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聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~  作者: 江戸ノ地雷屋
第3章 赤頭巾の魔女と紅血の瞳
34/43

プロローグ

『フウゥゥゥゥゥゥッ‼』


 天井に大穴が()き、空の闇の中を照らす満月が見える真下に全身、(まだら)(あか)く光る巨大な獣が唸り声を上げた。


「ああっ! そんな・・・・・・‼」


「やっぱりあの石は呪われてるんだ‼」

 

「早く精霊教会に知らせて呪いを解かせなくては‼」


「お、おい! 何がどーなってやがんだ⁉ 映画が⁉ 映画の撮影か、これ⁉」


 ()いた天井の下で部外者を含めた数人が騒いでいた。

 (まだら)に光る巨大な獣は体を低くすると跳んで一瞬に視界から姿を消した。


「ミーちゃぁぁぁん‼」


 消えた巨獣に騒ぐ大人(たち)他所(よそ)に少女が呟いた。


「おじぃちゃんが・・・おこってんだわ・・・・・・」


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 オルタンシアで起きた騒動から一週間後。


「失礼します」


 監査から共和国領内のとある国に戻って来たアリアドネはドアを開けて入った。


「やぁ、来てくれたね、エンジェロスのアリアドネ殿」


 部屋の主である短い(とび)色の髪をして、服の下は鍛えられたたくましい肉体を持つ三十代(ぐらい)の男が椅子から立ち上がって一礼した。彼は少女の姿をしたアリアドネをエンジェロスだと知っている(よう)だ。


「お久しぶりです、グラバムさん」


「オルタンシアの騒動の収集、お疲れ様」


 グラバムという名の男は右手に親指を立てて右目を片目閉じ(ウィンク)した。


「いえ、私は大した(こと)はしていません。全てはランスロット卿のお陰ですので」


 オルタンシアから戻って来たアリアドネはラティナがとリゼルの(こと)(はぶ)いて精霊教会に報告した。


「所で今回は(なん)の御用でしょうか?」


「ああ、実は今回もアリアドネ殿に我々、審問会に協力して欲しい(こと)があってね」


 審問会とは精霊教会に所属している者が異端者(ある)いは裏切り者なのか問いただす(ため)の機関。グラバムという名の男も審問会の一員である。アリアドネも跡を可視化させる能力上、協力する時もある。(ちな)みに理術(りじゅつ)使いの上位にして敬うべき存在であるエンジェロスのアリアドネに対してため口なのは少女の姿をして正体を隠している彼女の要望だからである。


「協力とは一体何をして欲しいのですか?」


「それはある人物を調査して欲しいのだよ」


「誰ですか?」


(まさかラティナ様の(こと)、バレたのかしら・・・・・・?)


「まずはこれを見てくれ」


 机の引き出しから手錠を取り出した。


「これは?」


「これはアップ・グリーンパークでスルト教団が理術(りじゅつ)使い(たち)に使った特質な手錠だ」


 一見するとただの手錠では無さそうだと思った。何故(なぜ)ならば鉄とは違う何かの金属に表面が奇妙な文字の(よう)な紋様が刻まれていた。


「特質というのはもしや理術(りじゅつ)を・・・・・・」


「そう、この手錠にかけられた者は理術(りじゅつ)が使えなってしまうのだよ」


 (とび)色の髪の男は手錠を持ち上げ、奇妙な紋様に指をなぞる(よう)に差した。


「研究委員会が調べた所、この紋様は“ルーン”で、その効果は理力(りりょく)を拡散させるというもの。それによって触れた者の理術(りじゅつ)を封じてしまう。ただ、気になるのは、“ルーン”はただ刻むだけでは効果は発揮されない。特殊な物質が必要であって、この手錠はこの星では採れない月の金属で出来ている。そしてこの金属を作り出す(こと)が出来る理術(りじゅつ)使いを知っている」

 

 グラバムの説明にアリアドネは察した。


「・・・つまり、その人も精霊教会の裏切り者かもしれないという(こと)ですか?」


 真剣な眼差しのグラバムはアリアドネに向けて言い放つ。


「アリアドネ殿、我々、審問会はこれから“銀貨の聖女”ステラ様が担当するヴィンターへ審問しに行きます。貴女(あなた)にも手を貸して下さい」


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 黒い葉の木々が並び立つ森の奥に一軒の家が建っていて玄関から赤い頭巾を被った一人(ひとり)の少女が出た。

 バッグを持って出かけようとした所、頭上の空から彼女に近づくものに察知した。

 上を見上げるとそれはドローンと呼ばれる黒く小さな機械が浮遊していた。

 ドローンは下にぶら下がっている物、封筒を差し出す(よう)に落とした。

 頭巾の少女は地に落ちる前に掴み取るとドローンははるか上空へ飛び去った。


「・・・何これ・・・・・・?」


 疑問を呟いた後、少女は封筒を開けると中から手紙らしき文章が書かれた紙が入っていた。手紙を読み始めた。


「・・・・・・」


 しばらく黙って読んでいると両腕は震え出し、手紙をぐしゃぐしゃになる(ぐらい)強く握り潰した。そして掴まれた手紙が燃えた。


「何よ・・・・・・折角来たのが・・・・・・こんな(こと)を・・・・・・」


 手紙は黒い燃え(かす)となり、何故(なぜ)火傷(やけど)にならなかった掌から散っていった。その後、少女は上へ空へ睨んだ。


「カケル・・・・・・」


 これからこの国・・・ヴィンターを舞台にこの少女、魔女と呼ばれた者を始め、様々な人物、審問会や敵対する者(たち)等々(などなど)の複数の勢力による思惑が渦を巻き、たった(ひと)つの石を巡る狂宴(きょうえん)が始まろうとしていた。

またしてもお持たせしました。第3章の開幕です。

本来なら1月に投稿する予定だったが体調不良になったり、未だに本業の多忙だったりと投稿が今日までなってしまい申し訳ありませんでした。

さて、第3章の舞台は夢と娯楽の国を舞台にラティナとリゼルはまたしても大きな事件に巻き込まれてしまいます。

赤頭巾の魔女と“銀貨の聖女”ステラを始め、新たなる理術使いやエンジェロスを含めたキャラクター達も登場します。お楽しみに。

続きが気になる人は応援をお願いします。質問も受けつけます。

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