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聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~  作者: 江戸ノ地雷屋
第2章 呪炎の花嫁と優愛の聖女
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第17話 護る為の盾と刃無き剣

 その姿は見た(こと)があった。

 かつてリゼルと出会ったアップ・グリーンパークでラティナが撃たれて気絶する直前に見た、リゼルが変身(?)した姿だ。


「リ・・・リゼル様?」


 ラティナが半分変貌したリゼルに話しかけ(よう)とすると彼は凄い速さで動き出した。


『アアアアァアアアアアァッ!!』


 獣じみた咆哮を上げると地を蹴り、胸部のラースビーストに目掛けて加速しつつ、駆け出す。近付くと膝を曲げて止まった。それから一気に立ち上がったら高く跳んだ。

 宙に浮かぶ巨大なラースビーストの高さを越した瞬間、敵の長い蚯蚓(ミミズ)(よう)な首の口がリゼルに向ける。吐息(ブレス)で迫り来るリゼルを迎撃する気だ。だが、半異形化したリゼルの方が素早く、硬化して高熱を帯び、長い刀の(よう)な鉤爪状の右手で勢い良く敵の長い首に掌底を叩き付けた。


『グギャッ!!』


 掌底打ちを決められたラースビーストは圧倒的な大きさの差があるにも関わらず小さい方のリゼルの怪力によって首を掴まれたまま、押し出されて屋上から地上へ落ちた。


「リゼル様!! ジュリアさん!!」


 落ちていった二人(ふたり)に心配して叫ぶラティナ。


「ラティナ様。リゼルさんのあの姿は霊装の"装甲形態"ですか?」


 アリアが聞いてきた。


「え、こんな時に? え、え~と、は、はい、そうです。そうなのです。リゼルさ・・・んのあの姿は、あの(かた)の霊装の、"装甲形態"です・・・」


 いきなりの質問にリゼルの(こと)を正直に言う訳にはいかないラティナは慌てて答える。


「やはりそうですか」


「そ・・・それよりも早くリゼルさん(たち)を追いかけなくては! このままだとジュリアさんが・・・・・・」


 ラティナは地上に落ちたリゼルとラースビーストを追いかけ(よう)と《アンペインローゼ》の傘を開いて降りようとした。

 ラティナは悟った。今のリゼルは獣そのものだ。

 理性を失ってしまい、このままだとジュリアが勢いで殺されかねないとラティナは急ぐ。


「お待ち下さい」とアリアが止める。


「な・・・(なん)でしょうか?」


「こんな時に申し訳ありませんが、ラティナ様は怪物となったジュリアさんを無傷で元に戻したいという理想は分かりますが、その甘い願いはもう無理でしょう。傷付けて止める気にならなくてはなりません。むしろ・・・・・・」


 アリアは目をつむり、首を下に向いて横に振る。


「残念ながら・・・ジュリアさんを戻すのを諦めて一層の(こと)、殺す気で()った方が()いでしょう」


 無情な言葉を投げかけるアリア。


「え!! ど・・・どうしてですか⁉」


「これまでの様子を見て確信しました。あの人は町を焼き、破壊して、私(たち)を見てもためらいもなく殺そうとした。もうあの人は止まらない。最早(もはや)、人としての心は残っていない完全な怪物になってしまったのでしょう。よってジュリアさんを元通りに戻すのは不可能。ならばこのまま倒すべきだと私は思います」


「そ・・・そんな(こと)はありません! ジュリアさんは私が戻します!」


「どうやってですか?」


「・・・・・・」


 アリアの問いに対してラティナは何も答えられなかった。


「ラティナ様の幻奏術(げんそうじゅつ)でも止める(こと)は出来なかったでしょ。それに町をここまで破壊してしまった以上、ジュリアさんは怪物としてオルタンシアの人々に恐れられるか恨まれて断罪されるでしょう」


「そ・・・そんな・・・・・・」


「共和国領外の人(たち)は私(たち)(よう)に精霊教会の教えによる慈悲の心を持ちません。ならばこの場で倒しかないでしょう。もうそれしかあの人の魂を救うしかありません」


 アリアの表情は相変わらず無表情だが言葉は真剣で酷だけど彼女なりに怪物となったジュリアを救おうとする意志があった。


「で・・・でも・・・・・・」


「・・・・・・確かにアリア殿の言う通りですな」


 ラティナが悩んでいるとこれまで黙っていたランスロットが意を決意して口を開いた。


「ランスロットさん⁉」


「アリア殿の意見が正しいですぞ、ラティナ殿。これ以上被害を出さない(ため)にもここで倒すべきです。そして・・・その役目は私が引き受けましょう」


 ランスロットがそう言い放つと藍色のマントをはためかせて屋上から飛び降りた。


「あぁ、ランスロットさーん!!」


 止めようとするラティナだが、ランスロットは(すで)に地上へと降りていた。

 一方、リゼルとラースビーストとの戦いは激戦だった。

 リゼルはもの凄い素早さで駆け出す。

 ラースビーストの胴体の口から緑色の吐息(ブレス)を吐き出した。

 リゼルが上へ高く跳んで白色の吐息を避けると吐息は建物の瓦礫(がれき)に当たると、瓦礫(がれき)は粉々になって崩れていった。

 腐食性の吐息(ブレス)だ。

 跳んだリゼルはそのまま巨大化させた右手の爪でラースビーストの長い首を()っ切った。


『グギャッ!!』


 生物としての血は出てないが痛みを与えたらしく、苦痛の声を上げる。

 リゼルの攻撃はまだ終わらない。今度は今度は硬化と肥大化した右腕の拳で敵の切り口を殴る。


『グェッ‼』


 殴りつけられたラースビーストは殴られた痛みの余りに長い首をくねらせた。

 続いてリゼルは左手を伸ばして敵の、自分よりも一回り太く長い蚯蚓(ミミズ)(よう)な首を強く掴み、もう片方の手も掴んだ。このまま、力を入れて首を挟み斬るつもりだ。

 そうはさせまいとラースビーストの先程斬られた一本引いて二十三本の肋骨みたいで蜘蛛(クモ)の脚如き長い鉤爪状の腕が、首を掴んでいる最中のリゼルに突き刺した。


『ウガァッ! ウガァァァァ‼』


 身体は半分黒の甲殻に覆われていない片方でも全体が頑丈な(ため)、貫く(こと)は無いが、二十三本の鉤爪によって固定されてリゼルは身動きが取る(こと)は出来ず、ただ怒りの声を吠えるしか出来なかった。ラースビーストはこのままリゼルに吐息攻撃をかけようと首の先の口を向けた。


「リゼル殿、今お待ちを! このランスロットが勝手ながら加勢しますぞ‼」


 ランスロットが空を飛んで来た。そして大剣を今まさに動けないリゼルを攻撃しようとするラースビーストに向けると・・・・・・。


「《湖恍の水鏡(アロンダイト)》——《回転機関銃砲(ガトリング・キャノン)》!』


 ランスロットの大剣がなんと形状を変えて機械兵器、藍色の回転機関銃(ガトリング)砲となり、ラースビーストに向けて撃ち出された。


『グギャァァァ⁉』


 突然の事態にラースビーストは反応が遅れ、回転機関銃(ガトリング)砲の餌食となった。

 元が人間であるジュリアだったのに今のラースビーストは本当に生物なのか多数の銃弾を受けて肉片を撒き散らしても血や中身の内臓は出なかった。だが、長い首と胴体は穴だらけの(ハチ)の巣となっていった。

 そんな中、反撃しようとラースビーストの首の先がリゼルからランスロットへと変えて息の攻撃を吐こうとしていた。

 攻撃先が自分に変わったと察したランスロットは回転機関銃(ガトリング)砲の回転と発砲を止めて次の行動に移した。


「《湖恍の水鏡(アロンダイト)》——《投擲球(チェーン・ハンマー)》!」


 今度は回転機関銃(ガトリング)砲から藍色の鎖付き金属球へと変わり、振り回してから投げた。金属球はラースビーストの首の先の口にはまり込み、攻撃を止めた。

 “湖の騎士”ランスロット。彼のまつわる伝記によれば剣以外、ありとあらゆる武器を自在に操り、幾多の人の眼を(あざむ)いてきた変装の達人でもある天才であった。これら、(ふた)つの能力は霊装(れいそう)でも大きく影響した。エンジェロスに転生した後のランスロットの武器、《アロンダイト》は固体から液体に、そして一度見たもの、記憶に刻んだ物の形に変えられる能力を得られ、自身も愛剣と一体の身となった。

 そもそも、《アロンダイト》は元々、無銘の剣だった。名前は湖の国エーテの湖の底で採れる、水の特性が含まれた特殊金属の名から後に呼ばれる(よう)になったという。

 敵が口に入れられた金属球でもがき苦しんでいる隙を突いてリゼルは押さえ付けられた二十三本の脚を暴れて振り払い、自由の身となった。その際、二十三本の脚の内、三本を斬り、一本をへし折った。

 ラースビーストが斬られたり、折られたりした脚の痛みで動揺した。その隙にリゼルとランスロットが更なる攻撃を仕掛けようと迫る。だが、ラースビーストに怒りの炎が()き、残った脚で手当たり次第に突き刺したり、振り回したりして暴れ回った。

 そんな戦いの様子をラティナは屋上からただ、見ているだけだった。


「ラティナ様。こうして何もせずに見ているだけではジュリアさんを救う気が無いのと一緒ですよ」


 後ろからアリアが厳しくも的確な言葉を言い放った。


「そ・・・そうですが・・・・・・。私は・・・私は・・・・・・」


 倒す決断が出来ず(よど)むしか出来ないラティナ。


我儘(わがまま)は許されない状況ですよ」


我儘(わがまま)・・・・・・」


 我儘(わがまま)という言葉にラティナは十年程前の昔、故郷のプランタンでとある人物との会話をふと思い出した。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ラティナちゃんは、時には我儘(わがまま)を言った方が()いですよ」


 プランタンの大聖堂の名所である様々な花が咲き誇る中庭で真珠色の髪をした美しい女性が優雅に紅茶を飲みながらラティナに向けて言い放った。

 突然の言葉に同じく紅茶を飲んでいた当時のラティナは首を(かし)げて困った。


「どうしてですか? 我儘(わがまま)は人を困らせるものですよ」


 女性は苦笑しながら答えた。優雅で上品な淑女の雰囲気を漂わせていたが無邪気な子供の(よう)にも感じられた。


「確かに我儘(わがまま)を過ぎると人を困らせて怒らせてしまうものですね。(わたくし)も昔、我儘(わがまま)で贅沢を尽くし過ぎたから国の人々を怒らせてしまいました。でも・・・・・・」


 大きめの(イチゴ)を乗せたケーキをフォークで一口分切り出し、それを刺して口の中まで運んで食べた。


「“我儘(わがまま)”は時と場合によって必ずしも悪いものではなく、()い結果となる場合があります。ラティナちゃんはとっても優しい()だけど、もしも外の世界へ出たいと思った時、(ある)いは誰も傷付けず、(みんな)死なせたくないという願いを貫きたいの本気であれば、本音を(さら)け出して我儘(わがまま)を言ってみなさい。そして自分で出来る(こと)なら実際に行動して示してみなさい。この(ママ)が言った(こと)を覚えておいてね」


 真珠色の髪の女性、ラティナの母は優しく微笑んだ。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ラースビーストは本気を出した。

 見ればランスロットに撃たれて(ハチ)の巣にされた胸部の怪物の体がいつの間にか元通りになっていた。

 口の中に入れられた《アロンダイト》の金属球を嚙み砕き、残った肋骨の脚十九本で(ふたつ)の乳房に(つか)みと、乳房の付いた胸がなんと扉が開く(よう)に左右開いた。

 開いた胸の中は肺らしき形の臓器が現れ、それが紅黒(あかぐろ)く光ると高熱の熱線が放たれた。

 肺と思われる臓器に溜まっていた火のエレメントを一気に放出され膨大な熱線となり、ランスロットとリゼルに向かって行った。

 本能的に危機を察したリゼルとランスロットは即座にそれぞれの横へ跳んで熱線を避けた。

 当たった建物や瓦礫(がれき)は高熱によって真っ赤になってドロドロに溶けた。

 目の前に見えた物全てを溶かし尽くし、熱線放射を終えた頃、ラティナが降り立った。


「ジュリアさん、私が貴女(あなた)を戻します」


 ラティナは真剣な眼差しで怪物となったジュリアを見つめ、《アンペインローゼ》を構えた。

 自分を害しようとする新たな敵と判断したラースビーストはラティナを倒そうと腹の口を大きく呼吸して吐息(ブレス)を吐く準備をした。

 その際、ラティナは《アンペインローゼ》を構えたまま、攻撃準備中のラースビーストに向かって走った。

 先制はラースビーストの方が早く、長い首の口から空気の吐息弾を吐いた。


「《ペタルシールド》!」


 ラティナは《アンペインローゼ》の傘布の一部一枚を手に触れず、理力による操作で切り外して風に吹かれて宙に浮かぶ花弁の(よう)に動かした。それを彼女の前に立ち塞がる形で止まり、上下左右大きく伸ばして盾となって吐息弾を防いだ。

 盾となった《アンペインローゼ》の傘布は吐息弾の破壊力によって破けて散ったがラティナの身代わりとして攻撃から守る(こと)が出来た。

 攻撃を防がれたラースビーストは今度、腐食性の息、猛毒の息、竜巻の息、蒸気の息、火炎の息へと次々に吐き出した。


「《ペタルシールド・ページス・サンク》‼」


 その攻撃に合わせてラティナは《アンペインローゼ》の傘布を五枚分離させて操作して前方を直列に(つら)ねてラースビーストの吐息の連続放射を全て防いだ。

 攻撃を防ぎ切った後、ラティナは残った二枚の《アンペインローゼ》の傘布を背中に取り付けて光の翼に変えた。飛んでラースビーストに近づこうとする気だ。

 ラースビーストはラティナを近づけさせないと首の先をラティナに狙い付けて次の吐息(ブレス)を吐こうとしていた。

今のラティナの状態では《アンペインローゼ》で防ぐ(こと)は出来ない。

 すると下から振り子(ペンデュラム)が付いた糸が伸びて来て移動した跡から光の(つる)となり、ラースビーストに絡み付いて動きを止めた。

 アリアの《スレッドオブトレイサー》による援護だ。

 その隙にラティナは傘布を全て外し、杖剣のみとなった《アンペインローゼ》を構えて、花弁状の光翼を羽ばたかせて飛んだ。


(そう、甘えていて誰も救えない・・・。これ以上の犠牲者を出さない(ため)にも私がやらなくては! 私には《アンペインローゼ》がある。この能力(ちから)を持つ私ならジュリアさんを殺さずに救える(こと)が出来ます)


 この騒動が終えた後の(こと)は後で考える(こと)にしてラティナは自身の能力を信じてジュリアを少々傷付けてしまっても生かしたまま、救おうとする自分の我儘(わがまま)を貫こうと決意に動き出した。

 ラティナの霊装(れいそう)、《アンペインローゼ》は彼女の近くに居る者の心の怒り、攻撃したい欲求、悪意を無意識に発しているオーラによって(やわ)らげる自然発動型の固有理術(こゆうりじゅつ)、《痛み無き薔薇(アンペイン・ローゼ)》を武器として顕現させ、触れたものを物理的威力にも含めて和らげる力が増大された物。この能力さえあれば先程、攻撃を防いだ盾の役割だけではなく、怒りによってラースビーストとなったジュリアを戻す(こと)が出来るかもしれない。ただし・・・・・・。


(だけど、私は人を直接攻撃する(こと)は出来ない・・・・・・)


 その通り、性格上、かなりお人好しであるラティナはどんな人であろうとも、いや例え自分を襲い掛かる恐ろしい怪物だろうか攻撃する(こと)が出来ない。傷付ける刃が無い《アンペインローゼ》でも彼女は相手に向けて突き刺せない、つい、相手に当たる直前で力を抜いたり、ギリギリ体を(かす)めたりするしかなかった。


(この剣の先が無ければ・・・無いと思えば、無いと思えば!)


 光の(つる)に絡まれて動きを封じられたラースビーストだが、悪足()きに力を振り絞って肋骨の脚だけを動かし、胸をまた開いた。

 そして開いた胸から再び熱線が向かってくるラティナに目掛けて放射された。


「鏡の精霊よ、私は願う。光を反射し、物の像を写し取る貴方(あなた)の鏡の力を持ってあの(かた)に害さんとする光を反射し、悪しき者に返す鏡を生み出して下され。《反射鏡(リフレクト・ミラー)》‼」


 刹那に詠唱を唱え終えたランスロットが願唱理術(がんしょうりじゅつ)を発動させ、飛んでいるラティナの前に等身大の円形鏡が出現した。

 出現した鏡によって熱線は吸収された。そして、瞬時に吸収された熱線をラースビーストに返した。


『ギャアァァァ!!』


 反射された熱線によってラースビーストの体は焼かれた。

 このランスロットが発動させた敵の攻撃をはね返した術は、現世界でも扱える理術(りじゅつ)使いが滅多にいない程、希少とされる三属性のエレメント、火と水と土を混合させた三種混合属性、“鏡”の理術(りじゅつ)だ。

 ランスロットの霊装(れいそう)の原料で名にも使われた鉱石【アロンダイト】も鏡の性質を持っていて三つのエレメントの混合によって生まれた奇跡の鉱石と言われている。

 ラティナがラースビーストに近づく。

 自らの熱線で焼かれても(なお)、ラースビーストは迎撃を()めず、ラティナを噛み殺そうと環形動物型の長い首を伸ばした。

 そんな時、冷静さを欠き、周りを見ていなかったのかもう一人(ひとり)の存在に気付いていなかった。

 半分異形化したままのリゼルがラースビーストに目掛けて跳び出した。

 まだ自我が戻っていないが一部の理性によってラティナを守る(ため)なのか、そうではなく単に相手をぶちのめす(ため)だけなのか真意はさて置き、リゼルは対象物に目掛けて硬化した右手を伸ばした、否、右手がなんと巨大化して巨体なラースビーストをがっちりと(つか)んだ。

 同時にラティナの《アンペインローゼ》が、刀身が消えた。

 いや、《アンペインローゼ》の刀身自体は消えたのではない。ラティナの強い思いが理力あるいはオーラを見える(こと)が出来る者ににしか見えない、理力と聖のエレメントで構成させた薄紅(ピンク)色のオーラの刀身に変化させたのだ。この状態ならば手加減する(こと)(かす)めようともしない、本気で全力に突き刺す(こと)が出来る。そして、理術能力(りじゅつのうりょく)の《心眼》に通じてラティナは悪意の源であるある場所に狙いを定めた。


「《アロンジェローゼ》‼」


 《アンペインローゼ》の不可視のオーラの刀身が光線の(ごと)く放出され、リゼルの巨大な右手に(つか)まれたラースビーストの鎖骨に突き刺した。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ラティナは暗い赤色の(もや)に囲まれた空間の中にた。


「・・・ここは・・・ジュリアさんの精神世界?」


 何故(なぜ)、ラティナがジュリアの精神世界に入ったと思ったのか。それは自分の霊装(れいそう)で攻撃を決めた記憶から察したのだ。

 《アンペインローゼ》は刀身を変化させたと同時に突き刺した相手の心の中に同調して入り込むという新たな能力も得たのだ。

 よって、この《アンペインローゼ》の新たな力によってラティナの精神はジュリアの心の中である精神世界に入る(こと)が出来たのだ。

 そこでラティナは暗い赤色のオーラを(まと)い、うずくまっているジュリアの本体を見つけた。


「ジュリアさん、こんな所に。さぁ、ここから出ましょう」


 ジュリアの右腕を(つか)んで彼女をラースビーストの体から出させようと(うなが)した。だが・・・・・・。


「嫌よ」


 ジュリアは断った。


「わたしは、あいつを・・・・・・ポギーを許さない・・・! そいつを今すぐここへ呼んでくれなきゃ・・・・・・」


 その時、憎しみで心を閉ざしたジュリアは現実のラースビーストの目を通してある存在を気付いた。

 ポギーがラースビーストの目の前に駆け付けたのだ。

お待たせしました。

この6月から7月も本職の仕事の多忙と実家の諸事情によって更新が今日までに遅れました。

また、もう一つお詫びを言う事にこの話でボスとの決着をつける予定でしたが、次話へと後回しする事になってしまいました。

次回こそは第2章の決着をつける予定です。

続きが気になる人は応援をお願いします。質問も受けつけます。

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