顔面が痛すぎてダメかもしれない
顔が痛い。歯茎から鼻筋の奥が痛いように痒いように疼くのが始まって二十年間経つ。本を読んでも、映画を観ても、音楽を聴いても、考え事をしても、顔面痛とともにあった。運動など身体を動かしている間は痛みは熄んだが肉体労働者でもない僕は大抵痛みと時間を共にした。鑑賞の類の楽しみには必ず顔の痛みが含まれる。痛みが熄むのなら顔面を破壊したい。とりあえず前歯とその歯茎、そこから上に向かう鼻筋の神経を削ぎ取ったら痛みが取れるのではないか。痛みに気をとられて過ごした二十年とは別の月日が、この痛みがなければあった可能性をあわれむ。長い歳月をかけて痛みが作り出した虚無で陰気な気性が僕に張り付いているのをあわれむ。顔が痛すぎるので今すぐにも僕の顔面に銃器で風穴を開けて別の生または真っ暗な死に飛び移りたいのだ。