どうしてこうなった…
──ここはどこ?私は…どうしてここにいるんだろう。
周りを見渡してみても、ただただ白いだけで何が何だか分からない。さらに言えば、自分の体が半透明になってる…。いや、マジでどうしてこうなった?!こ、こういう時こそ深呼吸だよね。すぅーはぁー(深呼吸)よし、少し落ち着いた。とりあえず順に確認しよう。まず、私は月村麗18歳。割と良い高校の3年生で、大学試験に向けて猛勉強中。友達もそこそこ居て、家族仲も良かった。まぁ、至って普通な高校生だよね。それから、えーと、1番新しい記憶は…、確か下校して、いつもの道通って…いつもの…!!横断歩道っ!!そうだっ、思い出した!!私が横断歩道渡ってきたら乗用車が突っ込んできたんだ!!
あの時ちらっと運転手の顔見えたけど、結構なお年のおじいさんだったなー…。てことは今流行り(?)の高齢者ドライバーの事故で私は
死んだってことか。ははっ、乾いた笑いしか出てこないよ。なんとも呆気ないこと。まだ18年しか生きてないんだけどなぁ。いろいろしたいことがあったのになぁ。もう、会えないのかなぁ…。お父さんは少し寡黙だったけど優しかったし、お母さんは少しうるさかったけど相談にのってくれたりして…。おじいちゃん、おばあちゃんはいっつもほのぼのして、遊びに行くたびお菓子くれたりして、お母さんから「あんまり甘やかさないで!」とか言われてたなぁ。友達には振り回されたけど、なんか面白くて…よく「早く恋しなよー、JKなんだよ?!」とか言われて、その度に「だってタイプの人が居ないのよ〜。」って言ったっけなぁ。そっか、もう会えないんだ…。ものすごく悲しい。言葉に出来ないくらいに。でも、でも、なんでだろう。不思議と涙が出てこない。普通の人なら大号泣する所だろう。さらに私は他の人より割と涙脆かったはずなのに。……あぁ、そういえば、自分の事で泣くことってなかったな。感情移入しやすいから感動モノでよく泣いたけど、私が何かされたからって泣くことはなかった。おじいちゃんおばあちゃんの家で飼ってた犬が亡くなった時は泣いたけど。うーん、なんでだろう。さらに言えば、まるで死んでから何年もたってるみたい。さすがにこんなに達観としてる子供でもなかったし、無関心って訳でもなかったんだけどな。
──あれ?なんか景色変わってきた。
いつの間にか、ただ白かっただけだったのが何だか宇宙みたいな景色に変わってる。というか、私が移動しているみたい。なんというか、ワープホール的な。って、あら?あららら?な、なんか引っ張られてる?え、どゆこと~~~?!グルグルと回転しているような感覚の中、私の意識は薄れていった。
──ぅうん…、ハッ!!意識復活!!って、真っ暗なんですけど。しかもなんか狭いし。ぺたぺた触ってみると、どうやら卵みたいなものの中にいるみたい。コツコツと叩いてみると意外と硬くなさそう。両手両足を突っ張ったり、1箇所を集中的にゲシゲシやってみると……パキパキパキッと割れてきた。よし、ヒビが入ったところをさらに叩く。すると、光が入ってきた。眩しいけど、ヒビを広げる。そして、ついに…
割れたぁ~~~!よっしゃ、外に出るでぇー!(興奮により関西弁もどき)最初のい〜〜っぽ!!ぉおお?!な、な、な
「キュゥァア?!キュッ?!(なんだこれぇぇぇ?!ってはぁ?!)」
な、なんか鳴き声になってるぅぅぅ!!よぉし、落ち着け私。こういう時こそ深呼吸だよね(本日2回目)。
「すぅー、はぁー。」
よし、落ち着いた。私は落ち着いた!そういうことにしよう!
とりあえず、状況を整理しよう。近くになんか池があるし、自分の姿を見てみるか。まぁ、人間じゃなさそうだけどね。歩く度にチラチラと見える腕はワニみたいだし、そもそも四足歩行だし…。できれば気持ち悪い生物じゃないといいな。
サクサクと草を踏みながら池に到着。うわぁ、何か緊張してきた…。よ、よし、3、2、1で見てみよう。3、2、1!
「···。」
……What?目をパチパチさせてもう1回見てみる。そこに写っている者も目をパチパチとさせている。こちらが手を挙げれば、あちらも手を挙げる。こちらが首をかしげてみると、あちらも首をかしげる。何故こんなにも確かめているのか。それは到底信じられなかったから。信じられるものではなかったから。なんてったってそこに写っていたのは、月白色の鱗に覆われている体に、同じ色のコウモリのような羽根を持つ、
ドラゴンだったから。