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カラフル  作者: 清瀧光春
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モノクロの視界

いつの間にか、私は死んだのだろうか。


気付いたら、知らない女の人が前にいた。

というより、私が女の人の後ろにいて。

幽霊が憑りついてるような感じに浮いていたのだ。


何も思い出せないのだけど、この女の人は知っている人なのかしら。

私が死んだのかどうか・・・も、

そもそも誰なのかも、頭の中の記憶を探しても何にもない。


浮いてるのでくるくる回ったりして色んな角度で見られるけど

どこを見ても灰色なのに驚いた。

(私が幽霊だとして)

幽霊って、視界がモノクロなのか。

幽霊になるのも、誰かに憑りつくのも初めてなので(多分)

どういうのが一般的なのか、分からないけど。

・・・幽霊に「一般的」という言葉が付けられるものかも分からないけど。


憑りついてる人の側から遠くへ行けないのは、想像通り。

ううん、想像よりも範囲が狭いかな。

この人の頭の後ろ辺りだけ。

そこで向きを変えたりさっきみたいにくるくる回ったりはできるけど、それだけ。


幽霊って・・・退屈なのね。


それとも私が幽霊として変なのかな?

そう言えば、普通(?)幽霊って

何か想い遺したことがあって・・・とか

その人に恨みがあって・・・とか

そう言うものじゃないのかな。



・・・とか。

何か思い出せるかもしれないと、

色々考えてみたけど・・・何にも出てこないので諦めた。


そして、移動もできないしすることもないので、

この女の人の観察をすることにした。



女の人は「フクヤマ カオリ」と呼ばれていた。

毎日、折り畳みの自転車で会社へ行って、事務のようなことをしている。

(お仕事の内容はさっぱりわからない)

帰りは遅くなることが多くて、事務?って大変なお仕事なんだな、と思った。

1LDKのマンションで一人暮らしをしていて・・・


『ミャー』


カオリさんはいつの間にかお仕事を終えて帰宅したみたいだ。

私はカオリさんの後ろにくっ付いているので、

よそ見をしていても、寝ていても、くっ付いたまま移動している。


『ミャー』

『ニャン』

『ヒカ、イオ、ただいま~』


あ、そうそう、一人じゃなかった。

カオリさんは猫を二匹飼っている。

茶トラの男の子がヒカリ、キジトラの女の子がイオリ。

・・・と言っても私にはどっちも灰色にしか見えないのだけど。

色柄は、カオリさんが会社の人にヒカとイオの写真を見せて話してるのを聞いた。


『・・・』


・・・おっと、ヒカと目が合った。

ヒカもイオも私のことが見えているようで、良く目が合う。

動物は鋭いって言うものね。

でも警戒とか威嚇されないのが不思議。

私は悪霊ではないってことなのかしらん。



カオリさんは、いつものように手洗いうがいを丁寧にしてから、

ヒカとイオにカリカリをあげ、トイレのお掃除をしてあげた。

ヒカとイオの後に、自分のご飯。

疲れてるらしく、冷蔵庫にある野菜を適当に入れたスープ。

・・・と、その前に、スマホをちらっと見て、小さくため息をつく。


カオリさんは、ある人からの連絡を待っている。

そして、時々、泣いている。


そんな時、ヒカとイオはカオリさんに寄り添ってじっとしている。

普段は二匹ともおしゃべりだし、イオは女の子だけど結構な暴れん坊なのに。

静かに、カオリさんを温めているみたいだ。


私はカオリさんの涙を見ても、可哀そうだなとは思うけど、胸が痛んだりはしない。

どんな出来事にも胸を痛めていたのは、いつだったろう・・・

いや、誰だった・・・?


何かを思い出しかけて、いや、思い出しかけそうな感じがして、

「ブツッ」と何かの接続が切れるような音がした。

今考えていたことが消えてしまった。

気にはなるけれども、どうしたって思い出せないのは身に染みているし、

思い出したところで、私が成仏できるのかも分からない。

前と違って、今の私は寝ようと思えばすぐに眠れるし、退屈な時は寝ていればいい。


あれ、「前」って・・・


「ブツッ」



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