第一話④ さくばんはおたのしみでしたね
「あ~……う~……頭痛いぃ~……」
そして朝、またしても寝不足のお嬢様はベッドの上で瀕死のイモムシのようになっていた。
以下無限ループ。
いや、昨日と同じではない要素もあったか。
「お嬢様、お約束のとおり、僕もレイカさんもご朝食に同席させていただきますから。さあ、起きてください」
「……そうか……そうだった……うあー……」
のっそりと起き上がるお嬢様。
バツの悪そうな、昏い目で僕を一瞬見たかと思ったら、すぐに伏せて逸らした。
「……馬鹿な女だって、思ってるだろ」
「え?」
「夜ふかししたら起きれないのは当たり前なのに、毎日毎日性懲りもなく繰り返して……つらいのは自業自得だって、思うだろ」
お嬢様はそう言って、立てた膝を抱きしめて顔を埋めてしまった。
……つらいのは自業自得、か。
原因は乱れた生活習慣なので、そう言ってしまえばそうなのだが……乱れきって不調が常態化すると、自分の意思ではなかなか抜け出すのが厳しくなってくるものだ。
それを骨身に染みて知っている僕としては、呆れよりも同情が勝る。
苦しくて、このままではいけないと分かっていても、行動しようと考えただけで身体が重くなって、行動できなくて、できない自分がダメに思えてきて、さらに苦しくなって……
前世の晩年経験しまくった、胸を圧迫されるような感覚が蘇ってきた。
「――お嬢様」
「ぅおふぇっ!?」
気づけば、細い身体を強く抱きしめていた。
執事がお仕えする令嬢に抱きつくなど、当然ながら一発でクビ、どころかお縄になってもおかしくない蛮行だが、今はこの少女を包みこまずにはいられなかった。
「……夜ふかしを繰り返してしまうのは、お嬢様の意志が弱いからではありません」
「タ、タケル……?」
「身体が、深夜まで活動するように習慣づいてしまっているのです。
――貴女は体調が悪いんです。貴女が悪いわけではありません」
少し身体を離して、肩に手を置きながらお嬢様の潤んだ目を見つめる。
驚かせてしまったからだろう、頬が赤くなって口はあわあわと開かれていた。
「タケル……」
「お嬢様、お身体の調子を、良くしたいですか」
「え……、そ、それは、もちろん、できるなら……」
「でしたら」
息を吸い込んで、僕は心からの一言を告げた。
「お嬢様のお身体を、僕に預けてください」
必ずや、元気にしてみせる。
――ギィィィィ……
「ん?」
部屋の扉が開く音。
開くとそこにはレイカさん。ノックしていなかったと思うが、なぜだろう。
そしてなぜ、愕然とした表情なのだろう。
お嬢様に向き直る。
昨日授業中に起こされた時よりも赤くなっているのはなぜだろう。
「か、か、か……」
なぜかは分からないがひどく動揺されているご様子。
ここは僕が冷静に対応して、落ち着いていただいた方がいいだろう。
「はいお嬢様、なんでしょうか。なんでも仰ってください」
「………………う、うん」
お嬢様はしゅんとしおらしくなって俯いて、それから真っ赤なまま上目遣いになって、
「……わ、わかった。わたしの、か、からだ……す、すきに、して、いい……」
「お嬢様!」
好きにしていいとはヘンな表現だが、とにかく本人から体調改善に意欲的な言葉が出た。
これは嬉――なぜ景色が流れる? ぬ? なぜ僕はいつの間にか床を舐めている?
「この不埒者ォーーーーーー!」
レイカさんのこんな大きな声、初めて聞――ぶつっ、と意識が落ちました。あれ?




