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虎之介の骨折
夏が過ぎ、冬休みの前のある土曜日、書道教室から自宅へ帰るべく虎之介は自転車を走らせていた。坂道を下ってくると、突然右から猫が飛び出して来た。虎之介はとっさにブレーキをかけると、自転車から前方に放り出された。地面に落ちる瞬間、左手をついて顔から落ちるのを防いだが、左手に激痛が走った。
通りかかった女性が、そのまま虎之介を近くの外科へ連れて行ってくれた。レントゲン写真を見ると、左手前腕の太い方の骨が折れていた。すぐ、石膏を巻かれた。その日は痛みでなかなか寝付けなかった。
結果、冬休みの練習は、ランニング中心だった。中星クラブでは長野県へスキーツアーに出掛けた。いっしょに行ったものの、ストックの持てない虎之介はソリで遊んでいた。
そのスキーで、キャッチャーの鏡君が足の靭帯を怪我して入院することになった。しっかりものの鏡君は、時期キャプテンと5年生のみんなから目されているチームの要だ。
鏡君の怪我はけっこうな大怪我で、チームから長期離脱を余儀なくされるようだった。虎之介は左手の回復とともに、梨田監督からキャッチャーに抜擢された。