バッティングは「いち、に、さーん」
梨田監督がやってきて、虎之介に話掛けてきた。
「虎之介、バットは傘を持つように楽に構えるんだ。」虎之介は右手で傘を持つイメージをした。
「足の膝を上下に上げ下げして、体全体の力を
抜くんだ。」虎之介は言われた通り、膝を上下に曲げ伸ばしして、体の力を抜いた。
「まず1でバットを構える。次に2でバットを
引く。」
「ボクシングで相手を一番強く殴ろうとしたら手を遠くに引くだろう。バットを引くとはそういうことだ。」
「バットを引くタイミングは、ピッチャーが振りかぶった後、投げようとした時だ。その時、左足をちょっと右に引いて、右足に体重を動かす。」梨田監督は虎之介の前で、虎之介の構えたバットを支えながら、バットを後に引き、体重移動の方法を教えてくれる。
「最後にピッチャーの投げた球を3で打つ。右手で来た球をつかむように、バットコントロールするんだ。いち、に、さーんで打つ。」
虎之介は何回もやってみた。いちで構える。にでバットを引きながら右足に体重移動。さんで打つ。
「バットは前に放り投げるように、前を大きく振るんだ。」
バッティングには理論があることを、虎之介は肌で感じた。