左翼に回り5番打者
3年生の夏の大会が終わると、2年生は秋の新人戦に向けて始動した。虎之介はセンターを諦め、レフトに回った。センターには俊足で運動神経抜群の如月君がいた。中小学校でもミニバスケットボールの選手だった。
小泉先生には足の遅さを嘆かれていた虎之介だが、県大会常連の入河中との練習試合、虎之介はサヨナラヒットを放った。少年野球から得意なタイミング打法は、ストレートには通用した。夜の練習で梨田監督は今は打てなくてもいいと言ったけど、中学野球でも成果は出せた。
最終回、虎之介の打球はレフト線をライナーで抜け、2塁ランナーが生還した。サヨナラヒットは少年野球でもなかったので、ベンチから飛び出てきたチームメイトに迎えられるのは嬉しかった。以来、足は遅くとも虎之介は5番打者でレフトが固定した。
三平君は安定のサードでレギュラーを掴んだが、鏡君はレギュラーになれなかった。キャッチャーには俊足巧打の前田君がいて、鏡君でも敵わなかった。小泉先生は代走で鏡君をよく使った。
新人戦は決勝で隣りの学校である山城中学に敗れ、県大会出場はならなかった。接戦だったが、中部中はトリプルプレーを被った。虎之介は野球における三重殺というものを初めて見た。