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聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~  作者: 江戸ノ地雷屋
第2章 呪炎の花嫁と優愛の聖女
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第3話 雨の聖堂

「・・・・・・と言う訳でリゼル様、私は()こうと思います」


 ラティナはついさっき、起きたばかりで朝食を食べに食堂へ来たリゼルにこれまでの経緯(けいい)からジュリアにかけられた呪いを解くのと結婚指輪を取り戻すため、聖堂に現れたというディアボロスらしき化物を浄化しに()くと伝えた。

 リゼルは「ふーん」とまた眠たそうな顔のまま、チーズ入りの硬いパンとオルタンシアで()れたザリガニのビスクを食べながら聞いた。


「それで・・・あの・・・・・・リゼル様はどうしますか?」


「どうするって?」


「私と一緒に行きませんか? と言う(こと)です。出来れば手伝わなくても()いですからリゼル様も一緒に来てくれると嬉しいのですが・・・・・・」


 ラティナは付いて来て欲しいと望んでいる目でリゼルを見つめていた。ラティナとしてはリゼルを目の見えない所まで離れるのは色々と不安だと思っているからだ。


「ん・・・・・・、分かった。一緒に行ってやる」


「ほ、本当ですが」


「ここで待ってもどうせ暇になるしな・・・・・・」


(それとラティナは弱いし、へましたら報酬が(もら)えなくなるからな)


 リゼルは食堂に着く前、ロトンに出会い、そこで報酬の約束をした。高額の報酬が(もら)えると聞いたリゼルはやる気を出した。過去の記憶を無くしてもこの先、生きて()(ため)に金が必要だという(こと)は覚えていた。だから今回の化物退治と結婚指輪の奪還の仕事にラティナ一人(ひとり)は頼りないと思っているからリゼルも乗り出した。


「ありがとうございます。リゼル様はやっぱり優しいお(かた)ですね」


「ん・・・・・・所でお前のその恰好(かっこう)(なん)だ?」


「ふぇ? あ~この恰好(かっこう)ですか」


 今のラティナは、いつもの神官服の上に紺色のマントを羽織(はお)って、顔の上半分を(おお)い隠した金色の太陽を意匠にした仮面を(かぶ)った姿をしていた。


「知事さんに頼まれまして太陽の神官の恰好をしているのです。今、オルタンシアでは伝統の仮面祭がやっておりまして陽光の精霊さんを呼んで天気を晴れにして(もら)うためのお祭りだそう。そして私は新郎新婦さん達を祝福する陽光の精霊さんの代わりに結婚指輪を渡す太陽の神官の役も(うけたまわ)ったのです。ですから町に()(あいだ)はこの恰好(かっこう)のままで()かなくてはならないのですよ」


「はぁ~成程(なるほど)な・・・・・・」


 つまり、オーロックの魂胆はラティナの人並み以上の美貌(びぼう)で婚約者が自分の娘から心替えさせないためだろうとリゼルは思い込み、ビスクをスプーンですくい上げて一口飲んだ。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ラティナと朝食を食べ終えたリゼルは目的地の聖堂に向けて出発を開始した。

 屋敷の外ではロトンが待っていた。


「聖女様、リゼルさん、おはようございます。今日は聖堂まで私が車で案内します。何しろ聖堂は町の外にありますから」


「う~ん・・・・・・ではお言葉に甘えさせて(もら)います」


「所で聖女様、車酔いの方は大丈夫でしょうか?」


「あ、はい、大丈夫です。酔い止め用の薬、飲んで置きますので」


「それなら心配する必要は無いでしょう。それと今朝、頼まれた物を用意しました」

 

 ロトンは車から花束を取り出し、ラティナに差し出した。

 

「ありがとうございます」


(なん)で花なんだ?」


「それは知事さんから次の依頼を受けた後の(こと)でした・・・・・・」


 リゼルの疑問にラティナは花束が必要な理由を語り始めた。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 話はラティナがオーロックから次の依頼を聞き、承諾した後までに(さかのぼ)る。


「あの~知事さん、もう一つお聞ききしたい質問が()りますがよろしいでしょうか?」


「はい、(なん)でしょうか?」


「この国の教区長はいないのですか?」


 教区長とは共和国外、つまり帝国領の容認地帯で理術りじゅつ使い達を取りまとめる神父(ある)いは尼僧(シスター)長の(こと)だ。


今更(いまさら)思い出したのですが、確か共和国領の外、帝国領の容認地帯の各国では教区長が必ずいて、依頼を受ける前に教区長から直接説明を聞いて受諾(じゅだく)を受けるか受けないかを申し込む役目を(にな)ってくれるのを聞いたのですが、そんな(かた)がいないのはどうしてですか? それにこの国には(ほか)理術(りじゅつ)使いがいないのですか? そもそもその人はこの六日、じゃなくて一週間何をしていたのですが? 何故(なぜ)、ジュリアさんがあの(よう)な呪いにかかった時、すぐ共和国に知らせ(よう)としなかったのですか?」


「そ・・・それは・・・・・・」


 ラティナの多くの疑問を解消したい余りの質問責めに圧倒され、オーロックは答えるのも躊躇(ちゅうちょ)したが、やがて神妙の顔付きになって答え始めた。


「実は・・・教区長を含むこの町の理術(りじゅつ)使いは一人(ひとり)除いて全員お亡くなりになりました・・・・・・」


「えっ?」


 町長が重々しい口調で(かた)った(こと)にラティナは衝撃を受けた。


「ジュリアが呪いにかかる前の日、八日前の夜、聖堂の(りょう)に雷が落ちて火事となり、(みな)焼かれて死にました」


「そ・・・そんな・・・・・・精霊さんの声を聞き、自然を操る(こと)が出来る理術(りじゅつ)使いが雷で(みんな)死んでしまわれるなんて・・・・・・」


理術(りじゅつ)使いとは言え人間ですから・・・こればかりは仕方が無いでしょう」


「それで先程の除いた一人(ひかり)とは誰の(こと)ですか?」


「ポギーという若者で事故が起きる前の日、薬の材料を取りにって帰りが遅くなった(こと)で運良く事故から(まぬか)れましたが次の日には行方不明となりました。まさか・・・・・・いや、それは無いな・・・・・・」


「まさか?」


「あ、いえ・・・こっちの話です。貴女(あなた)が気にする(こと)ではありません。とにかくこの国に居た理術(りじゅつ)使いは残らずいなくなり、お(かげ)で後に現れた聖堂の化物を退治する(こと)もジュリアの病を治す事も聖堂共和国に助けを呼ぶ(こと)も出来なってしまい、最早、我々は運命の精霊様に祈りながらもう偶然でも良いから待つ(ぐらい)しか出来なくなってしまいました。そんな時に貴女(あなた)様が来てくれた(こと)がとても(がた)(こと)なんですよ」


 そう言ってオーロックの目から涙が流れていた。本当に(うれ)し泣きをする(ほど)本気に有り(がた)く思っている(よう)だ。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「・・・・・・と言う(わけ)でこの花はお()くなりになった人達を手向(たむ)ける(ため)に知事さんにお願いした物なのです」


「・・・そうか・・・・・・」


「さぁ、行きましょう。聖堂へ向かい、ディアボロスを浄化して結婚指輪も取り返して、ポギーさんも探しに」


「・・・・・・目的増えてね?」


 こうしてラティナはリゼルと共にロトンが運転する車に乗り、オルタンシアの聖堂へ向かった。


「それにしてもオルタンシアは確かハイドランジアしか咲かないと聞いた(こと)がありますが別の花が咲いているのですね」


 オルタンシアの町中の途中でラティナは花束として束ねられたガリア大陸の春の季節にしか咲ない白い花を見てロトンに聞いた。


「はい。今、帝国では室内の気温を何時(いつ)でも温暖や寒冷に変えられる冷暖房と呼ばれる機械や太陽の光の代わりとなる電光灯が開発されたお陰で(まれ)に晴れる(こと)の無いオルタンシアでハイドランジア以外の花が育つ(こと)が出来る(よう)になったのです」


「ふぁ~それはすごいですね。お日様の光が無くても春の花が育つ(こと)ができるなんて」


向日葵(ヒマワリ)薔薇(バラ)なども夏にしか咲かない花も育つ(こと)が可能です。(まさ)に帝国様々ですね。・・・・・・所でラティナ様、私からもお願いがありまして大変図々しくて申し(わけ)ありませんが」


「はい、大丈夫です。私に出来る(こと)なら何なりと申して下さい」


「いえ、(たい)した(こと)ではありません。ただ、依頼が終わった後で()いので私の娘に会って(もら)えませんか?」


「ロトンさんの娘さんにですか?」


「私の娘は自分も聖女になりたいと言い出す(ぐらい)、聖女様に憧れているのですよ。なので(すべ)てが終わったら一目だけでも()いから娘にラティナ様のお姿を見せてあげて下さい」


「分かりました。私で良ければそのお願い叶えてましょう」


 ラティナは仮面越しの笑顔でロトンの願い(ごと)を承諾する。


「あ、ありがとうございます。娘も絶対に喜ぶと思います」


「喜ぶと()いですね」


 三人を乗せた車はオルタンシアの町を出て雨が降り注ぐ森の中へ走って行った。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 空は分厚い雲に(さえぎ)られ、昼近くでも薄ら暗く、雨も(いま)だに降り続けている中に白い石作りの精霊教会の聖堂が建っていた。

 オルタンシアの聖堂は雨を防ぐ巨大天幕がある町の中ではなく、町の外に建てられているが、その見た目は雨によって不気味や哀愁を感じさせる物ではなく、壮大な美的印象は損なわれていなかった。(まさ)に結婚式場に相応(ふさわ)しい場所であった。(ただ)し、本堂だけは。隣にある建物、教区長や理術(りじゅつ)使い達が寝泊まりする(ため)(りょう)は今、落雷によって無残に焼かれていた。


(なん)でこんな所に・・・・・・こんな雨の中に建てているんだよ・・・・・・」


 ロトンの車によって目的地の前に辿り着いた時、リゼルは、雨に打たれる居心地の良く無さに対しての不満と疑問を(ひと)(ごと)(つぶや)いた。


「当時の精霊教会の理術(りじゅつ)使い達が自然と共に生きる(こと)を信条としているため、天幕のある町に住む(こと)こばみ、この場所に住む(こと)に選んだと言われています。決して我々は理術(りじゅつ)使い達と一緒に住む(こと)は嫌と言う(わけ)ではありませんので・・・・・・」


 リゼルの(つぶや)きに対し、案内役のロトンが解説する。


「・・・・・・あそこに指輪を盗んだと言う化物がいるのか?」


 聖堂の方に指差しながらロトンに聞くリゼル。


「はい・・・・・・」


「一体、どんな姿をしていましたか?」


「姿は・・・白い花嫁のドレスを着ていますが、足が無く・・・顔も目や鼻が無く・・・黒い歯が生えた大きな口だけの・・・・・・恐ろしい姿をしていました・・・・・・」


 ロトンは身を震わせながら化物について説明をする。


「わ、私は、さっきも言った通り、戦いは出来ませんのでお二人(ふたり)の足を引っ張らない(よう)にここで待ってます」


(・・・・・・要するに怖いんだな。まぁ、足手(まと)いは()ても困るし・・・・・・)


「私もその方が()いと思います。理術(りじゅつ)使いではないロトンさんはここで待って(もら)った方が私も安心出来ますので」


「すいません・・・・・・。ラティナ様、リゼルさん、どうかお気を付けを・・・・・・」


「はい。さぁ、()きましょう。


 ロトンは入口の前で待つ(こと)となり、ラティナとリゼルは聖堂の(となり)(りょう)の跡地へ進んだ。

 かつて(りょう)だった建物は、焼き付かれて残骸、石製の壁だった物と焼け焦げた木材の柱しか残っていなかった。跡地の中心には雷が落ちた跡と確実に思われる真黒い大きな焼け跡が()った。


「・・・・・・随分(ずいぶん)デカい雷が落ちたんだな・・・・・・」


「その(よう)ですね。もしも~し誰が()ませんかー?」


 今は二人(ふたり)以外、誰も居ない(はず)の跡地にいきなり呼びかけるラティナ。


「おい・・・いきなり何言ってんだよお前? まさか生きてる奴でもいるんか?」


「いえ、ひょっとしたら教区長さん達が幽霊になってまだここに(とど)まっているかもしれないと思いまして」


「・・・・・・お前は幽霊が見えるというヤツか。ヤバい(こと)言うな・・・・・・」


「だって(なん)だか気になる(こと)がありますから・・・・・・」


「気になる(こと)?」


「はい。いくら雷に当たって火事になっても理術(りじゅつ)使いが(みんな)そう簡単に死ぬとは思えないのです」


「そうなのか?」


理術(りじゅつ)使いとなった者は人に寄りますが生命力や特定の属性に対する耐性が身に付きますし、(たと)え火事であろうと理術(りじゅつ)を用いさえすれば水を操って消化をしたり、火を防いだりして生存する(こと)が出来た(はず)、そもそもその日も雨が降っていたので火事も強く無く、(りょう)もここまで焼かれる(こと)もなかったでしょう、それが雷ひとつで(りょう)がこの(よう)に焼け崩れ、理術(りじゅつ)使いが全員焼かれて死んだ。つまりラティナ様は今回起きた事故は自然の落雷によるものではないとお考えですね?」


「はい。それです」


「そうか・・・つまり・・・・・・って誰だ⁉」


 いきなり話に割って入った第三者の声がした方向へ向くリゼルとラティナ。向いた先には砕けて壊れた残骸の壁しか見えなかった。


「見えない所から失礼します」


 残骸の壁の裏側から一人(ひとり)、フリル、レース、リボンで飾られ、両袖が手を隠す(ぐらい)長い洋服を着た、首まで(そろ)えた長さのある銀色の髪をした十一歳位の少女が姿を(あらわ)した。顔立ちは可愛(かわい)らしい(ほう)だが、無表情でおそらく冷静な性格だろう。

 リゼルは隠れては突然現れた銀髪の少女に警戒していつでも硬化して攻撃出来る(よう)に構えた。対して銀髪の少女は胸元から上下左右それぞれに宝石と思わせるガラス玉が()め込まれた十字架の首飾りを取り出し、ラティナとリゼルに見せた。


「あ。それは精霊教会の聖印」


 金色の十字架に上が緑、右に赤、左に青、下に褐色のガラス玉がそれぞれの色が異なるようめ込まれていた物。それこそが精霊教会の使徒の証として与えられる聖印だ。


「もしや貴女(あなた)は・・・・・・」


「はい、お初にかかります聖女ラティナ様。空の国アステリオスから来ましたアリアと申します」


 アリアと名乗った銀髪の少女は二人の前に御直(おじき)をしながら挨拶(あいさつ)をする。

 「アリアちゃんと言いますか。これはどうもご丁寧(ていねい)に」とラティナも御直(おじき)で返した。


「私の(こと)、ご存知の(よう)ですか」


 今のラティナの恰好は紺色のマントを羽織(はお)った太陽の神官のままだが、仮面は外して素顔を表していた。


「ラティナ様は聖女としても有名ですので」


成程(なるほど)。あ、こちらの(かた)は・・・・・・」


 ラティナがリゼルを紹介しようとすると「リゼル・バーンだ」とリゼル本人から自分で名乗った。


「アリアちゃんはアステリオスからどうしてここに()るのですか?」


「私は巡礼の旅の途中で丁度この場所、オルタンシアの聖堂に辿(たど)り着いた所です」


「じゅんれい・・・て、(なん)だ?」


 リゼルがラティナの耳元に小さな声で聞いた。


霊装(れいそう)を具現化出来る(ぐらい)になり、腕を認められた理術使いの人に下される、聖堂や聖地のある国を巡る修行の旅で、世の中の(こと)(まな)び、見識を広め、より成長させるために精霊教会がさだめたものです。・・・・・・所でアリアちゃんは(とし)いくつですか?」


 霊装(れいそう)を具現が出来る(よう)になったとしても過酷と知られる巡礼の旅にアリアの(よう)な十代近くの少女を行かせるのはまだ早すぎる。しかし、低身長で年上のポリッチェを例に見た目が低身長なだけの可能性もあるのでラティナは聞いてみた。


「十歳です」


 見た目通りだった。


「ふわぁ~、その若さで。もしかしてアリアちゃんは優秀な天才少女とかですか?」


「はい。確かに聖学園に()た時、周りからそう呼ばれた(こと)もありました」


「すごいですね~。アリアちゃんはまだ子供ですのに」


「いえ、私より幼い頃から癒療師(ゆりょうし)となったラティナ様に比べればたいした(こと)ではありません」


「・・・・・・でも、私は巡礼の旅は・・・・・・そ・・・それよりもさっきの話の続きですかアリアちゃんはここで何をしていたのですか?」


「今日、巡礼の旅の途中でオルタンシアに辿(たど)り着いたのですが、泊まる予定だった(りょう)があの()り様だったのでこの状況から見て気になって一先(ひとま)ず調べていた所です」


「気になる(こと)?」


先程(さきほど)私が言った貴女(あなた)と同じ(よう)に気になっていた(こと)です」


「・・・・・・(りょう)の火事は自然の落雷によるものではない・・・・・・と言う(こと)ですか?」


「はい。とどのつまり、オルタンシアの理術(りじゅつ)使い達は事故で亡くなったのではなく、ディアボロスに殺されて魂を()べられたと考えるべきでしょう。あくまで予想による仮説ですが」


 そう言うとアリアの両手の(あいだ)から赤い糸を玉にした物が現れた。


「それがアリアちゃんの霊装(れいそう)ですか?」


「はい。これが私の固有理術(こゆうりじゅつ)にして形にした霊装(れいそう)、《スレッドオブトレイサー》と言います。この痕跡を辿(たど)るのに(てき)した能力が故にわたくしは“跡読師(あとよみし)”の役割を与えられました」


「あとよみし?」


「その場にある物から答えを導き出すのが得意な理術(りじゅつ)使い、と言えば良いでしょう」


 ラティナの問いに淡々(たんたん)と答えるアリア。赤い糸玉から糸に繋がれた藤色の宝石で出来た縫針(ぬいばり)、に似た振り子(ペンデュラム)がまるで生き物かの(よう)に、重力に逆らうかの(よう)に出てきて、勝手に動き、聖堂の方へ向いた。


「聖堂の(ほう)から魔力を感じます。恐らくあの中にディアボロスが・・・・・・」


「では教区長さん達はやはり聖堂(あそこ)()るディアボロスに殺されたのですが?」


「それは先程(さきほど)も言った(よう)にまだ分かりません。結論付けるのはまずは直接見てからでないと(なん)とも言えません。そう言えばラティナ様達もとうしてここに来たのですか?」


「それは・・・・・・」


 ラティナはアリアに自分達がオルタンシアに来た時、町長の娘が火を噴く奇病にかかり、その人に呪いをかけた犯人が聖堂に立て()もっているディアボロスだと思われ、そいつを退治して聖堂と結婚指輪も取り戻す依頼を受けている(こと)を話した。


「話は良く分かりました。それでは私もラティナ様のお手伝いをします」


「え、お前が仲間になるのか?」


「当然です。私も理術(りじゅつ)使いの(はし)くれです。ディアボロスを退治するのも理術(りじゅつ)使いの役割ですので」


「それは心強いです。よろしくお願いしますね、アリアちゃん」


「おい、大丈夫かよ・・・。知らない奴なんかと一緒で・・・・・・なんか怪しいぞ・・・・・・」


 リゼルとしてはいきなり現れて同行しようとするアリアの(こと)、警戒をしていた。


「私としては貴方(あなた)が怪しいと思っていますが」


 アリアはリゼルの声が聞こえていた(よう)だ。リゼルはアリアを(にら)み付けた。そんなリゼルにラティナは(なだ)めた。


「ま、まぁまぁ・・・・・・。大丈夫です。アリアちゃんの持っていた聖印は精霊教会の理術(りじゅつ)使いの証で間違いなく本物みたいです。それに私の名を知っていたのは、実は共和国では私の名は沢山の人達に知られているみたいです。それとアリアちゃんは間違い無く霊装(れいそう)を出せるみたいです。霊装(れいそう)を出せる人には悪い人はいません」


 自信満々の笑顔で答えるラティナ。


「・・・・・・あ・・・そう・・・・・・はぁっ・・・・・・」


 リゼルは肩を落としてため息を吐き、これ以上反論するのを諦めた。


「それでは聖堂の中へ入りましょう、リゼルさん、アリアちゃん」


 こうしてラティナとリゼルにアリアと名乗る不思議な少女が仲間に加わり、ディアボロスが住み着いている聖堂へと歩き出した。

続きが気になる人はポイントか感想をお願いします。

今回は謎の新美少女キャラ、アリアが登場。彼女の実力は次回のディアボロス戦で明らかになります。

お楽しみに。

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