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聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~  作者: 江戸ノ地雷屋
第3章 赤頭巾の魔女と紅血の瞳
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第8話 “悪戯の児鬼”グレムリン

「あぁ~ーっもぅ!! 何よこれ~~~!?」


 大量のグレムリンに追いかけられて、泣き叫びながら逃げるレン。

 グレムリン(たち)の体を電流を発しており、触れると電撃を浴びせられ、最悪死ぬ場合がある。だから彼女(たち)は必死に逃げていた。その道中で道が曲がって壁にぶつからない(よう)に急いで曲がったり、分かれ道が()って、先頭に走るラティナの勘に任せてその道に進んだりとこの電気壁の迷路によって彼女(たち)の体力も徐々に奪われていった。

 最初、グレムリンは一体しかいなかったが逃げている内、気が付いたら増えていた。分かれ道で別のと合流したのか、はたまたは分裂したのか追いかけていたグレムリンが十数体に増えていた。


(なん)で増えてるのよ~!?」


「グレムリンは戦闘力が弱いディアボロスですが、分身を作り出す(こと)が出来ます!」


 レンの嘆きの呟きにラティナが説明する。


「ディアボロスって何よ!?」


「ディアボロスとは、死んだ人の魂が生きている人にあだなす者となった悪霊です!」


「大体、 “だんじょん”って何よここ!?」


「“迷宮(ダンジョン)”とは、ディアボロスが作り出した結界で魔力が強力な程、別の空間で迷宮を出す個体もいると聞いた(こと)があります!」


 実際、地面も土と小石の地面のままだからこの迷路もラティナ(たち)は別の空間に転移された訳ではなくグレムリンが“鉄の森”の内部に雷属性のエレメントで物質化させた壁を囲んで作ったものだ。。


「あんた、精霊教会の人でしょ!? 相手が悪霊ならさっさと退治しなさいよ!!」


 右手を後ろの大群グレムリンに指しながらレンは叫んだ。


「あの中には本物の気配を感じられません・・・だからあれは全員分身です!」


「分身でもニセモノでも()いから! りじゅつとかと言うやつで早くやっつけなさいよ!!」


「すいません・・・。私・・・戦闘は苦手で攻撃向けの理術(りじゅつ)は習得していません・・・・・・」


「だぁ~~~非戦闘かよ~!! きゃぁっ!?」


 走っている最中、レンは石に(つまず)き、バランスを崩して転んでしまった。


「レンちゃん!!」


 このままだとレンはグレムリン(たち)による電撃攻撃の餌食になってしまう。気付いたラティナは()ぐに足を止めて向きを反転した。


「私は・・・戦闘は得意ではありませんし、強くもありませんが—―」


 ラティナは右手から霊装(れいそう)、《アンペインローゼ》を前へ突き出した形で顕現させた。そして、軽やかな足踏み(ステップ)による素早い駆け足で転んだレンを通り越した。


(早っ、意外と!?)


「守るのは得意です!!」


 そのまま、《アンペインローゼ》の傘を開き、迫り来るグレムリン軍団の前に立ち止まって()く手を(はば)んだ。


「風の精霊よ。私は願います。迫り来る悪意の分身(たち)(はば)む風の壁を起こして下さい。《風ノ壁(ウィンド・ウォール)》!!」


 詠唱を唱えると《アンペインローゼ》の先から緑色の方陣が浮かび、発唱(はっしょう)を唱え終えると風が吹き、風圧の壁となってグレムリン(たち)を吹き飛ばし、進路を(はば)んだ。その後、ラティナはレンに振り向いた。


怪我(けが)ありませんか?」


「あ・・・脚が()り剥いちゃって・・・・・・」


 転倒と地面の小石によってレンの右脚は赤い血剥き出しの傷を負っていた。


「うっ・・・・・・、《治癒水(ヒール・ウォーター)》」


 ラティナは苦手な血を見て引いたが()ぐ心を落ち着かせて癒しの水を生み出す理術(りじゅつ)を発動させた。

 水色の方陣から生んだ癒しの水がレンの右脚の傷に浴びるとたちまち癒えて元に戻った。


「あっ・・・・・・」


「これでもう大丈夫です。分身(たち)の方もあの通り、私の理術(りじゅつ)の風でしばらく足止め出来ます。今の内に逃げましょう!」


 共に逃げる(よう)にラティナは転んだままのレンに手を差し伸べた。


「う・・・うん・・・・・・」


 ラティナの言葉に乗り、立ち上がったレンはフェンと共に奥へと走った。


  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ここで休憩しようよ・・・もう走れないよ~・・・・・・」


 分身グレムリンの大群から逃げ切ったラティナ(たち)は、部屋に辿り着いた。走り疲れたレンはここで休みたいと言い出した。


「そうですね・・・そうしましょう」


 レンの休憩願いを聞き入れたラティナは今いる部屋の中を見回した。最初の部屋よりも少し広めの部屋で何も置かれていない。


「あ・・・・・・」


 部屋の片隅に座って潜めていた数人の男が目に入った。


「き・・・君(たち)は・・・・・・?」


 熱に関する物の対応に適した作業服を着た男(たち)もラティナ(たち)に気付いた。


「いや・・・貴女(あなた)(たち)は精霊教会の理術(りじゅつ)使いか・・・?」


 作業服を着た男(たち)の中で年配の男が聞いた。


「あ、はい、そうです」


「いや、あたしは・・・・・・」


 レンは「あたしは違う」と言おうとしたが何故(なぜ)()めた。


「助けに来てくれたのか?」


(おれ)(たち)・・・助かったのか・・・?」


 ラティナは“鉄の森”に入る前に聞いた話を思い出した。


貴方(あなた)(たち)は、もしかして“鉄の森”で行方不明になった方々ですか?」


「はい、そうです。我々はこの鉄の森で鉄を採取していた鉱夫です。ニ日(ふつか)前、突然この危険な迷路に閉じ込められてあの小さな化け物に追い駆けっこさせられていました・・・」


「もうニ日(ふつか)間もあの化け物(たち)に追い回されているんだ・・・」


「この“休憩室”で休んでは持参していた食料でニ日(ふつか)間持ち越していたが・・・もう食料が尽きた・・・・・・」


「逃げても逃げても出口が見当たらねぇ・・・。あの野郎・・・出口を作ってねぇみてぇだ・・・」


「奴らや壁に触れて電流を(もろ)に受けちまった・・・。もう嫌だ! こんな所・・・・・・」


(ほか)の連中を見なかったか?」


「外では家族も心配してるだろうな・・・・・・」


「オレ(たち)がここから出るにはあ化け物を倒すしかない・・・!」


「助けに来たのは君(たち)二人(ふたり)だけか? (ほか)にいないのか・・・・・・?」


 この休憩室と呼ばれる部屋に留まっていた鉱夫(たち)から次々と質問責めにされるラティナ。


「お、落ち着いて下さい、(みな)さん・・・。まずはどなたが怪我(ケガ)している人いませんか・・・・・・?」


 ラティナは鉱夫(たち)をなだめ(よう)としていると突如、部屋に異変が起きた。壁に線上で光っていた色が黄色から(オレンジ)色に変わった。色の突然の変化に誰よりも早く気付いた年配者は青ざめた。


「い・・・如何(いかん)!! この“休憩室”は、一定時間、あの化け物共は入ってこない! だが・・・時間が経つとこの(よう)に部屋の色が橙色(オレンジ)に変わる・・・・・・」


「変わるとどうなるのですか?」


「この“休憩室”の寄せ付けない効果が無くなり、色が赤になった直後に化け物が現れるんだ!!」


「え~!? また、あの化け物がここにうじゃうじゃと来るの!?」


「に・・・逃げないと!!」


「でも、どっちから?」


 グレムリンに怯える鉱夫(たち)狼狽(うろた)え始めた。


「私に任せて下さい!」


「え⁉ 何か(なん)とかするものあるの? さっき、あいつらを吹き飛ばした風の術とか・・・・・・」


 レンが聞くとラティナの《アンペインローゼ》の先に白い光が集まり、光球となって耀いた。


聖光(せいこう)の精霊よ。私は願います。疲弊した人(たち)を守る(ため)、悪しき者(たち)を寄せ付けない聖なる結界をお作り下さい。《聖域結界(サンクチュアリ)》!!」


 唱えると白い光の球は方陣となり、鉱夫(たち)の足元へと(うつ)った。


「「「「「お~~~」」」」」


「さぁ、レンちゃんもこちらへ! この結界が張っている、しばらくの間だけはディアボロスを寄せ付けませんので」


 レンを地面に張った聖なる光の方陣に入れるとラティナは反対に向いた。


「お姉ちゃんは!?」


 レンが聞いた直後、部屋は赤色に変わった。すると、ラティナの前に見える壁の一部が電気を発して盛り上がった。


「ミ~ツケタ♪」


 盛り上がった壁の一部は切り離れ、子犬に見える幼児並みの低身長で長い耳らしきものと尖った一本の角を持った暗緑色の小鬼へと姿変えた。ディアボロスのグレムリンだ。


「どうやら本物が出て来たみたいです・・・・・・」


 ラティナの《心眼(しんがん)》が今、壁から出て来たグレムリンを分身ではなく本物だと見抜いた。


「《聖域結界(サンクチュアリ)》は移動出来ません! なので・・・・・・」


 《アンペインローゼ》を前へグレムリンに向けて構えた。


「私が(なん)とかします!!」

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