中部中野球部
昭和57年4月。虎之介は中学生になった。入学式には中部中学校のグランドのスタンドで、父兄と共に記念写真の撮影があった。黒い学生服を着、学生帽をかぶった虎之介は着物を着た母親とともに記念写真に納まった。スタンドは桜の木に覆われ、花はまだ少し残っていた。
校内で鏡君に会った。鏡君のお母さんも着物を着ていた。西部小の子と同じ学校になるんだと中小出身の虎之介は改めて思った。
1年生は7クラスあり、虎之介は1組だった。この1組から野球部には虎之介含め5人入ったが、中星クラブのメンバーとはいっしょにならなかった。
入学式の翌日から、放課後は野球部の部活動に参加した。しばらくは体験入部というというのがあるそうだが、虎之介は野球部以外頭になかった。1年生は白のアンダーシャツに白のストッキングと白ずくめで、見るからに1年生だとわかった。1年生は20人はいるだろう。1年生の練習は、始めはランニング中心だった。虎之介の一番嫌いなものが、中学校でも待っていた。
入部した1年生を見る限り、運動神経の良い1年生がそろっていた。虎之介は果たしてレギュラーになれるだろうかと思った。
走ることが苦手ということは、野球では大きなハンディということを虎之介はわかっていた。それでも野球部を選んだのは、バッティングの気持ち良さが好きだからだった。また、守備も走ることとは違う魅力があることを少年野球で知った。
ランニングは嫌でもその先にはいいことが待っているだろう。中星クラブではそうだった。そんな希望を漠然と抱いていた。




