第37話 怒りのタナ
「どこが一件落着だ!!」
「!!」
どこからかそんな声が聞こえて辺りを見渡すが魔族と戦ったメンバーしかいない。
俺の幻聴だったのか? と初めは疑ったが、みんな発言者を探していることは幻聴じゃ無いって事だよな……。
一体何があったんだ?
そんな時、領主亭の玄関の1部の床がくり抜いたかのように、形そのままで上に浮き出し、その後横にスライドして行った。
その異様な光景に、俺たちは息を合わせ戦闘態勢になるが、そこから出てきた人物は……。
「ふぅ。やっと出れたわい。武蔵の声が聞こえるもんだから安全だと思って出てきたらなんだ、この仕打ちは!!」
穴から出てきたタナに向けて、炎帝、原物は威圧感を出しながら手をかざし、シア、リアに関しては剣を向けている。
まるで敵陣にやってきたみたいな光景になってしまっている。
「こいつ誰だ? なんでこんなところから出てきたんだよ。」
「おい!! よくこんなところにいながら俺のことを知らねぇとか言えるな。俺はこの街の領主。タナだ。って自己紹介してる場合じゃねぇ。武蔵、現状どうなった? 教えてくれ!!」
「中級魔族はたった今倒してもらい、ほかの魔族は、どうですか? 残り4匹いたはずですけど……。」
「あの雑魚か、一瞬で終わったわ!! 正直俺の出番なんてなかったけどな。」
「そうですね。あれぐらいなら私一人でも十分でしたが、中級はそうは行きませんからね。本当に原物さんがいてくれて助かりました!!」
「お前はさっさと仲間を増やして強力なパーティーになってさっさとS級にあがりやがれ!! ほんとめんどくさいことS級冒険者に頼むバカばっかりなんだからよ。ほんと、冒険者という職業がバカバカしくなるぐらいだからな!!」
「……。頑張ります。」
最初は目を輝かせていた炎帝だったが、最後の方に行くにつれ光が失い死んだ目になっていった。
多分A級でも相当めんどくさいことをやらされているんだな。
それに比べて、俺は……。
まぁ、成長途中ということにしとくか。
ここでタナは「うるせぇな。」と小声でいいながら、後ろにいる原物と炎帝を見ようとするのだが、ここである大事件に気づいてしまう。
「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺の家が潰れちまってる!! ふざけんな!! 魔族の野郎、俺が地上にいない間にこんなことやりやがって、生きてたら本気で殴りかかってたところだったな!! あああ!! マジでムカつくな!!」
イラつきを隠せないタナだが、それに対しすごい冷静な言葉で原物は述べた。
「あれ、魔族の仕業じゃなくて俺が壊したんだよ。魔族を一気にやっつけるにはこっちの方が楽だからよ。ちょうどいい花瓶飾ってから、魔族にぶつけてやったわ!! そしたらよ。花瓶同様木っ端微塵になりやがって、雑魚がいきがんなって話だよな!!」
「お前か!! 武蔵、こいつ殺してくれ!! 死体処理はどうにかするからよ!!」
「……。」
ただただ、そんなことを言われても困るとしか言えないが、タナは怒り狂ってやっと穴から出てきた。
あなたから出てきたタナは、拳を握りしめそのまま原物に向かって走り出すが身長が小さいので原物にたどり着くまで時間がかかりそうだ。
肝心の原物は、「はぁ。」とただため息を着いただけで、タナが近くに来ても身長差があるので頭を抑えて即終了となってしまう。
「ふざけるな!! 元に戻しやがれ!! 代々領主が受け継がれてきた大切な建物なんだぞ!! それに、この街で商売やっているみんなの大事な記録もあそこに収納してあるんだぞ!! その大切さがお前にわかるのか!! 分からねぇよな!!」
「わかった、わかったから手を話せ。ちっ。うるせぇな。破壊を楽しみ、元に戻す。そして再度繰り返させる現実を受け入れられる覚悟はいざ知らず。戻りし時間を味わい、味わい、思いを受けつなげ。リペア。」
「何言ってんだこいつ!! ふざけるのも……。いいか……。げんに……。マジかよ……」
タナはずっと殴っていたが(距離的に届いていない)後ろにある光景を見て思わず手が止まってしまった。
俺はこの光景を見るのは2回目だが、今回は前回よりも直す対象が大きいしのでゆっくり見てしまう。
崩れていた建物の残骸に急に温かみのあるいろがついたと思うと急に動き出し元に戻ろうとしている。
下からとかではなく、一気に直していくその姿、こんな綺麗な光景はどこ探しても見ることはできないだろう。
本当にチート級な技だな……。
「何そんなに見てんだよ。ただ元に戻ってるだけで珍しくもなんともねぇじゃねぇか。そんなことよりも、武蔵。なんでお前来たんだよ。もちろん俺の店潰れてねぇだろな。」
「……。」
「おいおい、もう少しここで楽しもうと思って買った店だぞ。こんな事件があったばっかりだから大丈夫だとは思うが、泥棒が来たらどうするんだよ。食器とかは、旅をして厳選した素晴らしい物だぞ。マジで頼むよ……。無事であってくれ〜。」
悲しそうに手を合わせて祈る原物の姿に、元いた日本をどことなく思い出してしまう自分がいた。
この世界に来て手を合わせる文化が無いのかと思っていたが、そうではなかったんだな……。
そんな悲しそうにしてる原物の隣でただ俺をじっと見ている人物がいた。
「おい、先程の魔族が言っていた神の使徒がどうたらみたいな話があったが、どういうことだ? 説明してもらおうか!!」
「おっ。たしかにそれは気になるな。この原物よりも神に愛されている者がいるなんて思いもしねぇからな!!」
「いや……」
「もちろん逃げるな。お前ごときすぐにでも捕まえられるんだからな。それともなんだ、足の一本でもおっとくか? どうせ直せるんだから、変わらねぇだろ。それに泥棒に入られてたらお前を死ぬまで働かせるつもりだからな。」
そういいながら、指をボキボキと鳴らす原物。
その姿、そして原物から感じられる威圧感で俺は恐怖に駆られるのであった。
このまま異世界転移したことを話すべきなのか。女神のことは?
一体何を隠して、何を言うべきなのか?
そんなことが頭の中でぐるぐると回っていた俺だったが、原物は急に指を鳴らすのを辞め何か真剣な顔になった。
だが、誰も原物に対して何もしていない……。
一体何が?
ピロン!!
あっ。またメール。
そういえば、さっきも読んでなかったけど、なんだったんだろ?
俺はメールボタンを押そうとした瞬間原物が話しかけてきた。
「武蔵、そのことは言わなくていい。だいたいわかった。そうか、お前もそうなんだな……。」
しみじみいう原物だが、そういうことはもしかして神の通告が入ったということなのか?
? 「お前も」って言ったよね……。ということは、原物も転移者?!
その答えを導いた時、俺はとてつもないイラつきを覚えた。
ふざけんなよ!!
なんでこいつは最強のスキル持ってて、俺はこんなくそざこのスキルなんだよ!!
何がルーレットで決めるだよ。嘘つきじゃねぇか!!
マジでイラついてきた!!
このメール読まないでおいとこ。
急にキレたのが顔に出ていたのか、ユイに小声で「大丈夫?」と言われたのだった。
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