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乃々華

応援よろしくおねがいしまぁーす!

 ようやく首から手を離してもらって、俺は後ろを振り向く。

 そこにはいかにも『怒ってます!』って顔をした乃々ののかが、腕を組んで立っていた。


「おいコラ乃々華、首はいかんだろ首は」

「なに? 文句あるの? キョウがノノの事を無視するからでしょ? そ、それにあろうことかむ、む、胸が無いだなんてっ! その目は節穴なの!? ほらよく見なさい! ちゃんとあるでしょうが!」


 そんな事を言いながら自分で自分の胸を持ち上げる乃々華。しかし制服の上からじゃよくわからない。……いやいやいや。待て。なんでコイツこんなことしてんの!? 恥ずかしくないのか!?


「いや、別にいいよ。やめろて」

「別に!? 別にってなに!? これでもCはあるんだから……って何言わせてんの!? このエロス変態!」

「そ、そんな馬鹿な。何もしてないのに罵倒されるなんて納得がいかん。いいか? 胸があるっていうのはな? あんなのを言うんだ」


 そう言って俺は音原の方を顎で示す。

 それを追うように乃々華も音原を見る。そして何かを悟ったような目になると、ゆっくりと口を開いた。


「あれは特別。魔境まきょうならぬ魔胸まきょうなのよ」

「ぶはっ!」


 くっ、上手いこと言いやがって。


「おい、俺の彼女の胸を見て何言ってるんだ? コレは俺のだ」


 遥が俺達の視線から音原を守るように立ってそう言うと、音原が変に目を輝かせてその背中を見ている。


「は、蓮川君……。それはもうプロポーズをしていただいてる様なものでは? お父様とお母様に言わないと……」

「おい待て。それは待て。スマホを出すな。通話ボタンをタップするな。……おい、歩くの早いぞ。待て」

「あ、もしもしお母様? 私、以前お付き合いしている事をお伝えした蓮川君からプロポーズ受けましたわ……」

「音原!?」


 電話をしながら早足でズンズン進んでいく音原を後ろから追いかける遥。そして取り残される俺と乃々華。


「……乃々華、俺達も行くか」

「ちっちっち。昔みたいにノノちゃん、って呼んでもいいのよ?」

「行くか、ノノちゃん」

「……やっぱりやめて。なんか恥ずかしい」


 自分で言ったくせに顔を両手で覆っていやがる。どうせ俺がそう呼ばないと思って言ったんだろうけど、俺は言う。言いまくってやる。


「わかったノノちゃん。さぁ学校に行こうノノちゃん。ほら歩けノノちゃん。色気がNONOちゃん」

「やめてっ! 連呼しないで! って誰が色気がNOだって!?」


 ころころと表情を変えながら文句を言ってくる乃々華。そういう所だよ。

 なのになんでコイツはモテるんだ?

 この前も『キョウキョウ聞いて! ノノね、サッカー部とバスケ部の人に告白されちゃったぁ〜! どう? すごい? まぁ、お断りさせてもらったけど!』って言ってきたんだよな。

 その二人にいい眼科を紹介するって言ったら腕噛まれたし。謎だ。まだ噛み跡残ってんだよな。はぁ……。


「それでキョウ? ノノが来る前はどんな話してたの? 恋がどうとかって言ってる蓮川君の声は聞こえたんだけど」

「ん? 別になんでもないぞ? たいしたことじゃない」

「…………仲間はずれだ」

「は?」

「蓮川君と音原さんには言って、ノノには言わないなんて仲間はずれだっ! ノノも仲間当たりにして!」


 仲間当たりってなんだよ。初めて聞いたわ。

 まぁ、別に隠すような事でもないし、話してもいいか。


 俺は乃々華がいる右側に顔を向けると、遥達に話したことを乃々華にも話し始めた。


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