第14話 さらけ出した本性と怒りの異変
過去の怨念の集合体であったディアボロスのギガボルトレギオンを浄化させたラティナ達一行は地下墓所を抜け、結婚式会場である教会内部へと辿り着いた。
そして堂々と知事が招待した結婚式の参加者達が注目する祭壇の右側から現れてた。太陽の仮面と紺色のマント、太陽の神官の衣装を着て。
共にしてたリゼル達はラティナの後ろに立って様子を見ていた。因みにラティナ達が着いた時、地下墓所の出入口である地下への階段付近に見張りをしていた二人の黒服の警備兵とばったり出くわしたが、ランスロットが素早く華麗に二人共まとめて手刀で首筋を当てて気絶させた。
「太陽の神官だ!」
「神官はこの結婚に反対かしら?」
参加者達が太陽の神官の登場により騒めく中、知事のオーロックが観客席から立ち上がった。
「これはこれはラティナ様、いや太陽の神官様。二人の結婚の祝福しに来て下さったのですか?」
「違います。私はこの結婚を中止して考え直して貰おうと来ました」
「なんだと⁉」
行き成りの結婚式の中止の求めを言われて花婿のプルドは激昂した。が、近づいたオーロックによって止められた。
「何故ですか?」
「無理やりの結婚は良くないと思います」
「無理やりとは・・・ジュリアが望んだ事ですぞ」
「でもジュリアさんには本当の想い人が・・・・・・」
「それにこの婚礼によりライヒトゥーム・カンパニーの財力と科学力によってオルタンシアは進展され、更にはあの“グラン・オー・ミュール”を超えて、先祖達の故郷であり、悲願でもある“楽園”の地へと行く事も出来るでしょう」
「楽園の地・・・・・・? それって共和国領の事ですか」
「はい、かつて私達の先祖が住んでいた地をそう呼んでいました。我々オルタンシアの民達はそこに行かなくてはなりません。それが先祖代々受け継がれてきた望みです。そうでなければ・・・・・・」
オーロックは話しながら近づいていき、パトロや観客達が聞こえない様にラティナの耳元に怯える声で囁いた。
「私は先祖達に殺されてしまいます・・・・・・」
精霊協会所属の理術にしか意味が分からない言葉の意味を察したラティナは小声で返してオーロックに聞いた。
「あの・・・その方々は雷を落としますか?」
「えっ・・・・・・? え、えぇっ・・・その通りですが、まさか・・・・・・」
「はい、カタコンベを通ってきた時に襲われました。そして浄化させて"遥かなる天界"へ還しました」
その言葉を聞いたオーロックは驚いた。
「そ・・・それは本当ですが?」
「はい、本当です」
「そ、そうですが・・・・・・。良かった・・・・・・」
ラティナの嘘偽りの無い言葉を信じてオーロックは明らかに喜びの表情を表していた。雷の力で脅し、長年を国の裏側を支配してきた怨霊達がこの世から消えて、自分は解放されたと知り、周りに気づかれない様、冷静さを保って内心だけ大いに喜んだ。見ていた観客達は何の話をしているかと気になっていた。
「ご先祖様に言われたのであればもう大丈夫です。ですから結婚式を中止に・・・・・・」
「それはできません」
あっさりと断られた。
「結婚式は中止にしません」
「な・・・何故ですか?」
「何故とは・・・、言ったでしょ? 先祖代々受け継がれてきた望みだと。私の代で全て実現させるつもりですよ」
「・・・・・・こいつなんか印象変わってないか?」
リゼルの言う通り、最初に会った時、紳士の印象から変わり、オーロックの表情が邪悪な笑みを浮かばせた。そして今度は観客達にも聞こえる様、大きな声で語り続けた。
「我々、オルタンシアの民は先祖が犯した違反により、“楽園”の地から追放され、この雨が降り続ける地に住まわされてしまった・・・・・・。帝国に占領され、機械技術を提供してくれるまでの我々の生活は苦しい生活を送っていた。そう・・・・・雨により沼地が多く、水分が豊富すぎる余りに作物が育ちにくい、病気にもなりやすい! まさに生まれなら、まるで監獄の中にいる様な生活を送っていた!!」
話続けているオーロックの口が観客達にも聞かせている演説かの様の上で彼の口調に怒気が含まれているとラティナは感じた。実際の彼女の《心眼》で怒りと妬みの赤黒い血の色のオーラが見えた。
「ラティナ様・・・・・・、私はね・・・幼い頃には理術使いに憧れていましたよ・・・・・・。しかし、両親にその事を聞かせると思いっ切り、怒られた。そう・・・我々がこんな苦しい生活を送っているのは全て“楽園”で幸せそうに住んでいる理術使い達の所為だと何度も耳が痛くなる位に教えられた・・・・・・!!」
そして両手を広げ、観客|達に向けて大きく声を上げた。
「この結婚にりオルタンシアは同じく新たなる領土の獲得を望むカンパニーからの“科学力"と帝国の“軍事力”が得られ、危険区域を超え、正常なる天候の空と豊作となる大地の“楽園”で踏ん反り返るお前達、理術使い共を追い出し、奪い返す事が我等、先祖代々受け継がれたオルタンシアの民の悲願!! 邪魔をさせる訳にはいかんのだ!!」
知事の突然の豹変にラティナや後ろのリゼル、観客達は驚いた。
その待っていた瞬間に狙って来たかの様にプルドの父にしてライヒトゥーム・カンパニー・オルタンシア支部社長、パトロが観客席から立ち上がり、高らかに宣言した。
「そう、我が社、ライヒトゥーム・カンパニーも貴方方の最高に快適な生活を提供する為に全力で尽くしましょうぞ!! 今回の結婚こそが今後、オルタンシアとカンパニーとの良好な関係を続けたいという両者の一致からの仲によりお互いの大事な子を結婚させるという実にめでたい理由ではありませんか?」
「「「「・・・・・・」」」」
沈黙する観客達。
「雨の無い最高に快適な生活を欲しくないか!?」
プルドも父に続いて黙る観客達に発破をかける。
「ほ・・・欲しい!!」
「もっと快適な生活を送りたい!!」
「もう雨の無い生活は嫌だ!!」
「結婚式の邪魔すんなっ!!」
発破をかけられた観客達は口々に言い出した。
「そうだろう、そうだろう! さぁ、もういいだろう。結婚式を今すぐ始めようじゃありませんか」
「うむ、その通りだなプルド君。まずは先に邪魔者をご退場をして貰おう」
オーロックがニ度両手で軽く叩くと数人の警備兵が駆け付けてラティナ達を取り囲んだ。その手には全員、帝国の技術兵器である理導銃を持っていてラティナ達に向けていた。
「ふわわわぁ~」
「ふっふっふっ・・・・・・そいつらを縛り上げて地下室へ閉じ込めろ! 妙な動きをしたら撃ち殺しても構わん! 何しろ人間ではなく化け物達だからな」
その言葉を聞いたラティナは、確かに半分人間とは違うが化け物扱いされてショックを受けた。
観客達も太陽の神官を撃ち殺す事に対して戸惑ったが、自分達には持っていないものを持ち、オルタンシアに住まわせた憎らしく、恐れる理術使いならば一人も反対する人はいなかった。
「その後は結婚式の再開だ」
観客達が賛同の声と拍手が鳴り響く。
「ちっ!! こうなったら・・・やるしかないな・・・・・・」
リゼルは暴れる気でいつでも両腕を硬化する為に構えた。
「リ、リゼル様、駄目ですよ!」
ラティナがリゼルを止める。
「俺は頑丈だ」
自身の体を硬化出来るリゼルにとって銃の弾なんて効かないと自負していた。
「で、でも貴方が無事でも私達は無事になりませんよ」
「自分で何とかしろ」
「そんな無茶な」
「仕方がありませんな・・・。衛兵達はリゼル殿に任せて私はラティナ殿とアリア殿を守りに徹しましょう」
「そうですね、このままだと私達、皆捕まってしまいますのでランスロット氏の言う通りにしましょう」
「ランスロットさん? アリアちゃん?」
「このままだとジュリアさんがこの様な政略結婚をされてしまいますし、私達も最早良くない状態です。ここは抗いましょう」
アリアは大人しく捕まるよりも抗って戦う事をランスロットと共に勧めた。
「で・・・でも・・・・・・」
ラティナとして手荒な事、誰一人怪我して欲しくないと望んでいた。
「・・・・・・下らないわね」
緊迫と楽観がそれぞれに漂う空気の中、冷ややかな一言で全員の雰囲気が一つとなった。
言ったのは花嫁のジュリアだった。
「ジュ・・・ジュリア?」
「私としては楽園だと言う空想物語みたいな場所なんて興味ないわ」
「何を言う! 先祖達によれば楽園は空想ではなく実在して、雨も年中に降らず、魚に実や作物が豊富で病や怪我に効く薬草も取り放題だと素晴らしい所なんだぞ!!」
「先祖、先祖って父様は私なんかよりも昔の人の方が大事なの⁉」
「そ、そうではない。私は今の国民達やお前の幸せの事を考えてな・・・・・・」
「私は幸せじゃないわ!! 私の気持ちなんて知らない癖に!!」
「待て待て! 落ち着い親の話を良く聞きなさい、ジュリア!」
「そ、そうだ、ジュリア! 俺は本気でお前の事を愛してな。だから結婚したら存分に幸せにしてやろうと・・・・・・」
ジュリアを落ちつかせようと必死に宥めるオーロックとプルド。彼女の様子は明らかにおかしかった。
ラティナは《心眼》で見てみるとジュリアのオーラは血の様な赤黒く染まっていた。そして、その赤黒いオーラは胸鎖骨関節の紋章から溢れていた。
「皆・・・皆そうだわっ・・・・・・! 私の気持ちなんて知らず、自分の事しか考えてない・・・・・・。ポギーだって結局はそうよ・・・・・・!! 私がどんな思いでここにいるのか分からない癖に・・・・・・‼ だから、私は・・・・・・」
ジュリアの纏う血色のオーラが増した。
「こんな国を・・・・・・滅ぼしてやる!!」
ジュリアの瞳が紅色に光った。
ラティナは何故か紅い瞳のジュリアをリゼルと重なって見えた。
血色のオーラがジュリアの全身を包み込み、影さえ残さずに隠した。それは《心眼》を持つラティナ以外の人間達も突然現れた血色の霧か液体として見えて驚いた。
「ジュ・・・ジュリアさん?」
ジュリアを包んだ赤黒い塊は宙に浮かび、心臓の鼓動に似た様な音が鳴り響き、紅い光の筋が脈を激しく打つ様に強まったり、弱まったりと光りながら大きく膨張していった。
皆がその異様な物の変化を見つめて一時、天井に近く達するまで大きくなると塊が弾け散ると巨大な怪物が姿を現した。
お待たせしました。実家の方の諸事情の都合によりギリギリ遅れましたが最新話を投稿しました。
第2章は遂に佳境に入りました。
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