異世界の生き方手引
何となく思い付きで書いてみた短編です!
反応がよければ長編として書くかも?
転生もしくは転移した君がこれを見つけたのなら、私に感謝して欲しい。
この世界の言語は日本語ではないから、ここに書いてあることを読める者はいないだろう。この世界で生き残るための知識と経験を此処に書き記しておく。
その1 衣類について
まずもって衣類は高い。
身分が下の者であれば死体から回収した衣服をしていることも珍しくない。中流階級以下の者にとっても中古の衣服を購入しそれを修繕しながら使うのが一般的だ。もし、今の自分の格好を変えたいとか、直ぐに衣服が欲しいというのであれば、それなりの金を用意する必要がある。
そこで気を付けなければならないのは衣類の質の悪さ。転生前の綿や絹、化学繊維を使った生地は期待してはいけない。安ければ亜麻と呼ばれる繊維を使ったものがあるが、ガサガサで肌触りが悪く体が痒くなるのでお勧めしない。諦めて中古でも、綿のチュニックなどを買おう。
※全裸で過ごしていても犯罪という訳ではないが、人には避けられるだろうし、騎士に見つかれば連行され牢に繋がれるし、いきなり切り殺されても文句は言えないのでお勧めしない。それに、この世界は夏でも夜だと肌寒いことがある。
その2 食事について
食事は貧相。
君が私と同じ日本人であったなら素直に同情する。米が無ければ生きていけない自分にとって、この環境は地獄であったし、美味しくない食べ物を食べるのは食事というより栄養補給だ。
朝飯に”カチカチの黒パンと少しのチーズ”だけだった?諦めてくれ、それは豪勢な方だ。
昼飯がスープだけだった?それは普通だ。
夜飯は保存された豚肉や魚、野菜のシチュー(クリームではない)や豆の粗煮とパンだったり、正直貧相だ。
勿論自分の社会的階級が上がれば上がるほど、食べる物の鮮度や種類が増えて来る。それこそ貴族や大商人になれば小麦粉を使った料理だったり、多少現代人にも原型だと察することが出来る料理が出来たりする。米は……諦めるか、人生を使って探し続けろ。
※食事が作られる過程やそのものを意識してはいけない。現代人だったら考えらえない程の環境でやっていることがある。いくら腹が減っていても匂いがおかしかったりしたら諦めろ。
ちなみに飲み物に葡萄酒やエールが出て来るのは、衛生的な水を確保するのが難しいからだ。もしこれを読んでいる君が酒に弱いならば、自前の水筒を用意しよう。綺麗で衛生的な水分を補給するのは、自分で努力するしかない。
※注1:この世界の水には水道水のように塩素が入っているわけではないので、直ぐに細菌が繁殖して水が腐る。そんなものを飲んだ日には、しばらく動けなくなるのでこまめに水を入れ替えろ。
※注2:飲み水は流水か湧き水を使え。あとは生き物が生息している事を確認すべし、何も見えないのだったらそれは生物にとって毒だ。
その3 住居について
これは、もはや諦めよう。
宿屋で一番安く済まそうとしたら、ロープが渡された部屋に詰め込まれて座って寝させられた?この世界では屋根があるだけマシだ。
であればと上等な客室にしようと思ったら、ベッドがカチカチだった?横になれるだけマシだろう?
更に上等な客室にしたらベッドが柔らかくなったが、今度は風呂が無い?諦めろ、それは探す方が大変だ。
もし体を包み込むような柔らかさのベッドで毎日寝たいのならば、君は金に困らない職を見つけて手にしなければならない。もし、毎日風呂かせめてシャワーを浴びたいと思うのであれば、君が目指す先は貴族か大商人かもしれない。ちなみに貴族でも毎日入る奴なんて一人も見た事は無いが……
皆が皆”とてもいい匂い”をしていたら、気にならないだろう?
その4 冒険者について
モンスターを狩る事は慣れるか?
慣れる。
人型のモンスターを殺す事には慣れるか?
答えは慣れる。
人を殺す事には慣れるか?
答えは慣れるだ。
自分はそんな命を軽く思う人間じゃなかった。
むしろ虫を踏みつぶすのさえ罪悪感を覚えていたほどの人間で、自分で言うのも自惚れかもしれないが、優しい心を持っていたと思う……この異世界に来るまでは。
転生した時に謎の存在や神は現れなかったし、異世界で無双できるようなチートを授けてくれることも無かった。まぁ、自分がいた地球の日本にもそんなチーターはいなかったのだから。それも当然なのかも知れない。
現代日本に生きた知識だけは持っている。自他共に認めるオタクなせいで無駄な知識も大量に。
ただ、それが役に立つかと言われると微妙。実現するためにはある程度文化や科学が発展していないと役に立たない事も多い。
最後に大事なアドバイスだ。
慣れは理性に勝る。
これが自分が異世界で学んだことだ。
あなたの家の前に1万円が”ただ”落ちてたとしよう。
恐らく、皆が周囲を見て落とした人が居ない事を確認する。そして少しの逡巡のうちに、1万円という額の大きさから、それを放置して目的に向かって歩き出す。(警察に届ける人もいるだろう)だが、そのお金は家に帰って来た時も、次の日も、また次の日も、1週間後も1カ月後もそこに”ただ”あり続ける。
あなたは、いつの日かそれを拾って自分の物にするだろう。(それにかかる時間は個人の良心や理性の総量によって違う)
警察に毎回届けていた人も、いつか逆に疑われそうになることが怖くなり、やめてしまう。
そして、いつかその手に1万円を手に取り、懐に収めるだろう。
次の日にまた1万円が家の前に落ちている。
貴方は恐怖する。
誰かに見られていたのだろうかと……
だが、またあなたがその1万円を手に取るまで、それはただそこにある。
いつしか、貴方は毎日落ちている1万円を躊躇することなく懐に収めるようになるだろう。
これがこの世界だ。
殺す事が生きる事になる。
逡巡していてもそれが当たり前の世界ならば適応するしかない。
”慣れたら良い”
この世界の貧相さも慣れるものだよ。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




