第30話 牢獄であった人物は……。
「お前はここにでも入っとけ!!」
「おっ!!」
入る寸前で押された俺は転びそうになりながら牢獄の中に入るが、それと同時に後ろからガチャリという
音が聞こえた。
反射的に振り返るがそこにはもう誰もいなくただただ冷たい風が通っている音、少し遠くから聞こえる足音のみとなっていた。
はぁ。
なんでこんなことに……。
「何をしでかしてここに来たんだ?」
「えっ?」
「あまり大きな声は出すな。こっちだ」
「……。」
そこには、髪と髭が長く伸び、何日も洗っていないのがわかるような髪質をしている少し小さいおじさんがいた。
薄暗い上に、テンパっていたので相部屋ということにきづかなかったが、誰かがいるのなら少しは安心だな。
いや、ちょっと待てよ、逆に殺されたり、パシリとか……。
それに俺は弱いし……。
そんなことを考えていると、鼓動が早くなり足が震えてきてその場から動けなくなってしまう。
そんな姿を見てその男は「はぁ。」と溜息をつきながらこっちへ向かってきた
「ひぃ!!」
「慌てるな。まず座って話でもしようじゃないか」
「……はい」
言われるまま地べたに座り近くに男も座る。
そして、男は口を開け小さな声で話してくる。
「お前は何もんだ? なぜこの街にやってきた?」
「えっ。」
一瞬で頭が真っ白になるが、強者のオーラみたいなものを感じてしまい、何か言わないと!! と思いながら頑張って答える。
「そっそれは、いっ以前いた街で受けたクエストでこの街に来ました……。あっ。冒険者ですっ!! 」
「ああ。だいたいわかった。そういうことか……。お前さんは、今のこの街はどう見える? 素直な感想が欲しい」
男は長い髭を触りながら声のトーンを落として伝えてきた。
「物価が高いように感じます。それに怪しい目線も感じますし……。あまり他の街に行ったことがないので詳しくは分かりませんが、少し住みずらそうかと……。」
「そうか。まぁ、そうなるだろうな。まぁ、とりあえずよろしくな。俺はタナだ。」
「こちらこそ。武蔵と言います」
そうしてよく分からないおじさんとの共同生活が始まるのだが……。
「……。」
「……。」
冷たい鉄格子が見えるだけでただただ何も会話が無くし過ぎ去っていく時間。
こういう時間はいつも以上に時が経つのが遅い気がするが、そもそも時計なんてものがこの世界にないみたいだからな……。
はぁ。
今のところ処刑とも言われてないから一応救いはあるが、この街が本当に魔族に囚われているのなら、何か実験に使われる可能性がある。
それに脱出できそうにないし、シア達には俺を助けなくていいってことも伝わってると思うし……。
はぁ。本当にどうするかな……。
ただただ頭を悩ませることばかり増えるが、時間という区切りがないのでいつまでも考えられるという現実を頭の片隅で感じる。
はぁ。
「おい、武蔵と言ったな」
「えっ。はい!!」
「うるせぇ。静かにしろ。それよりもお前はここで起こっていることをわかっているのか? ここは魔族が領主になりきってるくだらない街だ。以前は活気が溢れつつも自然があり素晴らしい街と言われていたのだがな、今はそんな面影すら無い。まぁ、めんどくさいみたいな顔をしないで聞け。俺が知ってる情報は魔族は5人。しかもいちばん強いヤツは人間がいくら束になろうが勝てるようなあいてじゃねぇ。あの威圧感。いるだけで体のそこから震えが止まらねぇ。悪いことは言わねぇからお前は脱出するか?」
「……」
「するのか?」
「……。えっ?」
「だから、脱出だって言ってるだろ」
「え!!」
「うるせぇな!!」
そう言いたがらタナは俺の頭にげんこつを一発食らわせてきたが、今まで感じたことがない痛みを感じる。
もはや頭がかち割れたのではないか? と思うほどだ。
痛みで涙が垂れそうになるけど必死に我慢しているが、多分顔に出てしまうので俺は一瞬後ろを向いて涙を腕で拭くが……
「すまん、すまん、ちと強すぎたな。いいか、本当に静かにしろよ。俺のことを心配なんてするなよ。あいつらは俺を殺せねぇんだよ。ある諸事情があってな。お前ら冒険者は罪がねぇのにこんな場所に入れられてるのは申し訳ねぇ。だからといってはい脱走の手伝いします。とも言えねぇんだよ。結局は痛い目に会うからな。だから、どこか遠くの冒険者ギルドに行って強い冒険者を呼んできて欲しい。なるべく勇者とか言ってる化け物みたいな奴らもな。あれば生半可な冒険者じゃ一瞬で殺されて終わりだな。どうか? 頼めるか?」
「はっはぁ……」
「おいおい、しっかり返事をしろよ!!」
そういいながらこのタナは俺の背中を叩くがその衝撃が走るが、げんこつの時もそうだが、手加減というものができないのか!!
そもそも、俺のよりも強いんだから俺なんかほっといて脱獄すればいいのに。
こんな奴といつまでも一緒にいたら、こっちの身が持たねぇよ!!
そう思いながら先程と同様に涙目になっていると、
「おいおい、本当に大丈夫か?」
などと声をかけてくれる。
ほんと、誰のせいでなってるのか!!
その後タナと色々と話したが、脱出決行日は明後日に決定した。
肝心の脱出方法が床のタイルを1枚剥がすと通り道になっており、そこから排水管に繋がって街に出れるらしい。
それに、タナはこの街の本当の領主らしい。
だからこそ、脱獄をしてしまえば側近や家族が殺されるのでここからは絶対に出られないらしい。
とりあえず、今日、明日はゆっくり寝て強い冒険者に助けを呼び絶対にタナ達のことを守ると心に決めながら就寝しようとしたところ……。
ピロン!!
ピロン!!
いつも恒例のめんどくさい女神メールの着信がなったのであった。
月水金更新予定




