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その⑱

 階が、ずれている?

 なんで?


 オレは一度エレベーターに戻り、ボタンを確認した。上から、「④」「③」「②」「①」。そして、「G」のボタン。このボタンは、昨日天野さんと乗った時も、天野さんを探して乗った時も見なかった。


 その時だった。



「ああ、なるほどな」



 エレベーターの扉の前に立って、上を見ていた石丸刑事が、合点が言ったように頷いた。

 オレは一度エレベーターを出て聞いた。


「なにがなるほど?」

「これ、見ろよ」


 石丸刑事が、扉の上に設置された、金属板の階数表示を指した。

 昨日、天野さんと一緒に読み合ったものだ。





 一階…spring

 二階…summer

 三階…autumn

 四階…winter





「確か、各階に、四季の名前が振り分けられているんだよ。このホテルの創業者が四季が隙だったって言ってたし…」

「そうなのか? だったらなおさらだな」


 石丸刑事はにやっと笑った。


「三階の、『autumn』の表現を見てみな。これは、『秋』を意味するんだが」

「それがどうしたの?」

「これは、イギリス英語だ」

「イギリス英語?」

「中学で習わなかったか? 英語には、アメリカ英語とイギリス英語が存在するって」


 うーん、習ったような習わなかったような。


「特に、秋の表現は有名な話だよな。イギリス英語では、秋を『autumn』と表現し、アメリカ英語では、秋は『fall』と表現される」

「それが、今回のエレベーターと何か関係があるのか?」

「つまり、エレベーターも『イギリス形式』ってことだよ」

「イギリス形式だ?」

「正確に言えば、『ヨーロッパ形式』だな」



 石丸刑事は、指をぴんと立ててオレに説明した。


「ヨーロッパのエレベーターは、一階のことを、『G』と表現する場合がある。そして、二階以降から、「①」「②」って表現するんだ。あるあるだな、海外に旅行に行った時は、日本との表記の違いに戸惑う奴も出てくる」


 オレと石丸刑事は、エレベーターに乗り込んだ。


「おそらく、普段はこの『G』のボタンは隠されているんだろうな」


 ボタンの金属板に触れてみると、べたっとした感触が残った。何かがここに粘着物で張り付いていた証拠だ。


「さしずめ、ダミーボタン」


 石丸刑事は、迷うことなく、「④」のボタンを押した。



「『G』のボタンの上に『①』を、『①』のボタンの上に『②』を、『②』のボタンの上に『③』を。そして、『③』のボタンの上に『④』を置いて、その上の『④』のボタンを隠していたんだろうな」



 エレベーターがゆっくりと動き出す。





「このホテルは、四階建てじゃない。『五階建て』だ」 



次回より解決編です

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