いて、
「……は?
お前、一人暮らし? しかもでかいマンション?
……私の努力、何だったんだよ!!」
憤慨全開。
頰が膨らんで、俺を睨みつける。
バイトで必死に貯めてたのに、俺がすでに広いところ持ってるなんて、ショックみたい。
「バカ! もう!
言えよ早く!! あんなにバイト増やして、貯金頑張ってたのに……!!」
ツン極端に怒ってるけど、声が少し震えてて、照れが混じってる。
俺は慌てて、
「ごめん! 言いそびれてた!
でも、だからこそ一緒に住めるじゃん。
やさこが来てくれれば、毎日帰るの楽しみになるよ」
やさこは「ふん……」って鼻を鳴らして、腕組んだ。
でも、頰が真っ赤で、視線を逸らしてる。
「……努力、無駄じゃなかったけどな。
まあ……許可、してやるよ。
条件は甘くないからね。
家事は私がいっぱいやるけど、お前もちゃんと手伝えよ」
少しだけ甘えた声。
俺がニヤニヤすると、
「もう、そういう顔すんな!」って肘で突ついてきたけど、力弱い。
その場でスマホ開いて、俺のマンションの写真見せて、
「ここ、いい場所だろ? 駅近いし。
……来るなら、ちゃんと来てよ」
俺は彼女の手を握り返して、
「絶対。毎日、帰るよ」
やさこは「もう……」って言いながら、
でもぎゅっと握り返して、離さなかった。




