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第1章 第10話 おっさんと愉快な即席パーティー

前回の選択肢は投票の結果

④おっさん、服を脱ぐ

に決まりましたので、それの基づいてストーリーを進めます


 俺は筋肉痛の痛みに耐えながらスックと立ち上がると、ニナという娘の前に仁王立ち。おもむろに服を脱ぎ始める。


 上着とズボンを一気に剥ぎ取りパンイチとなった。


 こういう時は照れたら負けだ。


 どうせ俺のせいじゃない。


 小娘に中年ボディーをまざまざと見せつけてやる。


 朝一ということもあり、俺のアレはアレなことになっている。


 ふっ、俺もまだまだ若い。


「……何をされているのですか?」


「着替えだが?」


「……そうですか」


 しかしこのニナという小娘、動じる風でもなく冷静な表情で俺をガン見している。


 それもその視線は俺の下腹部をロックオン。


「……」


 ……なかなかやるじゃねえか。


 下着越しとはいえ俺のマグナムを見てここまで平然としていられるとは。


 しかし、この娘。なぜ出ていかない?まだ十代にも見える若い娘のくせして、まさかオヤジの裸に興味深々なのか?ずっとガン見してるし。


「……もう一度言うぞ?今から着替えるが?」


「はい。どうぞ。先ほども申しました通り、何なりとお手伝いさせていただきますので」


 朝の暴れん棒を鎮めるのを手伝ってくれ、という最低なお願いが頭をよぎったが、ここは自重しておく。


 が、ニナはつかつかと俺の側にやってきて、突然俺の下着にぐいっと手をかけるじゃないか。


「……何をする?」


 さすがの俺も面食らって思わず自分の下着を掴んで握りしめた。だが、ニナは平然とした表情のまま、ぐいぐいと俺の下着を下ろそうと力を入れ始める。


「着替えをお手伝いしようかと」


「き、着替えなんぞ一人でできる!離せ!」


「遠慮なさらず。私、孤児院で服を着替えさせるのには慣れておりますので」


「ガキと一緒にすんな!……いいからこの辺でやめておけ。このパンツは言わばパンドラの箱だ。この中にはとんでもないものがある。開けるべからず、だ。部屋を出て行くなら今のうちにだぞ……!」


「パンドラの箱とやらがどういうものかわかりませんが、中のとんでもないものとやらには興味があります。それに、退かぬ、媚びぬ、省みぬが我が家の家訓ですので」


 分かった。こいつアホだ。アミルの神官ってこんなのばっかだな!


 しかし、ここまでするのなら、もう責任はこいつにある。


 いいだろう。慈愛の神の信徒の実力とやらを見せてもらおうじゃあないか……!


「そこまでの覚悟があるならしかたない……俺も男だ。受けて立ってやる。着替えを手伝ってもらおうか!」


 俺は下着から手を離してバンザイの恰好をした。


 もうこうなったら流れに身を任せる!まさにまな板の鯉状態。


「さあ、もう阻むものは何もない!グイッといけ!グイッと!カモン!」


 ああ、もう色々辛抱たまらんようになってきた。しかし、その時。


 ゴツン!


 突然頭をどつかれた。ついでに目の前のニナも。


 頭を抱えてプルプル震えるニナの横には仁王立ちのココロ婆さんの姿が。


「朝っぱらから何バカな事してんだい!さっさと着替えて飯にしな!」


 まだいたのかよ!ババア!








 ファナトリア第9未踏破領域への定期連絡便の幌馬車の中は、無数の冒険者で溢れかえっていた。


 いつものことながら、むさ苦しい男の冒険者が多い車内は臭くて暑苦しい。風呂入れよお前ら。


 そんな中にあって、俺の隣に座るうら若きアミル神の神官の娘は一服の清涼剤ともいえる存在なのだろうが、彼女が持つ巨大なタワーシールドの無骨な存在感がそれを打ち消してしまっていた。


「……それにしても、でけえ盾だな。お前さんの身長よりデカいじゃないか」


 ニナは相変わらずの平静な表情でコクリと頷いた。


「私はストレージが使えませんので、お邪魔でしょうがご容赦下さい。ですが、これでどんなモンスター相手であろうと、私が退くことはありません。壁役は私に任せていただきたいと思います」


「お前さん、神官だよな?」


 まあ、こいつの神殿の神官長があれなんだから、もう驚きはしないけどな。


 幌馬車に揺られること、約一時間弱。


 勝手知ったる俺の職場でもあるファナトリア第9未踏破領域ダンジョン案内所へと辿り着いた。


 中に入ると、所員の一人であるアレンが俺の姿を見るなり怒鳴り込んできた。


「トールさん!あんた今まで何してたんだよ!何日も休みやがって!昨日もふらっと来てはすぐ帰るし!」


「連絡したはずだぞ。負傷療養だ」


「うそつけ!こっちは大変だったんだぞ。あんたを簀巻きにして有り金全部巻き上げてやるって息巻く野郎たちが殺到してさ」


「あー……それはまあ、すまなかった」


 まったく、ケツの穴の小さい奴らばっかりだ。モントレの件の報酬ならちゃんと出たんだからいいじゃねえか。


「あんたが来たと思えばエヴァの奴が休むって連絡が来るし……まったく困ったコンビだぜ」


「別にコンビ組んでるわけじゃねえよ……ああ、アレン。悪いがちょいと野暮用で今日俺もそっちは手伝えないから、よろしくな」


「はぁ!?何言ってんだ!」


「これからダンジョン潜るんだよ。クソめんどくさいクエストの代行頼まれたんだ。まあ強いて言えばアミル神殿の神官長から依頼された緊急案件ってことになる。よかったら代わってくれるか?」


「……血まみれ処女神官の……!」


 アレンはさっと顔色を変えると、「じ、じゃあ頑張れよ!」と言ってそそくさと受付の奥に引っ込んでしまった。薄情なやつめ。


 その時、ニナが俺の鎧下の袖口をチョイチョイと引っ張ってきた。


「トール様。今回のクエストのパーティーの皆さまがあちらに」


 そう言われ、ニナの指し示す方に目をやると、掲示板近くに集まっている4人の冒険者の姿が見えた。


 ローブ姿の魔法使いらしき女が持つワンドの先には赤い布が結び付けられている。ニナから聞いていたパーティーの目印だ。


「よお、あんたらが『七光の雫』の捜索パーティーか?」


 俺が声をかけると、4人が一斉にこちらを向いた。


 見たところ、赤い布をつけたワンドをもった人族の魔法使いの女の他は、中年の小人族の女と戦士らしき龍族がいて、残りの1人が若い人族の女盗賊といった構成のようだ。龍族の奴の性別は分からんが、なんか女がやたら多いな。


 なぜだか、小人族の女と女盗賊の2人が俺を見て明らかに狼狽するような様子を見せた。


 なんだ?俺、こいつらに何か悪さでもしたことあったか……?


「ケティ・バークレー様ですね。私はニナ・アマルガム。こちらはアラン・ゲールス様の代理のトール・ハシダ様です」


 ニナがそう自己紹介をすると、魔法使いの女がニコリと笑った。


「初めまして。お話は伺っていますわ。私がクエストの代表請負人を務めさせていただくケティ・バークレーです。よろしくお願いいたしますわ」


 ケティは柔らかい微笑を浮べながら、スカートの両端を軽くつまみながら腰を曲げる。やけに貴族臭い慇懃な挨拶をする魔法使いだ。


 20代前半のそこそこ経験を持つ魔法使いといった雰囲気で、長い銀髪を一本に編み込んで前に垂らしている。なかなかの美人だな。


 ケティは俺に向き直り、微笑みかけてくる。


「トールさん、とおっしゃいましたわね。アランさんの代理の方だとか」


「ああ、まあな。行きがかり上そうなった」


「アミル神官長のエレナさんからのたっての願いということでしたので代理の方を立てることを了承いたしましたが、一つ約束していただきたいことがあるのです」


「なんだ?」


「七光の雫は非常に希少なアイテムです。その採取場所はあまり周知されては困りますのでくれぐれも他言無用でお願いいたしますわ。アランさんと依頼主のガストさんの契約でもそれは明記されていますのでご注意を」


「ああ、分かった」


 なるほど、やはり七光の雫とやらは希少アイテムだったか。この辺りの契約やら利権に関わると碌なことがないので、無論他言するつもりもない。


「それでは他の皆さまのご紹介を。こちらの女性はロイナ・バレットさん。そしてこちらがアイザック・ランカードさん。お二人とも戦士をなさっているとのことです」


「え、ええっと!なんだっけ。そう、ロイナよ!よろしくねおじさん!」


 と、ロイナという割と歳がいってそうな小人族のおばさんに、いきなりおじさん呼ばわりされる。


頑丈そうなおばさんだが、妙に落ち着きがない。大丈夫か?


「やあ!トール!ひさしぶ……いや!始めまして!俺はアイザックだ!いい名前だろ?アイザック。うん!いい!ははははは!」


 そう言って笑いながら俺の肩をバンバン叩きまくる龍族のアイザック。


 この暑苦しさ、誰かさんを彷彿とさせるな……。


「それでこちらがイネス・テレムードさん。盗賊職の方ですわ」


「……よろしくであり――よろしくです」


 小さくそうつぶやいてすぐにそっぽを向いてしまうイネス。こいつも妙にそわそわしてやがるな。


「皆さん、認定レベル25以上の方々です。油断は禁物ですが、7層なら十分対応できる方々だと思いますわ」


 ケティは自信ありげに微笑むが、さてどんなものだろうか。


 レベル25以上になると、強さだけでいうといわゆる中堅冒険者と言われる。7層あたりだと確かに適性レベル帯ではあるんだが、決して油断はできない。


 ここは一応ちゃんとこいつらのステータスを把握しておくべきか。


 俺はケティに目を向けると、意識を集中させる。


 すると、ケティの横にまるでゲームのステータス画面のような当人のパーソナルデータがずらずらと表示された。


 クソ神からもらったチート能力の一つ、『アナライズ』だ。


 このゲームのような世界でも、人の強さなどの細かなステータス数値は確認する術がない。大ざっぱな強さの基準は、戦の神ファーレの奇跡よって定められる「認定レベル」となる。


 認定レベルは、ファーレの司祭が神聖魔法により生み出した各レベルの『使徒』と戦って、それに勝利できればレベルが確定する。つまり、レベル25の使徒と戦って勝てば、そいつは認定レベル25になるというわけだ。


 だが、俺の『アナライズ』はそれよりももっと細かくステータスを確認することができる。強さはもちろんのこと、当人の『属性』まで。



 ケティ・バークレー


 Lv34(ポテンシャルLv値67)


 生命力:1094

 魔力:2764

 筋力:76

 敏捷力:89

 体力:68

 知力:239

 幸運:50

 属性:混沌/悪



 ……まあ典型的な魔法使いのステータスだが……なかなか面白い属性をしているな、こいつ。


 俺がじっと見つめているのに気が付いたケティは、ふわりと柔らかな微笑を浮べる。


 ……この女、なかなかの役者と見える。こいつは要注意だな。


 一応、他のやつのステータスも確認しておくか。



 ニナ・アマルガム


 Lv31(ポテンシャルLv値86)


 生命力:2374

 魔力:1564

 筋力:132

 敏捷力:90

 体力:129

 知力:97

 幸運:89

 属性:中立/善



 ファテリナ・ミドルトン


 Lv26(ポテンシャルLv値130)


 生命力:1894

 魔力:1720

 筋力:128

 敏捷力:149

 体力:117

 知力:135

 幸運:226

 属性:混沌/善



 エヴァンゼリン・ミッドガルド


 Lv58(ポテンシャルLv値99)


 生命力:3287

 魔力:1890

 筋力:286

 敏捷力:460

 体力:278

 知力:169

 幸運:70

 属性:秩序/善



 ウォレス・トールキン


 Lv117(ポテンシャルLv値129) 


 生命力:11734

 魔力:4583

 筋力:769

 敏捷力:582

 体力:836

 知力:252

 幸運:174

 属性:中立/善



 俺はコケそうになった。


 全員知り合いじゃねえか!!!!


 しかも、最後にヤバイ奴がいる!


 なんでこいつがここにいる?!


「んんん?どうしたのかな?トール君!はっはっは!」


 俺の視線に気が付いた龍族のアイザックがバンバン!と背中を叩いてくる。


 このアイザックのステータス上の名前はウォレス・トールキンとなっていた。俺の知るウォレスは龍族なんかじゃなく人族の男だ。


 おそらく魔法で姿を変えているのだろう。変容魔法の「ミミック」あたりだろうか。


 小人族のおばさんロイナがファテリナお嬢さん。


 盗賊のイネスが猫娘だ。


 何のつもりだ?!こいつら!




 ◆◇◇◆




 なんでトールさんがここに?!


 私はトールさんが姿を現した時、もう少しで声を上げてしまうところでありました。


 さすがのファテリナお嬢様も、予想外の展開にすっかり面食らってしまっていたようであります。


 一人、ウォレスさんは非常に楽しそうでありますけど……はぁ。


 どういう経緯かは分かりませんが、債務者の1人であるアランさんの代理をトールさんが買って出たということなのでしょう。


 面倒ごとが大嫌いなこの人が、どういう風の吹き回しなのでありましょうか。


 ……とにかく、私たちは7層へと向かわなければなりません。


 デニスさん失踪の謎を解くカギはそこにあるかもしれないのですから――




※今回は選択肢の投票はありません

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