衝撃
「もしかしたらご主人、弱体化したんじゃない?」
一理ある、と思った。
最初の方は『ああ、いつか乗った竜の時より速いな』と思う余裕はあったのだが、そのすぐ後に気を失ってしまっていた。
「かもしれないな、ステータスを開示して確認しよう」
右の手の甲を左手で擦る、かつて何度も繰り返した行為だ。かつてはレベルが上がっては眺め、レベルが上がっては眺め、悦にひたったものだ。
さて、どうなってる事やら。
【ステータス】
ジュン・エウクレイ Lv.1
HP 11
MP 5
ATK 8
DEF 6
INT 6
MND 5
AGL 7
【スキル】
EXP 0
次のレベルまであと 8
なんという事だ。
全てが、俺の数年間が、カンストしていたレベルが、無に還っていた。
「わぁお……」
「……やられた」
リンチにあった時に経験値やスキルを吸収されたのだろう事は安易に予想がつくが、理由がわからない。
奴らも俺と同じでレベルはカンストしていたはずだがどうして……?
「考えるのは後だ、ご主人」
「少しぼくから提案があるんだけど、聞いてくれるかい?」
「ああ、良いとも」
「とりあえず、今この状態でご主人が逆襲に行くのは無理があるよね」
「そうだな、威勢よく向かってもせいぜい返り討ちにされて終わりだ」
「ぼくが全員の首を取っても良いんだけど、それだとご主人の気が晴れないだろ?」
「お気遣いありがとう、その通りだ」
「ならご主人、君はぼくの全てだ、ぼくを装備してくれないか?」
俺の頭の中が「?」で埋まるのにそう時間はかからなかった。
「文字通り、ぼくが君の剣となり盾になろうって事さ」
「今の俺にとっては非常に嬉しい申し出だが、出来るのか?使い魔を装備するという事は」
「なぁご主人」
チッチッチッと指を振ってくる。
「ぼくは生と死の概念を超越してしまった使い魔だぜ」
「そんな事、僕にとっては取るに足らない些細な事だ、風の前の塵に同じだ」
「当然、出来るに決まってるだろう!」
ムフンと誇らしげに語る。
ここまで自信ありげに言われるととても頼もしく思える。
「なに、原理は簡単な事だ」
そう言うと突如ガロアが2人(2匹?)に増殖した。
増えた方はわかりやすいように『装備用』と書かれた鉢巻が巻かれている。
「2人に増えたがもしかしてもう1人を変身させるって事か?」
「ご名答、察しがいいね」
ガロアが僕を撫でると同時にもう1人の方が眩い光を放ち、変身を始める。
そして光が収まった時には武具(とは言っても衣服にしか見えない)が置かれていた。
「大丈夫なのか…?」
「分身といえどもぼくだ、装備してみるといい」
……着心地がとてもいい、そして力が湧いてくる感じだ。
「とりあえずそれならご主人にとってある程度の護身にはなると思う」
「何から何まで済まないな」
「いいのさ、君はぼくの全てだからね」
「さあ、街に入ろうじゃないか」
2人は、門の中を通った。