でっぱつ
腹の虫がぐうと鳴る。
そう言えば飯を食っていなかった。
「ガロア、ここはどの辺かわかるか?」
「君を安全そうな所に避難させるのに必死でちょっとわからないなぁ」
そう言うとガロアは立ち上がって軽い屈伸運動を始める。
「ちょっと見てみるね」
そう言った瞬間、とてつもないスピードでガロアは上空へと昇っていった。
地面を見ると、踏み込みの威力の壮絶さを語るように、そこには窪みができていた。
また風を切る音が聴こえてくる、そこからもう少しだけ待つと、大きな衝撃音と共に降り立ってきた。
「見えた……けど、うろ覚えなんだよねね、確か昔ご主人達と一緒に向かった『王都カントール』が近くにあると思うよ」
「お城もあったし」
カントールか、王が住んでいるとだけあってこの国でもかなり栄えてる街だったな。
宿もある、物資もある、情報もある、拠点にしても問題ないだろう。
「ありがとう、なら向かおうか」
「……いや、待てよ」
「どうかしたかい?」
「『大きい』お城が近くにあるなら俺が目視出来ると思うんだが、見えないってことは……」
「結構遠いね」
「近くないじゃないか!」
「まあ待ってくれたまえご主人、結論を最後まで聞いて欲しい」
「さっき、君はぼくの脚力を見た筈だろ?」
「ああ、尋常じゃなかったな」
「実はあれでもまだ本気じゃないんだ」
「そしてその脚力を推進力に活かせば?」
「……早く移動できるって寸法か」
「ご名答!という訳でね、ちょっと失礼」
ガロアが僕の身体を持ち上げる。そして持ち方は所謂お姫様抱っこだ。正直大の男がこの姿というのは正直恥ずかしい。
「なあ、ガロア」
「どうしたんだい?」
「俺、重かったりしないか……?」
恐る恐る聞いてみる。
「ぼくの事を気にしてくれてるのかい?それなら大丈夫だよ」
「この程度だったら何百人来たって問題ないさ」
男性力を奪いにかかるこのワンツーパンチ、勘弁してくれ、泣きたくなる。
この正直さは毒であり薬だ。
「さて、それじゃあそろそろ向かおうか」
「ああ、頼んだ」
「それじゃあ、行くよー!」
不思議な事に、この言葉を聞いてから暫く記憶が途切れている。
おそらく、スピードの衝撃に耐えられなかったのだろう。
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目が覚めたころには王都についていた。風流は一切ない。
「ご主人おはよう」
「殺してくれ……」
「ご主人!?」