3話 悔いる者、拾う者。
ステータスのことはまぁ、諦めよう。うん。てことで、これからどうしよう。とりあえずは衣食住を整えないと。「衣」は要らないけど。あ、でも人化できるようになったら必要か。うむむむむ。ん?なんかあっちに行った方がいい気がしてきた。これがスキル“超直感”の力かな。ま、行ってみるか。飛び方が分からないし、走ってこう。(走り中)
なんか体が軽いっ!え、これ結構スピード出てるんじゃない?!飛べるような気がしてきた!!翼を広げて…
「キュキュイ!(浮いた!!)」
イィィヤッホォォイ!!(謎のハイテンション)このままどこへでも行けるんじゃない?!
はい。そう思ってた時もありました。いや、ほんとになんであんな(謎のハイテンション)になっちゃったのか…。後悔先に立たずとはまさにこの事。現在私はガクブルです。何故こうなったのかと言いますと…
─数分前
「ぉぉおおお!!すごいっ!!速いっ!!高いっ!!」というハイテンションの中、よく前も見ずに飛んでいたわけですよ。そんな私は調子に乗って空中旋回とかやっちゃったわけです。…何回も。そりゃ目も回るってもんですよ。えぇ。そんでフラフラなのに地味に速度があったもんですから、派手にぶつかった訳です。しかも最っっっ悪な事に、ぶつかった相手が成体と思われるどデカいドラゴンさん。
そんな訳で今、そのドラゴンさんに見下ろされてるわけです。そりゃガクブルですよね!!まったく、超直感ってなんなんだよっ!!じゃっかん、現実逃避していると
「ちょっと?そこの貴方大丈夫?」
「キュ?」
あれ?優しい?しかも女性の声だ。自分の思ってたことと全く違い、戸惑う私に
「あら、もしかして生まれたばかり?」
と、優しく話しかけてくれる。コクリと頷くと
「あらあら。親は?」
フルフルと横にふる。すると、「ふむ。」と少し考える仕草をするドラゴンさん。少しすると、考えがまとまったのか顔をあげる。
「ねぇ、貴方。私と一緒に来なさいな。」
「キュ?(え?)」
も、もしかして養ってくれるの?期待のこもった目で見ると、
「さすがに、こんなちっちゃい子が1人なんてほっとけないわ。独り立ちできるまでは面倒を見てあげるわ。」
…前言撤回。“超直感”ありがとう!!超役に立ったわ!
「さ、私の巣に行くわよ!」
「キュ!」
私のちっこい体を割れ物のように優しく手に持ち、翼を広げ空高く飛び上がる。さっきの私の飛び方とは全く違う、どこか優美な、それでいて見た者が畏怖を感じるような、そんな飛び方だった。
しばらく飛んだ後、1つの大きな洞窟の前に到着した。中は見た目通り大きく、凸凹していると思ったら、案外床(地面?)は平らで結構歩きやすそう。ドラゴンさんはそおっと私を下ろしてくれた。そして私の背に合わせるようにめいっぱい顔を下げて、私と目を合わせながら、
「よろしくね、私のことは母と思ってくれると嬉しいわ。」
そう言って優しく微笑んだ。…たぶん。だってあんまり表情に出ないから…。ドラゴンだし。
でも……
きっとそうだと思う。
声がとっても優しかったから。
これからよろしくね、
お母さん。