表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~  作者: 江戸ノ地雷屋
第3章 赤頭巾の魔女と紅血の瞳
44/44

第10話 紅黒の魔獣対鉄機の復讐者

 ラティナがクレムリンの迷宮(ダンジョン)で奮闘していた頃、リゼルは・・・・・・。


「へっ・・・雑魚(ザコ)が・・・・・・」


 廃墟の町で多額の賞金がかかった彼を討ち取らんと襲いかかった狩人(ハンター)(たち)が全員、地に伏して倒れている所を得意げに鼻を高くしていた。

 多人数による人海戦術と帝国の科学が生んだ理導兵器の銃火器を用いられながらも見事、返り討ちにした。

 むしろ全員の連携が上手(うま)く取れなかったからだ。元々、単独行動をする狩人(ハンター)がほとんどな上に高額の賞金で欲に駆られて仲間割れもあった。そういう(こと)もあってリゼルの硬化能力による頑丈さと人外の力技によって戦略もへったくれも無く、あっという間に蹴散らしたのであった。


「クソっ!! 話が違うじゃねぇか!!」


「え!?」


 狩人(ハンター)一人(ひとり)が吐いた文句にリゼルは聞き捨てならずと反応した。それはつまり何者かが狩人(ハンター)(たち)を扇動してリゼルを襲わせたという(こと)だ。


「誰に聞いたんだ!?」


 リゼルはつかさず文句を吐いた狩人(ハンター)の首を(つか)んで聞いた。


「話せ!」


「ぐぇ~~~っ!! あ、熱っ!! ご、ごれじゃぁ話ぜねぇだろ~」


『オレが言ったんだよ!』


「!?」


 突如、廃墟の建物の上から飛び降りて来た黒い影。派手な音を立ててリゼルの目の前に着地したその影は長身のリゼルよりも高く、熊と思わせる程大きい巨漢であった。


「お前は!!」


『グハハハハ! 見~つけたぜー、リンカー!』


 見た目、(イノシシ)と思わせる鉄製マスクを装着していて、それに内臓されている電子拡声機が豪快な笑いと共に響いた。更にそのお男の体は全身が異常に筋肉が発達して、両腕が機械化されて兵器と化していた。


「・・・・・・誰だ」


『・・・ブ・・・ギャハハハハハハハ!!』


 この(イノシシ)マスクの巨漢は(わざ)とらしい(よう)爆笑するフリをした。


「って(なん)でそこで笑うんだよ⁉」


 ここで忘れた(こと)に驚いたり、怒ったりするのではなく笑われた(こと)にリゼルは不可解に思ったが、彼にとっては何故(なぜ)か、この名前は覚えていないが巨漢の発する声色が心の奥底から不快さが浮き出す(ぐらい)耳障りで腹が立った。


「オレだよ! ゴウ様だよ!!」


 この男の名はゴウと名乗ったこの男。かつて、リゼルが長き眠りから覚めてから数日後に襲いかかってきた機械化兵団の一人(ひとり)だ。彼らは記憶が失われる以前のリゼルごと本名リンカに強い怨みと憎しみを持っている(よう)だ。


「この前は、てめぇにモイをやっちまってからどこかへ逃げやがって!」


「⁉」


(逃げた⁉ 俺が? 何言ってんだ、こいつ?)


 リゼルは覚えていなかった。機械化兵団と戦っていた最中、ある出来事によりリゼルの理性が吹き飛び暴れ狂う状態になっていた。そしてゴウの仲間であるモイを倒した。それから暴れて死闘を繰り広げていた最中にアリス(たち)に連れ去られていた。なのでその(こと)の記憶も無かった。

 リゼルがそう考えていると—―ゴウがいきなり突進してきた。


「もう逃がさねぇからな、覚悟しやがれ!!」


 ゴウの凶器と化した鋼鉄の右腕がリゼルに向けて襲い掛かった。

 リゼルは咄嗟(とっさ)に硬化させた両腕を交差した。防御の態勢をとったのだ。

 自分の体は鉄の(よう)に硬くなれる。念じれば(さら)に硬度を高める(こと)が出来る。鉄だろうと巨大だろうと敵の(こぶし)なんて防げる。リゼルは自身持ってそう考えていた。だが・・・ゴウの腕が両腕に触れた瞬間—―。


「うぐっ!?」


 リゼルは地面を引きずりながら後ろへ後退させられる形に吹き飛んだ。


(!? ひ・・・響く!)


 傷は、負ってない。だけど硬化したリゼルの腕は殴られた際に発生した衝撃と振動によって内部に響き、(たま)らなかった。


「どうだ! オレ様のパンチは!!」


(何が、起きたんだ!?)


 リゼルは自分が何故(なぜ)吹き飛んだのか疑問に思った。


「おらぁっ!!」


 再びリゼルを殴り飛ばそうとゴウは突進しながら右腕を大きく振り上げた。すると振り上げたゴウの機械腕から後ろに向けて火が噴いた。そしてリゼルに向かって砲弾の(ごと)く、勢い付けて殴りかかってきた。

 リゼルは咄嗟(とっさ)に後ろへ跳躍(ジャンプ)した。

 降り降ろされた(パンチ)はリゼルがいた地面へ叩き付けられた。そこは噴射力と重量によって破壊力が増し、地表が吹き飛んでゴウの拳程の穴が()いた。


戦わ(やら)なければやられる!)


 そう判断したリゼルは黒鉄の爪を立てた右手で敵に向けて突き刺そうとした。

 ゴウは迫るリゼルの右手を(つか)んだ。そしてそのまま握り潰そうと力を込めた。

 そうはさせまいとリゼルは右手に念じた。熱くなるようにと。

 (つか)まれたリゼルの手は段々と熱が高まってきた。ゴウは(たま)らず放りる(よう)に放した。

 ゴウは次の攻撃手段として図体の背中から(かつ)いでいた物を取り出した。

 それはゴウの背丈(ほど)の大きさもある凶器、理導鋸(チェーンソー)だ。

 レバーを引くとクォーツを動力にした機関が作動し、鎖状に連なった刃の歯が回転した。どんな太い物でも斬り裂く恐怖の兵器がリゼルに向かって振り下ろされた。

 リゼルは最初、即座に左へ全体移動させて避けた。二度目の横斬りは後退、三度目は左上からの斬りをまた後退で避けたが、その時、左足の(かかと)が石につまずき、バランスが崩れた。

 転びそうになったリゼルに好機と見たゴウは理導鋸(チェーンソー)を真上に上げた。


「死ねぇぇぇぇぇ!!」


 理導鋸(チェーンソー)の刃がリゼルの体に振り下ろされた。硬化した右手の甲に。

 硬く、そして肥大化したリゼルの右腕は理導鋸(チェーンソー)でも木の(よう)()ぐに斬り裂く(こと)は出来なかった。(ただ)し、理導鋸(チェーンソー)の回転する連鎖の刃は止まらず、じわじわと右手を斬り削っていた。


「グハハハハ! このまま斬って、てめぇの(ツラ)ごとぶった斬ってやるぜ!」


「ぐっ・・・」


 今のリゼルの体勢は転んで顔の上に右腕を上げたままの仰向けとなっていた。このままリゼルは右手も顔も理導鋸(チェーンソー)の餌食になるのは時間の問題だろう。


「ギャハハハハ! 死ね! 死ねっ! 死ねぇー!!」


 大声で笑い狂うゴウ。マスクから血走った眼が見えた気がした。


「・・・理不尽だ・・・・・・」


 小さな声でリゼルは(つぶや)いた。理導鋸(チェーンソー)の駆動音とそれによって発せられている音、正気ではない(ため)かゴウはリゼルの声は聞こえてない(よう)だ。


(なん)(おれ)がこんな目に・・・こんな変な奴にやられる(よう)な合わなくちゃならないんだよ?)


 リゼルは心の中にあるものを湧き上がらせていた。


(あ~腹立たしい~ムカつく!)


 その湧き上がる感情の正体は怒りだ。


(殺してぇ・・・。殺す・・・。コロス! コロスコロスコロスコロスコロスコロスブッコロス!!)


 リゼルは、切れた。理性を。

 右手を斬り続けている理導鋸(チェーンソー)(つか)んだ。


「ガアアアアア!!」


「!?」


 リゼルが咆哮を上げた。その瞬間に理導鋸(チェーンソー)の刃の回転が止まった。そして(つか)んだ部分が蒸気を上げて真っ赤となり、真っ(ぷた)つに折った。


「んはっ!?」


 驚愕の声を上げるゴウ。

 理導鋸(チェーンソー)をへし折ったリゼルの顔は、右半身が黒鉄に覆われていた。

 リゼルの(あか)い眼が憎たらしき(ゴウ)を睨んでいた。


「う・・・うおぉぉぉ!!」


 恐怖を感じたゴウは右腕から火のクォーツを燃料にした噴射(ジェット)機関から火を吹き出し、リゼルに目掛けて殴りかかる。

 同時にリゼルも迎え撃った。ゴウの機械の拳よりも大きくなった右手で掌底による迎撃を加えた。そして相手の手を破壊した。


「ぐげっ!」


 ゴウの右手を破壊した後、リゼルは瞬時に左手を上げるとゴウの左腕を手刀で斧の如く叩き斬った。


「ぐぎゃぁ!!」


 それから今度はゴウの胸を右手で突き刺した。それから左手も突き刺し、機械化された胸を左右分ける(よう)に引き裂いた。


「ぎゃぁ!! や・・・()めろ!!」


 リゼルは、止めない。再び開かれたゴウの胸に突き刺し、機械の部品を力づくで引き抜いた。


「やべろ!!」


 それでもリゼルは止まらない。苦痛の声を上げるゴウの胸から容赦無く次々と部品や導線を引き抜いていった。


「やべでくでぇぇ!!」


 そして止めないリゼルはついに内臓にも手をかけ、引きちぎった


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 断末魔の声を上げた後、ゴウは狂化したリゼルによってバラバラにされた。

大変、長らくお待たせしました。無印版「聖天魔物語」の最新話です。

応援ポイントか感想もお願いします。

外伝の方も応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ