少年野球中星クラブ
ソフトボールから帰って来て、何気なしにポストを開けると、チラシが入っている。読んでみると、少年野球チームの団員募集とあった。新しく、少年野球チームが虎之介の住む中星地区に結成されるという。
「これは入らなきゃ。」虎之介は直感でそう思った。両親にチラシを見せ、入団の合意を得た。手にはまだ、先ほどソフトボールを打った感触が残っていた。
練習初日は次の日曜日からで、虎之介はワクワクしてきた。とにかく、またボールを打ちたくてたまらないのだ。
「誰か友達を誘おう。三平君がいいな。」
4年生のクラス編成で、同じクラスになったばかりの梨田三平君を誘おうと思った。話がみょうにあう子で、三平君も入るだろうと勝手に思った。
翌日学校に行って三平君に話をすると、案の定入ると言った。
日曜日、ソフトボールの時と同じグランドへ、三平君といっしょに自転車で出掛けた。田植えが終わったばかりの田園風景の中、砂利道をガタガタ進んで行った。
グランドに着くと、同じように自転車で来ている子らがいる。見知らぬ顔だなと思いながら、「チームに入るの?」と話掛けてみると、隣の西部小の子らだった。虎之介と三平君は中小だった。西部小の子らはうなづいた。同じ4年生だと言った。
総勢4年生から6年生まで合わせて、12、3名くらいいるだろうか。グランド横の空き地のような駐車場に集まっていると、大人の人が何人か近寄って来て話を始めた。
「虎ちゃん、あれ僕のお父さんだ。」
三平君が話掛けてきた。三平君が指さすその人は「監督の梨田一平です。」と自己紹介した。
「え、今まで知らなかったの?」
「うん。」
なんとも不思議な気がした。三平君のお父さんが中星クラブの監督なのに、三平君を中星クラブに入るのを誘ったのは虎之介なのである。