バットは剣道の竹刀を振り下ろすように
「おっとバットの握り方がまだだったな。」
梨田監督は虎之介が持っていた竹バットを取り上げた。
「まず、バットグリップ握った際、左手右手とも、人差し指は親指の頭に乗せる。人差し指には、両手とも力が入らないようにするんだ。ちょっと隙間が開くように。そう。」
虎之介も、バットを持たずに指を真似してみせた。
「理由はバットを引っ張る両手の小指の方に力を集中させるためだ。次はこのバットを握って。剣道の竹刀を振り下ろすようにしてごらん。」
虎之介は竹刀を持ったことはないがイメージはできた。
「バットを振り下ろす際、両肘を内側に絞るように。脇があまいと力が入らない。」
虎之介はやってみた。竹バットはけっこう重い。
「球を打つ時はそんなイメージだ。あと、筋力アップの練習として、バットを握った両手を前に伸ばし、バットを手首だけで前方に倒し、また元に戻す。それを30回繰り返す」
重い竹バットは、10回繰り返すのが精一杯だった。今後夜の練習に来た時は、それを合間にやるようにとのことだった。
2箱目のティーバッティングに入った。今度は途中から「早いの」を取り入れた。
「早いの」とは、打ったバット・体勢をすぐさま戻し、繰り返し打つ練習である。バットを戻す時、バットは立てた状態で戻す。両足は必然、ステップした状態の開きっぱなしになる。投げる梨田監督もすぐ次の球を握らねばならないから、けっこう忙しい。
虎之介は途中から体の重心がぶれてきてしまい、箱の球を打ち終えたときはふらふらであった。




