背番号「8」
冬場は走る練習が多くなった。近くの神社へ出掛け、アップダウンの多い散歩道を走るのには閉口した。
3月には6年生の卒団式が行われた。公民館でみんなでカレーを食べた。新6年生は、3人しかいない。ということは、新5年生の虎之介がレギュラーになることを意味していた。
新キャプテンが梨田監督から発表され、新6年生のひとりが選ばれた。その後、新しい背番号が配られた。これまで虎之介は「13」だったが、新しい背番号はセンターを守る「8」だった。巨人軍の原選手と同じで、虎之介はうれしくてたまらなかった。
春休み、新チームどうしの交流戦が、隣町の幸小学校で行われた。幸本町スポーツ少年団といって、5年以上の歴史があった。チームには団旗という旗があり、少し色褪せているところが逆に強そうだった。
この試合、チームは完敗だったが、虎之介は最後の打席でランニングホームランを打った。「いち、に、さーん」のタイミング効果は絶大で、ライナーの打球はショートの頭上を越え、左中間を抜けていった。虎之介の遅い走りを、ベンチのみんなが「まわれ!まわれ!」と言って後押ししてくれた。
試合が終わり、両チームがホームベースを挟んであいさつした後、相手チームの前に行ってあいさつするため並んだ。すると幸本町の監督が虎之介に向かって 「いいホームランだったね。ナイスホームラン。」とわざわざ声を掛けてくれた。虎之介はうれしさとはずかしさで、顔が真っ赤になった。