第23話 ユイの気持ち
「終わったよ!! ってなんか武蔵くらい顔してくけど、何かあったの!! 大丈夫? もしかして怪我しちゃったり?!」
「·····。大丈夫だから」
「もしかして、私と離れちゃったのがそんなに寂しかったとか?」
「ごめん、そういうのじゃない·····」
「ごめん、ちょっと冗談言ったらまずかったよね·····。」
「「·····。」」
「とっとりあえず、武蔵に魔物たちを収納してもらおっか。武蔵よろしく!!」
「うん·····。」
無理やりテンションを上げてくれたシアに返答し、俺は魔物たちの残骸がある場所へ移動する。
それにしても、強くなったって喜んでいたが、女神の力を相当借りてやっと魔物を倒せていた。ということだったのか……。
本当の俺の実力なんて知れている。
本来の実力では、ゴブリンの1匹も倒せないほどだろう。
俊敏だって今の何倍も遅くなることだから追いつかれるすぐに殺される·····。
何が追いつくだ。
気持ち悪い。
何を夢みていた·····。
自分が調子乗っていた事に苛立ち、憎悪を感じる。
俺は下を向いたまま魔物の残骸の場所までいき、そのまま収納魔法で閉まっていく。
これも女神がくれた魔法だからな·····。
なんやかんやいって俺はあの女神がいないとこの世界では生きていくことさえもできない·····。
俺は弱い·····。
1人では何も出来ない。
……。
とりあえず終わったから集合するか·····。
「お疲れ!! ありがとね、収納魔法に入れてもらっちゃって。私たちが運ぶとなると一部だけになっちゃうから、相当助かるよ!!」
「うん·····。」
「もうそんなに落ち込まないの!! だって私たち全員無事で帰ってこれたんだよ!! 正直いって相当大怪我はするかなって思ってたから大成功だよ!! ねっ、ユイ?」
「えっ。大成功。うん。大成功。武蔵が頑張ってくれたおかげ。だから·····。ムイを呼びに行こっか。」
「あっ。そうだね!! みんなで大事な報告しないとだもんね!!」
「うん!! ほら、武蔵いくよ!!」
「うっうん」
俺はリアに手を引かれながら山の入口へと向かう。
途中で元々通ってきた道に戻るのに身体強化を使えない俺は「そのまま降りるのは危ない。」と言われたのでリアに抱えられながら降りてもらった。
リアは「ジャンプ力はどうにでもできないけど、降りる時は身体強化で行けるから楽ちんだよね。」と言っていたので原理はそういうことなのだろう。
はぁ。
いつまでも落ち込んでられないってわかってるけど·····。
だけど·····。
みんなにも気を遣わしちゃってるし·····。
はぁ·····。
「武蔵、そこまで気にすることない。実際にそのステータスならあの攻撃やスピードはありえない。だからこそ女神から愛されてる証拠でしょ。愛されてるだけですごいことなんだからそんなに落ち込まないで·····。」
「どうせユイは冒険者になる時俺よりもステータス強かったでしょ。いや、生まれた時からかもしれない。これは運命なんだよ。俺は弱いまま。まともなスキルも使えない。俺は·····。俺は·····。」
愛されてるだって。バカ言うなよ。こんな不遇なスキルをもらって不幸しかないって言うのに。
俺は下を向きながら歩いていると、道筋に急に影ができ、頭をあげるとユイがいた。
ユイは俺のぽっぺを両手で叩いてその状態で真剣な目で俺を見てきた。
「確かに私は武蔵よりも強い状態で生まれ、冒険者になったけど、それがなんなの!! 私だって周りと比べたらすごい弱くて無力を感じた。だから、死にものぐらいで何度も練習し、何度も死にかけるような思いもした。でも、私は諦めなかった。諦めたら時間はそこで止まってしまう。成長しないんだよ。武蔵はそれでいいの。今は無理かもしれないけど、武蔵と一緒にいっぱい色んな思い出を作っていきたいって思ってる。一緒に色んなところに冒険に行って頑張ったね。って言い合える仲間になりたい。武蔵が落ちそうになったら助けてあげたい!! 武蔵、お願い。自分をそんなに卑下しないで。色々と大変な思いをしながら楽しそうなあなた方が好きなの。お願い!!」
「えっ。ユイが武蔵のことを·····」
ユイは涙を流しながら言ってくれたが肝心の俺の心はポツリと残されているままだ。
それにシアはユイの告白を聞いて空いた口が閉じなくなっている。
ユイがここまで言ってくれるのは正直嬉しい気持ちもあるが、俺はユイと比べ数十倍も弱い。
生まれ持った才能というものが地につきすぎている。こんな惨めな俺に対して言ってくれるのが正直いって恥ずかしいし、申し訳ない。
やっぱり俺はダメな人間なのかもしれないな。
「「ユイ·····。」」
「うん·····。ありがとう·····。でも、俺は·····」
シアはため息をついたあと口を開ける。
「これだけユイが言っても無理か。大事な告白までしたって言うのにね。卑下してばかりの武蔵のこと私は正直いって羨ましいとしか思えないんだよね。色々大変なスキルはあるけど、ステータスが1.5倍になるし、収納魔法だってある。強い冒険者のスキルなどは公開されてることが少しあるけど、誰も持ってないし、ステータスが上がれば上がるほど化けるスキル。そんな無限の可能性を持ってるんだよ。私だったら絶対に自慢するね。勇者にだってなれるかもしれないスキルを持ってるんだから。」
「勇者·····」
「そうだよ。私たちはいくら頑張ったって入手できないスキル。もう決まってるんだよ。選ばれし人物のみ与えられる特別なスキルは。卑下するんじゃなくて誇りだと思うな。」
俺は特別な、選ばれし人間なのか·····。
でも、実際に女神からメールが届くし、色々と普通にない特典はある·····。
ステータスが弱いだけで隠れた最強なのかもしれない。
いや、ステータスが上がることに女神は恐れたのか? 強くなりすぎるがゆえにルーレットにしたとも言ってたから·····。
ということは、俺は·····。俺は!!
今まで落ち込んでいた武蔵だが、自分が特別な存在と気づかせてくれることによってどこからか自信が湧き出してくる。
「シア·····。ありがとう。」
「どういたしまして!! ほらほら、元気だして!! 表情は少し良くなったけど、まだまだ!! 行くの!!」
「うん!!」
「ユイごめん。色々迷惑かけちゃって。」
「そんなことない。うん。行こっか!!」
「うん!!」
涙を拭いたユイは笑顔で俺に伝えた。
俺たちは山の入口まで歩くがその間は何も話さなくただただ時間が過ぎていくだけだった。
俺がここまで落ちなければこんなことにもならなかった。それにユイまで泣かせるし、あまり話さないユイにあんなにも·····。
俺はもっと強くなる!! 絶対に!!
「あっ。ムイ達見えてきたよ!!」
「「ムイ!!」」
「!! おつかれー。ほんとよく頑張ったね!! もちろんこっちら無事だよー!! 出発て馬車で休んでて。私が対処するからー。あっ。武蔵荷台出してー。商人お願いしますー」
「ありがとうございます!! ほんとに助かりました!、」
俺は収納魔法から馬車の荷台を出すと商人が馬とくっつけてくれそのまま馬車に乗って山へと進んで行った。




