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誰も虐めてくれないから君を利用した

作者: もんじゃ

開いてくださりありがとうございます。

つたない部分もございますが楽しんでいただけますと幸いです。

私はいじめられている。

そうだろう?そうしかないだろう?

なぁ、そうって言って

頼むから。

そしたら名前呼んであげるから。


私の市の市役所は自然がいっぱいあって公園のようになっていた。

都会でもなく田舎でもない立地もあり結構な広さがあった。

小さな滝があり、お兄ちゃんがそこでメガネ落としたこともあるらしい。

鯉がいて散歩しているお爺さんが餌をやっていた。

ランニングしている人も多くいた。

自動販売機で飲み物を買う職員さんも見慣れた風景だった。

私にとって自分の部屋と同等もしくはそれ以上の安心感がある場所だった。

なぜここまで安心する場所になったのかいつまでも忘れない。

私は市役所をいつまでも落ち着く場所として利用していた。


ある日母が運転する車にぼーっと外を眺めながら乗っていた。

どこに向かおうとしていたかも覚えていない

クリスマスツリーはもうとっくに下げられ兜の話が出てきた時期だっただろうか

もうすぐ中学生かーっとぼんやり思っていたそんな何気ない日だったと思う。

母が突然口を開いた

「中学生なんだから塾に行かなきゃだね」

「んー確かにねー」

母の機嫌を探りながら言った言葉にはなんの重みもなかった。

母はそんな返事にもなれたように口を動かす

「集団と個別どっちがいいのー」

おそらく母の中では答えが決まっている問いを投げかけられる。

「そうだなー、どちらかというと個別かなー」

母の気に触るような返答をしないように慎重に答える。

「えーでも個別だと勉強する意思とか気持ちがないと続かないよー」

私は2択を外したようだった。

「そっかーだったら集団がいいなー」

集団“で“いいかなーっというと何か機嫌が悪くなりそうな予感がしたので集団“が“いいなーっと言い直す。

こう言うのは慣れている。

何回2択を外してきたと思っているんだ

「じゃあ集団にしよっか お兄ちゃんたちが行ってたとこでいい?」

無事目的地に着いたようで上着を羽織りながら車を降り答える

「うん、いいよー」


この会話をなぜ忘れることがないのか私はすでに知っている。

何度もこの声が脳内に駆け巡るからである。


塾に通い始めて2年。

なんの不満もなくいつもの日常を送っていたような記憶がある。


最初は自転車で通っていた。

でももともと歩くのが好きで歩きに変えた。

約10分。都会とも田舎とも言えない飲み屋と公園が点々とある道を

イヤホンをしていつものプレイリストを再生しながら足を動かしていく。

別に勉強に特別着いていけなかったわけではない

そこまで優秀だったわけでもない

平均か平均のちょっと下くらいの順位をフラフラとしていたような点数だった。


ある日思う。「あー塾行きたくねー」

母の日のプレゼントを渡し終わりで梅雨っていつからだっけという言葉がちらほら聞こえてきていたような日だった

継続力はまあまあある方で小学生の時はいつも皆勤賞だった。

だからめんどくさいとかそういう理由ではなかった。

宿題も忘れたことはほぼなかった記憶がある。

確かに人間関係はうまく行っていなかった。

体調を大きく崩したのも大きな理由だった。


塾をサボっていた。

市役所の鯉を静かに眺めていた。

ジメジメとした風が滝の水を震わせていた。

いつものように月は儚く綺麗に存在していた。

塾の先生に体調が悪くてとLINEを打つ。

この頃には定型分ができていて

サボると言う行動にもなれ少しの原動力で実行できた。


行きたいけど行けない。

そんな気持ちが永遠と続くような気がした。


塾に行き、授業を受ける。

手が震えて何も内容は入ってこない。

精神的にも肉体的にも苦しくて苦しくて仕方なかった。


体調を崩して、緊張か何かわからなかったがトイレが近くなった。

授業中手を上げる勇気なんてなく、先生が隣にきた瞬間に

「先生、お手洗い行っていいですか?」って言ったり「先生、体調が悪くて」って言ったりして心を落ち着かせる。

毎時間トイレにいく私のことを塾のみんなはどう思っているのだろうか。

トイレから帰ってきて、何か話していた様子だった。

私が教室に入った瞬間に黙ったように感じた。今思えば私の思い過ごしだった気がする。

塾に行っても高確率で早退する日々だった。

帰り道に明日には新月であろう月を見ていた。


塾を行かなくなって何ヶ月経っただろうか。

市役所をマップがなくてもどこに何があるかどこにベンチ、自販機があるか

どこに木が生えているかも覚えてきていた頃だった。

月明かりしかない市役所の景色を思い出すことは容易にできた。

母に心配させたくなくて、塾に毎日行っているように見せかけていた。


梅雨が終わり夏期講習の案内の紙が家に届いた頃だった。

今日も塾には行かずベンチに座ってぼーっと月を見ていた。

月も市役所も落ち着いて落ち着いて仕方なかった。

昨日雨が降ったようで夏になり延びた草が濡れ私の靴も大きく濡れていた。

水を跳ねる音がしてまだ濡れた草むらを力強く進む足音が聞こえた。

そんな時に「あれ?何してんの?」と息の上がるっている声が聞こえた。

顔を上げると学校のクラスメイトが靴を濡らしランニングしていた。

「んー塾サボってんの」

そう少し呆れた笑いを浮かべながら答えた

「そうなんだ。じゃあ俺もちょっときゅーけいっ」

そう言いながら私の隣に座る。

彼は小学生の時に家の方向が近くで時どき一緒に帰っていた

いつも絶妙な距離感だったと思う。

彼はいじられキャラというやつでノリが良かったし普通に優しいやつだったから友達として普通に好きだった。

小学生の時は普通に話してたけど中学生になると普通のクラスメイトとして絶妙な距離感を保っていた。


そんな彼と2人で月を見ている。

鯉の泳ぐ音と滝の音、車が水たまりの上を走る音が淡々とながれている。

月を見ていると目の奥がじんと熱くなり頬が冷たくなっていた。

彼の服の裾がじんわり濡れているのが霞んでいたが見えた。

彼は何も言わずに優しい笑顔を見せた。

彼の優しさに笑顔で返そうとしたがうまく笑えなかった。

彼が何も言わなかったのが逆に辛かった。

彼も少し動揺していたのだろうか彼の気持ちと合わせるように月が雲と少しかぶっていて月の優しさが少し見えにくくなっていた。

「彼が立ち上がり炭酸飲める?」

と優しく聞いた。きっと優しく気を使ってくれていたんだろう。

「飲めるけど気にしなくていいよ」

そう普通を装って答えたつもりだったが鼻声なことを隠せるほど余裕はなかった。

「んー俺150円しか持ってねーから2本分買えないよ笑 ただ自分が買いたいだけだから気にすんな笑」

そう笑って言い、濡れた草むらを歩いて行った。

「一番近い自販機は向こうにあるよ」

私の今できる最大限の優しさだった。

「そうなの、サンキュー」


彼は私が市役所にやけ詳しいことにこの時から勘づき始めたのかもしれない。


「ん!のむだろ?」

アニメのツンデレ男子みたいなペットボトルの渡し方をされて少し笑みがこぼれた。

「飲む。」

私に力が入らないのがわかっているのかそれともたまたまかキャップを開けて渡してくれた。

彼の優しさと砂糖の甘さが心に染みていく。

「ありがと」

彼にペットボトルを返す。

最低限の会話だけがながれていく中、間接キスだなーっとぼんやり思いながら彼が飲むところを静かに眺める。

ああやっぱり彼は優しい。

そして少し都合がいい。


2人で中身のない話を淡々とした。

素晴らしく居心地が良かった。

家に帰って、ラップがかかっていた肉じゃがを無心で食べる。

この頃にはもう月は雲にかぶって見えなかった

なんの気持ちの変化もなくただお風呂にはいって、布団の中に潜った。

気づいたらアラームの音が聞こえてきた。

昨日の雨の匂いがまだ消えていないのがわかった。

リビングにゆっくりとおりながら仕事の用意をしているお母さんになんの躊躇いもなく話しかける。

「ごめん、体調悪くて今日休んでいい?ほんとごめん。」

そう淡々と伝える。気持ちなんて入ってなかったであろう。

自分の部屋に戻ってベランダでぼーっと空を見ていた。

昨日見ていた月はそこにはない。

でも昨日の月が鮮明に瞼の裏に浮かび上がった。


空がオレンジに染まっていた頃だった。

充電コードが刺さったままの電子機器から通知音聞こえてきた。

彼からだった。

表情を変えることなく文を読んでいく。

「体調大丈夫?塾サボる時は良かったら俺に連絡して」

端的ででもどこか優しさが滲み出ている彼の言葉は暖かくて暖かくて仕方なかった。

「ありがと」

この四文字で全てが伝わるだろうとそう直感で感じた。


朝起きるとエアコンをつける、暑くて暑くて仕方ない日が続いていた。

学校では夏休みの宿題が配られ始め、塾では夏期講習が始まるまでのカウントダウンが始まっていた

夏期講習は12時くらいから18時くらいまで塾の授業がある。

私にとって地獄でしかなかった。


学校から帰ってきて、「ご飯は帰ってきてから食べるよ」といつもの軽い笑顔を貼り付けて言う。

学校のカバンを布団に雑に置いて、塾のカバンを手に取る。

目にハイライトなんてものは入っていないふと鏡を見たときにそれに気づき乾いた笑いが聞こえた。

お母さんに「じゃあ塾に行ってきます」っと慣れた挨拶をして、

いつも開け慣れているはずなのにやけに重く感じるドアを思いっきり押す。

心配性すぎて早めに家を出てしまうこの性格にはとっくに慣れていた。

教室で待っている時間も嫌だからギリギリに着きたい

だから市役所で時間を潰してみたり散歩しているおじいちゃんの真似をしてみたりする。

現在6時51分 7時5分から授業が始まる。

さっきまで心臓が動いていないんじゃないかと心配になる程無の時間がながれていたはずだったのに仕事終わりに市役所から出てくる大人たちが振り向くのではないかと思うほどに心臓がバクバクと鼓動する。

スマホを見て気を紛らわす。手元に目線を合わせると手が震えていることに気づいた。

「体調が悪くて今日は休みます。」

先生にそんな連絡を入れた。

打ち慣れ過ぎて予測変換でこの文が出てくることにも呆れていた。

塾に行きたい、

そうどうせいけない自分が言っている

塾を辞めたい、

そう言う勇気なんてない自分が言っている

お母さんに塾をサボっていることがバレた時に咄嗟に出る言葉は助けてではなくごめんなさいなんだろうな。

塾で本当に私が虐められていたならそしたらそしたら辞めたいと助けてと胸はって言えるのにな

みんなきっと優しい人なんだろうな

学校でもし私が虐められていたならそれを理由に家にこもれるのにな

そんなデリカシーのないことを毎日のように考える日々。

そんなやつほんとにいじめてもらって構わないのに。


塾をサボるたびに彼に端的な連絡をする

「会いたい」

今考えるとあまりにも彼を信用し過ぎている言葉だった。

エナジードリンクを2人で飲み回す。

「エナドリ飲んだから寝れないね笑」

そんな会話をいつもしていた。

夜遅くまで電話するための口実だったことに2人ともとっくに気づいていた。


暗い夜道を二人でただ歩いていた。

「やばい雨降ってきた」

小雨だけど雨が降っていることがわかった。

「どっかで雨宿りしないと」

そう軽く返す。

「この靴は履きなれた靴?」

そう彼が聞いてきた。

「そうだけど」

なんでっと聞く暇もなく肩にタッチして

「追いかけっこ!」

と言って走り出してしまった。

もうお手上げだ、と心の中で完全に白旗が上がり、降伏状態になった。

思い出の詰まったこの街ごと好きになった。


今日の月もとてつもなく綺麗だった。

いつかふっと消えてしまいそうな儚さを今日も纏わせていた。

その儚さをいつも自分と重ね合わせてみていた。

でも月のように人を惹きつけることもみていたくなるオーラもない

自分に重ね合わされる月が可哀想かと軽い自虐を繰り返す。


気づいたら夏期講習が始まっていた。

朝、家を出て市役所で時間を潰す。暑いなーそう無意識につぶやいた。

いつもの癖で月を見るように空を見るがそこには太陽が存在しているだけで儚さも安心感もなく、なぜか虚しくなった。

「今日、塾休みます」

そんな連絡を淡々として、また塾に行けなかった自分を自虐しながら日記をつける。

お母さんには塾に行っていると偽装しなければならない。

そんな思いにもとっくに慣れていた。


毎日のように5、6時間時間を潰す。

公園でスマホをいじっては歩いて他の地域へ移動する。

中学生が1人で行く範囲なんてたかが知れているが少し羽を伸ばして歩いて3時間ほどの場所まで行くようになった。

この期間が私の行動範囲を増やした要因の一つだった。

暑くて暑くてたまらない日々だった。

塾では今高校受験の話がどんどん進んでいるのだろう。

別に不真面目すぎる性格でもなかったので、夏休みの宿題はそうそうに終わらせて

ランニングしてみたりしていた。


夏休みが終わると体育祭がある、一応運動部だし動くのは好きだった。

「クラスで3人ずつ体育祭でダンスをするんだけどそのふりを考えて欲しいんだ。この3人は夏休みに学校にきてもらいたい」

そう担任の先生が言うのを先生に目を合わせて聞く。目の焦点は合ってなかったと思う。

「やってみない?」そう先生に言われた時に「わかりました。やってみます」

そうノータイムで答えた理由はみんながやりたくなさそうだったからだ。

行かなかったら他の子に迷惑がかかることを察して一度も休むことはなかった


夏期講習の日。

今日は何時間も時間を潰すのは嫌でお母さんに言った

「今日、塾休む」

「なんで?」

「ちょっと体調悪くて」

「昨日夜更かししたからじゃない?」

「体調悪いって言ったらいつも夜更かしっていうよね」

「ん?何?事実じゃん。しかもいつもダンスは休まず行けるのに塾は行けないんだね。

塾はめんどくさいのかな?高いお金払ってるのにね」

あーあ今日は択一クイズを間違えたみたいだ。

気を抜いていた

「ごめん」

ちょっと本音を行ってみたがやっぱりダメだったか

そう反省をして部屋に戻る

昼になるとうどんが置かれていた。

私の周りの人は優しくそれがなぜか鬱陶しく感じる時もあった。

夏期講習はあっという間にすぎたように感じる努力をした。

夏休みが終わり、学校が始まる

体育祭があるから体育がある日だけしっかり学校に行く自分が先生の思惑どうりすぎるなっとふと感じた。


彼からの連絡は今日もくる。

「電話する?」

「お風呂入るからちょっと待ってね」

「オッケー、出たらいって」

そんな連絡も慣れたものだった。

「あのさ!、、、」

彼が突然話を切り出した。

告白されていいよという会話を気づいたらしていた。

今日の月は綺麗な満月だった。


「今日塾サボってる」

いつものLINEを送る。

「りょーかい。今から行くわ」

市役所も月も彼も落ち着いてたまらなかった。

そんな毎日をただ過ごしていた。


「M-1誰が優勝すると思うー?」

そんな言葉が聞こえた時に一年が終わることに絶望した。

「んー誰だろうなー」

そう冷静に返しながらこの一年ずっと足踏みし続けた自分に幻滅する。

「年末なんか予定あんのー?」

「大晦日の夜に映画館にいく。今年最後の推し活しに行くの。」

「そーなんだ、俺迎えに行くわ。夜道女の子1人は危ないじゃん」

そんな彼らしい言葉にもう慣れていた。

2人でカラオケに行って家でゲームして恋人らしいことは意外としていたのかも知れない。


なぁやっぱりダメだよなそう今日も月に語りかける

今日言うんだお母さんに塾を辞めるとできるかな?

できるよっと優しく微笑んだように感じたのは私のエゴだろうな

塾に行く頻度はどんどん減っている

彼に縋る頻度はどんどん増えていく

学校にも行っていない日々は感情がぐちゃぐちゃになるだけだった。


いつも部屋にこもっている娘がリビングにいる。

お母さんは少し不思議がっていた。

「あのさ!、、、塾辞めたいんだけど」

唐突に言って申し訳ないというそんな感情を持つ余裕はなかった。

「どうして?」

優しく聞いてくれたのが辛くてたまらなかった

「人間関係がうまく行ってなくて、、、それであの、あの、えっとちょっと虐められてて」

違う違う塾のみんなはきっと優しい人だよ

「それで学校も別室登校にしたくて、、、学校でもあのーさ」

きっときっとほんとに虐められていたならここまで変な感情で心が取り憑かれることもないだろう

学校でも塾でも虐められていたらここまで中途半端な感情にはならなかったんだろう

「わかった、よく頑張ったね」

そう優しく言ってくれた


雨が降っていた。

月は雨に隠れて見えなかった。

あんなに市役所で月に向かって泣いていたというのに

この日はなぜか泣けなかった私の代わりに泣いてくれているような気がした。


「お母さんに言った。塾も辞めることになった。学校も多分別室になると思う」

彼に端的に送る。感情なんて乗らないように送ったはずなのに彼には全て伝わっている気がした。


彼と月を眺めている。

「喉乾いたー」

「なんか買う?」

2人で自販機まで足を運ぶ

「俺もう一番近い自販機覚えたよ」

そんなことを言う彼になんて返せばいいかわからなくなっていた。

「エナドリ飲んだから寝れないね笑」

もう何回するんだという会話に温かみは少し減っていた。

今日の月は少し雲がかかっていた。


ずっと抱えていた問題が一気に軽くなった瞬間に

縋るものが一気に入らなくなった気がした。

彼の優しさが心に沁みなくなっていた

私から会いたいと言うことはもうなくなっていた

きっと私は彼を利用していたからだから心が軽くなると彼は必要なかったみたいだ

辛いことを話す道具になっていたようだった。

彼は優しかった。でも私の辛いが亡くなった瞬間に彼の声も温度もただの風のように過ぎ去った。私は恋してたのではなくただ依存していただけだった。

こんなにも私が最低な人間なんだと知って笑いしかでてこない


今日もずっと見守ってくれていた月に話しかけてみる。

もうバイバイかな?

今日の月は消え掛かっていた。

そして涙が出ていないふりをするのはもう得意になっていた。


その一週間後くらいだろうか

「会いたい」

その4文字を打つ。久しぶりこの文字を打ったようで予測変換で出てこなかった。

彼の嬉しそうな

「いいよ!いつにする?どこがいい?」

とそんな返信が来る

「今すぐ!市役所来れる?話があるんだ」

「ん?わかった」

そんな会話をして

市役所へ向かう。

いつもは落ち着くこの道も今日は少しよどんで見えた

「ごめん、お待たせ。話ってなに?」

「あのさ!...」


今日の月も儚く綺麗だった。

優しくとても優しく笑っていた。

そして少し悲しそうな顔をしたのを私は思い過ごしだと信じたかった。

この日は月が出ていなくて何にも縋るものなんてなかった。

泣いていないふりをするのには遅すぎたようだった。


彼が最後に言った。

「俺の名前呼んでくれなかったね。」

そうだよ。だってただの道具としか思ってなかったらしいから名前なんて呼べなかったから。

そんな思いを心に秘めながら。

「ごめん」

そう重くただ重く言葉をはっした。



こんなことをしていると中学生活は過ぎていった。

一瞬のようにも永遠に続くようにも感じられる日々が終わっていった。

市役所で思い出したくないが鮮明に浮かび上がってくる日々を苦笑する。

この街ごと好きにしてくれた彼に最大限の感謝を伝えることはなかった。



今日も月は儚く存在していた。

そんな月を私は今日も利用しているみたいだ。


読んで下さりありがとうございました。


私は実話しか書けないので今回もほぼ実話でございます。

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