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課題は走塁
走り方がよくなった虎之介は、そのフォームを体に覚えさせるため、夏休みから毎日10キロのランニングをした。小学校の頃の虎之介が知れば、「信じられない。」と言うだろう。走り方の悩みが解決したことは、虎之介にとって革命に等しい。
走り方が悪く、自分では気づかないという人がいる。好感を持っていた俳優さんの走り方をドラマで見たら、へっぴり腰でがっかりしたことがある。野球部の小泉先生も同様に、虎之介の走り方を見てがっかりしていたことであろう。
虎之介は自分の走り方が悪いことを小学校時代から周囲の反応で知っており、コンプレックスを持ったまま中学3年生になってしまった。このコンプレックスは、虎之介の野球の成長には阻害でしかなかった。
阻害された成長とはもちろん「走塁」であった。野球は点を取るために、積極的な走塁は欠かせない。ところが虎之介は、ランナーに出ると「リード」すら怖かった。「スライディング」などもってのほかで、鏡君など少年野球の頃から出来ていたためうらやましく思ったものだ。
この課題は、高校野球へ持ち越さざるを得ない。